ゴールド最高値更新、原油は弱含み 明暗分ける2の商品
2024/09/13 11:22
<金は一段高、海外金利の低下期待>
今週(9/9─)の米ドル建て金先物は一段高となりました。12日の海外市場で一時2,588ドルまで上昇し、8月20日に付けた取引時間中の過去最高値2,570ドルを更新。欧州中央銀行(ECB)が12日の理事会で追加利下げを決定。欧米債券市場の反応は限定的でしたが、米利下げ期待も加わり、金に追い風となっています。景気減速に対する懸念は原油市場ほど強くありません。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,450─2,650ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,100─12,300円
*金と原油
金と原油はともに代表的なコモディティ(商品)ですが、その特徴はかなり異なります。埋蔵量はともに限られているものの、金はよほどの高温でなければ焼失しません。スマートフォンの部品やアクセサリーなどに形を変えても永遠に残っているため、相場高騰時には、市場で売却され価格上昇を抑える場合があります。ただ、最近はさらなる価格上昇への期待が大きく、そうした動きは限定的です。
一方、石油は消費すればなくなってしまいます。相場価格が高騰する際、金のようには売り物が出ないことから、歯止めが効きにくく、一気に高騰することもあるため、ボラティリティが高いのが特徴です。
景気減速はどちらにもネガティブ材料です。ただ、原油は産業用がほぼ全てであり、景気の影響を非常に受けやすい一方、金はテクノロジー向けがありますが、投資商品や代替通貨としての性質の方が大きいため、原油ほどには影響されません。
足元で原油価格が下落しているのは、中国を始めとする景気減速懸念が大きな要因です。金も景気減速の影響は多少あるものの、景気減速観測による金利低下の方を好感しており、最高値圏で推移する一因となっています。
金利上昇は金、原油にともにネガティブです。特に原油は現物を保管するには、巨大な貯蔵施設など莫大なコストがかかります。多額の資金が必要であることから、高金利時代には在庫が減る傾向があると言われており、在庫放出が続けば需給は緩み、価格下落要因になります。
逆に低金利時代になって在庫が増えれば、需給がタイトになるため、この点では価格上昇要因になります。ただ、足元の米国では利下げ期待が高まり市場金利も下がってきていますが、まだ実際に利下げは始まっておらず、金利も比較的高いため、金利面からの影響は強まっていないようです。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/29~2024/9/12)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は弱含み、一時1年4カ月ぶり安値>
今週のWTI原油先物価格は弱含みの展開となっています。10日に一時65ドル台前半まで下落し、取引時間中としては2023年5月4日以来、約1年4カ月ぶりの安値を付けました。値ごろ感からの買いも出て足元は反発していますが、中国や米国の景気減速懸念が強く、金利低下期待は大きなポジティブ要因にはなっていません。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル66─73ドル
*需要減少見通し、米在庫増加
国際エネルギー機関(IEA)は12日に公表した月報で、2024年の石油需要の伸び見通しを日量7万バレル下方修正し、日量90万バレルとしました。中国の景気減速や電気自動車への移行が主因としています。25年の見通しは据え置きましたが、OPECプラスが自主減産を解除する計画を進めれば供給超過になる可能性があると指摘しています。
石油輸出国機構(OPEC)も10日発表の月報で、2024年の世界石油需要を前年比日量203万バレル増とし、8月予想の日量211万バレルから引き下げました。25年の見通しも、日量174万バレル増と日量178万バレル増から下方に修正。IEAと同じく中国需要の減退予想が主因で、24年、25年ともに2カ月連続での下方修正となりました。
足元の原油在庫も増加しています。米エネルギー情報局(EIA)が11日に発表した9月6日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比83.3万バレルの増加。4週ぶりの増加となりました。ガソリン在庫は231万バレル、留出油も230.8万バレルと、ともに大幅な増加。原油在庫の増加は、市場の需給を引き締めもしますが、その要因が景気減速懸念による需要減少であるとみられればネガティブ材料として受け止められます。
一方、中東情勢では、パレスチナ自治区ガザの停戦に向けた交渉がなかなか進みません。イスラエルはレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとも交戦しており、紛争が多極化する難しい状況になっています。
また、米メキシコ湾岸にハリケーン「フランシーン」が上陸。12日には熱帯低気圧となりましたが、同地域には石油関連施設が多く、一部の製油所が稼働を停止していると伝えられており、足元で原油価格が反発する材料となっています。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/28~2024/9/6)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
