「トランプ大統領」と新議会の関係、下院の行方
2024/11/07 07:05
AP通信によれば、米大統領選・議会選の結果は以下の通り(日本時間7日07:00現在)
◆大統領(獲得選挙人数538=過半数270以上):
トランプ氏295 ハリス氏226 残り17(2州)
◆議会上院(議席数100=同50以上※):
共和党52(3増) 民主党44(3減) 残り4
◆議会下院(議席数435=過半数218以上):
共和党202(1増) 民主党189(1減) 残り44
※副大統領が上院議長を務める(=50対50の場合のタイブレーカーを持つ)ので、共和党は50議席で事実上の過半数
*******
共和党が大統領と上院を制したので、下院も取れば、「オール・レッド(トリプル・レッド)」となり、トランプ次期大統領の公約の実現性は高まるでしょう。一方、民主党が下院で過半数の議席を占めれば「ねじれ議会」となって、トランプ次期大統領の行動にある程度のブレーキをかけそうです。どちらの党が下院を制するかは、大きな差を作りそうです。
以下では大統領と議会の関係から「トランプ政権」の政策の行方を考察します。
大統領が議会の助けなしでできること
政府機関に対して大統領令を出して指示することができます。公約の中では、関税引き上げや不法移民の取締り強化などが可能でしょう。トランプ次期大統領が「Day1(就任初日)」にやることとして、早い段階でSNSなどを使って宣言するかもしれません。
議会の助けが必要なこと
法律の制定や改正は議会で立法化されます。税制や社会保障、公的医療保険などの制度改革が該当します。とりわけ、原則として税に関するものは下院で起案される必要があります。
各年度の予算措置も議会の仕事です。今年10月に始まった25年度の暫定予算が12月20日に失効します。現行の議会が暫定予算を延長するなどして本予算の策定を25年に先送りした場合、新たな議会が対応する必要があります。また、来年1月に復活するデットシーリング(連邦債務上限)への対応も新議会のタスクとなります(※)。
※予算が途切れればシャットダウン(政府機能の一部停止)の可能性があり、デットシーリングの引き上げが遅れればデフォルト(債務不履行)のリスクが高まります。
トランプ次期大統領が指名する閣僚や政府高官、FRB議長や理事の候補には上院の承認が必要です。トランプ次期大統領が、偏った思想を持つ候補や利益相反につながりかねない候補(※)を指名した場合に、上院はそれを拒否できるでしょうか。
※たとえば、ワクチン陰謀論者のケネディ氏が希望すれば、保健福祉長官に指名するとトランプ氏が語ったとの報道もあります。
少数政党にできること
あまり多くはないでしょう。ただ、上院にはフィリバスターといって延々と演説を続けることで法案の採決を妨害する戦術があります(上院には審議時間の制限がないため)。フィリバスターを終わらせて法案採決に持ち込むためには、スーパーマジョリティ(60議席以上)が必要です。ただ、予算に関連した法案などフィリバスターが認められていないものもあるため、上院での少数政党の抵抗にも限界はあります。
共和党がトランプ次期大統領から距離を置く??
