ゴールドは底堅い展開、原油は反発 「令和版ブラックマンデー」で波乱も
2024/08/09 12:14
<金は反発、25日線が下値支持ラインに>
今週(8/5─)の米ドル建て金先物は底堅い展開となりました。5日の「令和版ブラックマンデー」と呼ばれるような世界的なリスクオフに巻き込まれましたが、過度な米景気後退懸念が和らいだことなどで買い戻しが入っています。チャート的には25日移動平均線が下値支持ラインとなっており、来週は2日に付けた過去最高値の2,522ドルを再び目指すか注目されます。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,350─2,525ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:10,600─12,600円
*総リスクオフで「安全資産」も売り
5日はほとんどの金融資産が売られる総リスクオフとなりました。日経平均株価は前日比4451.28円(12.4%)下落。下げ幅は1987年のブラックマンデーの翌日、10月20日の下げ幅(3836.48円、14.9%)を上回り過去最大、下落率も過去2番目となる歴史的な大暴落となりました。
米ハイテク株の下落、米景気後退懸念、中東情勢の緊迫化、日銀の連続利上げ警戒など様々な要因が挙げられていますが、これまで膨らんできたリスク選好ポジションの巻き戻しと言えるかもしれません。
「安全資産」とされる金ですが、こうした総リスクオフの序盤は金も売られるケースが多いことが知られています。特に金は過去最高値水準に上昇しており利益が乗っている投資家も多いので、換金売りが出やすいと言えます。
その後、リスクオフが終息しないまでも、最初のパニック売りが終わると金に資金逃避しやすくなります。今回の波乱相場がいつ終わるのかは不明ですが、もし長引いて投資家のリスク選好度が低いまま続くようであれば、徐々に金への資金シフトが起こりやすくなるかもしれません。
一方、気になる点もあります。中国人民銀行が7日に発表した外貨準備のデータによると、同銀行が保有する金地金は7月末時点で7,280万トロイオンス(2,264トン)と前月比横ばい。3カ月連続で購入がありませんでした。
市場では、別のルートで金購入を続けているのではないかとの見方も出ていますが、数字上は「購入停止は一時的」とは言えなくなってきています。他の多くの新興国の中央銀行は引き続き金購入を続けているほか、金ETF(上場投資信託)には3カ月連続で資金流入していますが、中国動向は投資家心理への影響もあるため、今後注視が必要なポイントです。
*ドル建て金先物の日足(期間:2023/11/27~2024/8/8)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は反発、米原油在庫が減少継続>
今週のWTI原油先物価格は反発しました。世界的なリスクオフが原油市場にも波及しましたが、米景気後退懸念が和らいだ事や米原油在庫の減少継続が明らかになったことで切り返しています。5日に約6カ月ぶりの安値水準となる71ドル後半まで一時下落した後、足元で76ドル付近まで戻してきました。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル71─80ドル
*「ブラックマンデー」では原油にも売り波及
今回の「令和版ブラックマンデー」では原油も売られました。原油もリスク資産とされており、世界的な換金売りが波及した格好です。
短期筋のポジションの巻き戻しもありますが、今回のリスクオフは、7月米ISM製造業景気指数や7月米雇用統計などが下振れたことによる米景気後退懸念が一因となっており、需要減少への警戒も原油の売りに拍車を掛けました。
ただ、5日に発表された7月米ISM非製造業景気指数が51.4と節目の50を上回ったほか、8日に発表された米新規失業保険申請件数(8月3日までの1週間)が約11カ月ぶりの大幅な減少となったことで、投資家心理は幾分改善。株価が反発したこともあり、原油も買い戻しが入っています。
中東情勢の緊迫化が続いていることも、原油が底堅い一因です。イスラム組織ハマスの最高指導者がイランで死亡したことについて、ハマスはイスラエルによる暗殺だとみており、ハマスを支援するイランがイスラエルに報復するのではないかとの警戒感が強まっています。
需給材料も支援しました。米エネルギー情報局(EIA)が7月31日に発表した26日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比372.8万バレルの減少となりました。6週連続の減少で累計では3,137万バレルの大幅減です。ガソリン在庫が3週ぶりに増加、留出油が2週連続で増加しましたが、引き続き米需給のタイト化が期待されています。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/11/27~2024/8/8)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