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今週(9/9─)の米ドル建て金先物は一段高となりました。12日の海外市場で一時2,588ドルまで上昇し、8月20日に付けた取引時間中の過去最高値2,570ドルを更新。欧州中央銀行(ECB)が12日の理事会で追加利下げを決定。欧米債券市場の反応は限定的でしたが、米利下げ期待も加わり、金に追い風となっています。景気減速に対する懸念は原油市場ほど強くありません。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,450─2,650ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,100─12,300円
*金と原油
金と原油はともに代表的なコモディティ(商品)ですが、その特徴はかなり異なります。埋蔵量はともに限られているものの、金はよほどの高温でなければ焼失しません。スマートフォンの部品やアクセサリーなどに形を変えても永遠に残っているため、相場高騰時には、市場で売却され価格上昇を抑える場合があります。ただ、最近はさらなる価格上昇への期待が大きく、そうした動きは限定的です。
一方、石油は消費すればなくなってしまいます。相場価格が高騰する際、金のようには売り物が出ないことから、歯止めが効きにくく、一気に高騰することもあるため、ボラティリティが高いのが特徴です。
景気減速はどちらにもネガティブ材料です。ただ、原油は産業用がほぼ全てであり、景気の影響を非常に受けやすい一方、金はテクノロジー向けがありますが、投資商品や代替通貨としての性質の方が大きいため、原油ほどには影響されません。
足元で原油価格が下落しているのは、中国を始めとする景気減速懸念が大きな要因です。金も景気減速の影響は多少あるものの、景気減速観測による金利低下の方を好感しており、最高値圏で推移する一因となっています。
金利上昇は金、原油にともにネガティブです。特に原油は現物を保管するには、巨大な貯蔵施設など莫大なコストがかかります。多額の資金が必要であることから、高金利時代には在庫が減る傾向があると言われており、在庫放出が続けば需給は緩み、価格下落要因になります。
逆に低金利時代になって在庫が増えれば、需給がタイトになるため、この点では価格上昇要因になります。ただ、足元の米国では利下げ期待が高まり市場金利も下がってきていますが、まだ実際に利下げは始まっておらず、金利も比較的高いため、金利面からの影響は強まっていないようです。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/29~2024/9/12)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は弱含み、一時1年4カ月ぶり安値>
今週のWTI原油先物価格は弱含みの展開となっています。10日に一時65ドル台前半まで下落し、取引時間中としては2023年5月4日以来、約1年4カ月ぶりの安値を付けました。値ごろ感からの買いも出て足元は反発していますが、中国や米国の景気減速懸念が強く、金利低下期待は大きなポジティブ要因にはなっていません。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル66─73ドル
*需要減少見通し、米在庫増加
国際エネルギー機関(IEA)は12日に公表した月報で、2024年の石油需要の伸び見通しを日量7万バレル下方修正し、日量90万バレルとしました。中国の景気減速や電気自動車への移行が主因としています。25年の見通しは据え置きましたが、OPECプラスが自主減産を解除する計画を進めれば供給超過になる可能性があると指摘しています。
石油輸出国機構(OPEC)も10日発表の月報で、2024年の世界石油需要を前年比日量203万バレル増とし、8月予想の日量211万バレルから引き下げました。25年の見通しも、日量174万バレル増と日量178万バレル増から下方に修正。IEAと同じく中国需要の減退予想が主因で、24年、25年ともに2カ月連続での下方修正となりました。
足元の原油在庫も増加しています。米エネルギー情報局(EIA)が11日に発表した9月6日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比83.3万バレルの増加。4週ぶりの増加となりました。ガソリン在庫は231万バレル、留出油も230.8万バレルと、ともに大幅な増加。原油在庫の増加は、市場の需給を引き締めもしますが、その要因が景気減速懸念による需要減少であるとみられればネガティブ材料として受け止められます。
一方、中東情勢では、パレスチナ自治区ガザの停戦に向けた交渉がなかなか進みません。イスラエルはレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとも交戦しており、紛争が多極化する難しい状況になっています。
また、米メキシコ湾岸にハリケーン「フランシーン」が上陸。12日には熱帯低気圧となりましたが、同地域には石油関連施設が多く、一部の製油所が稼働を停止していると伝えられており、足元で原油価格が反発する材料となっています。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/28~2024/9/6)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
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