11月2日のセミナーで双日総研の吉崎さんから興味深い話を伺いました(※)。「トランプ大統領」のレームダック化(影響力・求心力の低下)は意外に早いのではないか、とのこと。「トランプ大統領」の三選はありません。任期は残り4年です。26年の中間選挙で改選される下院議員と一部の上院議員は「トランプ大統領」に反発すれば、再選は難しいかもしれません。逆に言えば、それ以外の議員は「トランプ大統領」を恐れる必要がなくなると。議会共和党内にもアンチ・トランプが増えるとの見立てでした。
※11月2日開催のWEBセミナー(YouTube)『識者に問う“新大統領決定後の世界経済のゆくえ”』をご視聴ください。
前回在位時の4年間を含めて過去8年の間に、トランプ氏を諫めることのできる人々が周りからいなくなったとの指摘もあります。議会はトランプ次期大統領の「暴走」の歯止めとなるでしょうか。例えば、共和党内の財政保守派グループがトランプ次期大統領の減税案に待ったをかけることができるか、非常に興味深いところです。
◆大統領(獲得選挙人数538=過半数270以上):
トランプ氏295 ハリス氏226 残り17(2州)
◆議会上院(議席数100=同50以上※):
共和党52(3増) 民主党44(3減) 残り4
◆議会下院(議席数435=過半数218以上):
共和党202(1増) 民主党189(1減) 残り44
※副大統領が上院議長を務める(=50対50の場合のタイブレーカーを持つ)ので、共和党は50議席で事実上の過半数
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共和党が大統領と上院を制したので、下院も取れば、「オール・レッド(トリプル・レッド)」となり、トランプ次期大統領の公約の実現性は高まるでしょう。一方、民主党が下院で過半数の議席を占めれば「ねじれ議会」となって、トランプ次期大統領の行動にある程度のブレーキをかけそうです。どちらの党が下院を制するかは、大きな差を作りそうです。
以下では大統領と議会の関係から「トランプ政権」の政策の行方を考察します。
大統領が議会の助けなしでできること
政府機関に対して大統領令を出して指示することができます。公約の中では、関税引き上げや不法移民の取締り強化などが可能でしょう。トランプ次期大統領が「Day1(就任初日)」にやることとして、早い段階でSNSなどを使って宣言するかもしれません。
議会の助けが必要なこと
法律の制定や改正は議会で立法化されます。税制や社会保障、公的医療保険などの制度改革が該当します。とりわけ、原則として税に関するものは下院で起案される必要があります。
各年度の予算措置も議会の仕事です。今年10月に始まった25年度の暫定予算が12月20日に失効します。現行の議会が暫定予算を延長するなどして本予算の策定を25年に先送りした場合、新たな議会が対応する必要があります。また、来年1月に復活するデットシーリング(連邦債務上限)への対応も新議会のタスクとなります(※)。
※予算が途切れればシャットダウン(政府機能の一部停止)の可能性があり、デットシーリングの引き上げが遅れればデフォルト(債務不履行)のリスクが高まります。
トランプ次期大統領が指名する閣僚や政府高官、FRB議長や理事の候補には上院の承認が必要です。トランプ次期大統領が、偏った思想を持つ候補や利益相反につながりかねない候補(※)を指名した場合に、上院はそれを拒否できるでしょうか。
※たとえば、ワクチン陰謀論者のケネディ氏が希望すれば、保健福祉長官に指名するとトランプ氏が語ったとの報道もあります。
少数政党にできること
あまり多くはないでしょう。ただ、上院にはフィリバスターといって延々と演説を続けることで法案の採決を妨害する戦術があります(上院には審議時間の制限がないため)。フィリバスターを終わらせて法案採決に持ち込むためには、スーパーマジョリティ(60議席以上)が必要です。ただ、予算に関連した法案などフィリバスターが認められていないものもあるため、上院での少数政党の抵抗にも限界はあります。
共和党がトランプ次期大統領から距離を置く??
11月2日のセミナーで双日総研の吉崎さんから興味深い話を伺いました(※)。「トランプ大統領」のレームダック化(影響力・求心力の低下)は意外に早いのではないか、とのこと。「トランプ大統領」の三選はありません。任期は残り4年です。26年の中間選挙で改選される下院議員と一部の上院議員は「トランプ大統領」に反発すれば、再選は難しいかもしれません。逆に言えば、それ以外の議員は「トランプ大統領」を恐れる必要がなくなると。議会共和党内にもアンチ・トランプが増えるとの見立てでした。
※11月2日開催のWEBセミナー(YouTube)『識者に問う“新大統領決定後の世界経済のゆくえ”』をご視聴ください。
前回在位時の4年間を含めて過去8年の間に、トランプ氏を諫めることのできる人々が周りからいなくなったとの指摘もあります。議会はトランプ次期大統領の「暴走」の歯止めとなるでしょうか。例えば、共和党内の財政保守派グループがトランプ次期大統領の減税案に待ったをかけることができるか、非常に興味深いところです。
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