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今週(8/5─)の米ドル建て金先物は底堅い展開となりました。5日の「令和版ブラックマンデー」と呼ばれるような世界的なリスクオフに巻き込まれましたが、過度な米景気後退懸念が和らいだことなどで買い戻しが入っています。チャート的には25日移動平均線が下値支持ラインとなっており、来週は2日に付けた過去最高値の2,522ドルを再び目指すか注目されます。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,350─2,525ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:10,600─12,600円
*総リスクオフで「安全資産」も売り
5日はほとんどの金融資産が売られる総リスクオフとなりました。日経平均株価は前日比4451.28円(12.4%)下落。下げ幅は1987年のブラックマンデーの翌日、10月20日の下げ幅(3836.48円、14.9%)を上回り過去最大、下落率も過去2番目となる歴史的な大暴落となりました。
米ハイテク株の下落、米景気後退懸念、中東情勢の緊迫化、日銀の連続利上げ警戒など様々な要因が挙げられていますが、これまで膨らんできたリスク選好ポジションの巻き戻しと言えるかもしれません。
「安全資産」とされる金ですが、こうした総リスクオフの序盤は金も売られるケースが多いことが知られています。特に金は過去最高値水準に上昇しており利益が乗っている投資家も多いので、換金売りが出やすいと言えます。
その後、リスクオフが終息しないまでも、最初のパニック売りが終わると金に資金逃避しやすくなります。今回の波乱相場がいつ終わるのかは不明ですが、もし長引いて投資家のリスク選好度が低いまま続くようであれば、徐々に金への資金シフトが起こりやすくなるかもしれません。
一方、気になる点もあります。中国人民銀行が7日に発表した外貨準備のデータによると、同銀行が保有する金地金は7月末時点で7,280万トロイオンス(2,264トン)と前月比横ばい。3カ月連続で購入がありませんでした。
市場では、別のルートで金購入を続けているのではないかとの見方も出ていますが、数字上は「購入停止は一時的」とは言えなくなってきています。他の多くの新興国の中央銀行は引き続き金購入を続けているほか、金ETF(上場投資信託)には3カ月連続で資金流入していますが、中国動向は投資家心理への影響もあるため、今後注視が必要なポイントです。
*ドル建て金先物の日足(期間:2023/11/27~2024/8/8)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は反発、米原油在庫が減少継続>
今週のWTI原油先物価格は反発しました。世界的なリスクオフが原油市場にも波及しましたが、米景気後退懸念が和らいだ事や米原油在庫の減少継続が明らかになったことで切り返しています。5日に約6カ月ぶりの安値水準となる71ドル後半まで一時下落した後、足元で76ドル付近まで戻してきました。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル71─80ドル
*「ブラックマンデー」では原油にも売り波及
今回の「令和版ブラックマンデー」では原油も売られました。原油もリスク資産とされており、世界的な換金売りが波及した格好です。
短期筋のポジションの巻き戻しもありますが、今回のリスクオフは、7月米ISM製造業景気指数や7月米雇用統計などが下振れたことによる米景気後退懸念が一因となっており、需要減少への警戒も原油の売りに拍車を掛けました。
ただ、5日に発表された7月米ISM非製造業景気指数が51.4と節目の50を上回ったほか、8日に発表された米新規失業保険申請件数(8月3日までの1週間)が約11カ月ぶりの大幅な減少となったことで、投資家心理は幾分改善。株価が反発したこともあり、原油も買い戻しが入っています。
中東情勢の緊迫化が続いていることも、原油が底堅い一因です。イスラム組織ハマスの最高指導者がイランで死亡したことについて、ハマスはイスラエルによる暗殺だとみており、ハマスを支援するイランがイスラエルに報復するのではないかとの警戒感が強まっています。
需給材料も支援しました。米エネルギー情報局(EIA)が7月31日に発表した26日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比372.8万バレルの減少となりました。6週連続の減少で累計では3,137万バレルの大幅減です。ガソリン在庫が3週ぶりに増加、留出油が2週連続で増加しましたが、引き続き米需給のタイト化が期待されています。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/11/27~2024/8/8)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
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