【株価指数】トランプ関税はほぼ織り込み済みか 減税の動きにも注目
2025/05/05 06:05
【ポイント】
・主要株価指数は4月上旬の下げの大部分を戻した
・関税は織り込み済み? ただ、影響がデータに表れるのはこれから
・トランプ減税の進捗と長期金利にも要注意か
(先週のレビュー)
主要株価指数は総じて堅調に推移。4月上旬の下落分の大部分~全てを戻した格好です。トランプ大統領が自動車関税の負担軽減措置など対外強硬姿勢を一部軟化させたり、当局者が交渉の進展を示唆したりしたことで、関税に関する懸念がやや後退しました。
1日、日銀の金融政策決定会合は金融政策の現状維持を決定。声明では米国をはじめ各国通商政策の不透明感が強いとし、植田総裁は会見で利上げに慎重な姿勢を示しました。それらを受けて先行きの利上げ観測は後退しました。
米国の1-3月期GDPがマイナス成長(前期比年率-0.3%)となるなど経済指標が軒並み軟調だったことで、米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げへの期待が高まりました。2日発表の4月雇用統計は堅調な結果となり、(利下げ観測はやや後退したものの)株価の上昇要因となりました。
マイクロソフトやメタ・プラットフォームズなど一部の大手IT株の好決算も好感されました。株価の反発局面に乗り遅れまいとする投資家マインドの変化も株価堅調の背景にあるとの指摘がありました。
(今週の相場材料)
今週の最大のイベントは、FRBのFOMC(連邦公開市場委員会)。市場では、政策金利が据え置かれるとの見方が支配的です。パウエル議長は4月16日の講演で、トランプ関税はインフレを高める可能性があると指摘し、利下げに慎重な姿勢を示しました。トランプ大統領が利下げ圧力を強めるなか、軟化さが目立つ景気やトランプ関税の影響、金融政策の見通しに関してどのようなメッセージが発せられるでしょうか。引き続き利下げに慎重な姿勢をみせれば、株価に下押し圧力が加わるかもしれません。結果判明は日本時間8日午前3時。その30分後にパウエル議長の記者会見が始まります。
8日のBOE(英中銀)のMPC(金融政策委員会)では、0.25%利下げが確実視されています。次回6月にも連続利下げとの見方があり、MPCの声明やベイリー総裁の発言などからそうした観測が強まるのか、それとも弱まるのか。金融政策報告が、「インフレ低下に顕著な前進がみられている」とした前回2月からどう変化するかにも注目です。
3日には自動車部品に対する米国の関税が発動されたようです。一連のトランプ関税に対する金融市場、企業、消費者のネガティブな反応を受けて、トランプ政権はよく言えば「機敏」に、悪く言えば「朝令暮改」的に関税を修正してきました。そのため、関税が米国や世界の経済を一段と厳しい状況に追い込む前にトランプ政権が路線変更するという漠然とした楽観が芽生えつつあるのかもしれません。貿易相手国との交渉が進展して相互関税の上乗せ分(日本の場合は14%)が発動されないとの期待もあるのでしょう。
もっとも、関税の影響が統計データなどに本格的に表れるのはこれからでしょう。これまでは企業や消費者の景況感の悪化、関税発動前の駆け込み需要の発現などはある程度観測されました。今後は、関税分の価格転嫁による物価上昇、部品や原材料などの供給の阻害、関税の影響を強く受けるセクターの減速、関連雇用の減少など、よりハードなデータも出てきそうです。
市場はそうしたデータの悪化を、「織り込み済み」あるいは「一時的」として軽視するでしょうか。関税交渉の進捗や相互関税上乗せ分の発動の有無も気になるところです。
トランプ政権は5月2日に、今年10月に始まる26年度の「予算提案」を公表しました。通常の予算教書ほど精緻なものではなく、あくまで概要を提示したもの。それは、国防費を増加させる一方で非国防費を大幅に削り、国防・非国防を合わせた裁量的支出を10%程度削減する内容です。
もっとも、裁量的支出は歳出全体の3割弱に過ぎません。残り7割強は社会保障や医療保険などの義務的支出と国債費(利払い)。トランプ減税を実現させるためには義務的支出の大幅な削減は不可欠です。
「予算提案」を受けて議会で予算審議が本格化するとみられ、減税と歳出削減の帳尻が合うのか見守る必要がありそうです。仮に、減税を進める一方で、歳出削減が不十分と市場がみなせば、財政赤字拡大懸念から長期金利が大幅に上昇するかもしれません。そうなれば減税への期待を上回って株価にとって大きなマイナスとなる可能性があります。
・主要株価指数は4月上旬の下げの大部分を戻した
・関税は織り込み済み? ただ、影響がデータに表れるのはこれから
・トランプ減税の進捗と長期金利にも要注意か
(先週のレビュー)
主要株価指数は総じて堅調に推移。4月上旬の下落分の大部分~全てを戻した格好です。トランプ大統領が自動車関税の負担軽減措置など対外強硬姿勢を一部軟化させたり、当局者が交渉の進展を示唆したりしたことで、関税に関する懸念がやや後退しました。
1日、日銀の金融政策決定会合は金融政策の現状維持を決定。声明では米国をはじめ各国通商政策の不透明感が強いとし、植田総裁は会見で利上げに慎重な姿勢を示しました。それらを受けて先行きの利上げ観測は後退しました。
米国の1-3月期GDPがマイナス成長(前期比年率-0.3%)となるなど経済指標が軒並み軟調だったことで、米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げへの期待が高まりました。2日発表の4月雇用統計は堅調な結果となり、(利下げ観測はやや後退したものの)株価の上昇要因となりました。
マイクロソフトやメタ・プラットフォームズなど一部の大手IT株の好決算も好感されました。株価の反発局面に乗り遅れまいとする投資家マインドの変化も株価堅調の背景にあるとの指摘がありました。
(今週の相場材料)
今週の最大のイベントは、FRBのFOMC(連邦公開市場委員会)。市場では、政策金利が据え置かれるとの見方が支配的です。パウエル議長は4月16日の講演で、トランプ関税はインフレを高める可能性があると指摘し、利下げに慎重な姿勢を示しました。トランプ大統領が利下げ圧力を強めるなか、軟化さが目立つ景気やトランプ関税の影響、金融政策の見通しに関してどのようなメッセージが発せられるでしょうか。引き続き利下げに慎重な姿勢をみせれば、株価に下押し圧力が加わるかもしれません。結果判明は日本時間8日午前3時。その30分後にパウエル議長の記者会見が始まります。
8日のBOE(英中銀)のMPC(金融政策委員会)では、0.25%利下げが確実視されています。次回6月にも連続利下げとの見方があり、MPCの声明やベイリー総裁の発言などからそうした観測が強まるのか、それとも弱まるのか。金融政策報告が、「インフレ低下に顕著な前進がみられている」とした前回2月からどう変化するかにも注目です。
3日には自動車部品に対する米国の関税が発動されたようです。一連のトランプ関税に対する金融市場、企業、消費者のネガティブな反応を受けて、トランプ政権はよく言えば「機敏」に、悪く言えば「朝令暮改」的に関税を修正してきました。そのため、関税が米国や世界の経済を一段と厳しい状況に追い込む前にトランプ政権が路線変更するという漠然とした楽観が芽生えつつあるのかもしれません。貿易相手国との交渉が進展して相互関税の上乗せ分(日本の場合は14%)が発動されないとの期待もあるのでしょう。
もっとも、関税の影響が統計データなどに本格的に表れるのはこれからでしょう。これまでは企業や消費者の景況感の悪化、関税発動前の駆け込み需要の発現などはある程度観測されました。今後は、関税分の価格転嫁による物価上昇、部品や原材料などの供給の阻害、関税の影響を強く受けるセクターの減速、関連雇用の減少など、よりハードなデータも出てきそうです。
市場はそうしたデータの悪化を、「織り込み済み」あるいは「一時的」として軽視するでしょうか。関税交渉の進捗や相互関税上乗せ分の発動の有無も気になるところです。
トランプ政権は5月2日に、今年10月に始まる26年度の「予算提案」を公表しました。通常の予算教書ほど精緻なものではなく、あくまで概要を提示したもの。それは、国防費を増加させる一方で非国防費を大幅に削り、国防・非国防を合わせた裁量的支出を10%程度削減する内容です。
もっとも、裁量的支出は歳出全体の3割弱に過ぎません。残り7割強は社会保障や医療保険などの義務的支出と国債費(利払い)。トランプ減税を実現させるためには義務的支出の大幅な削減は不可欠です。
「予算提案」を受けて議会で予算審議が本格化するとみられ、減税と歳出削減の帳尻が合うのか見守る必要がありそうです。仮に、減税を進める一方で、歳出削減が不十分と市場がみなせば、財政赤字拡大懸念から長期金利が大幅に上昇するかもしれません。そうなれば減税への期待を上回って株価にとって大きなマイナスとなる可能性があります。
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