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フランス議会選挙の総括:高まる政治不安

2024/07/09 08:08

【ポイント】
・誰が首相に就任するか
・左派・新人民戦線の政策は財政赤字拡大要因!?
・極右・RNは勢力拡大中

7日に実施されたフランス議会選挙の決選投票では、左派の新人民戦線が第1党となり、マクロン大統領の中道・与党連合が第2党、第1回投票で1位だった極右・RN(国民連合)は第3党に沈みました。第1回投票の結果を受けて、極右を排除すべく与党連合と新人民戦線の選挙協力(200以上の選挙区で候補を1人に絞った)が奏功した格好です。

フランス議会選挙の結果

欧州議会選挙の結果(6月10日判明)を受けて急落したユーロやフランス株は、第1回投票でRNが過半数の議席を獲得する見込みが後退したことで、反発していました。ただ、決選投票の結果を受けてユーロは揉み合い、フランス株は下落しました。フランスの政治不安が高まっているからでしょう。

■ユーロ/円のテクニカル分析は、「ユーロ/円、91年2月以来の高値を示現!足もと注目ポイントは?」をご覧ください(お客様専用ページへのログインが必要です)。

ユーロ/米ドル

フランスCAC株価指数

以下に注目すべきポイントを挙げておきます。

誰が首相に就任するか。
通常、大統領が第1党から首相候補を指名し、議会が信任投票を行います。今回は新人民戦線が第1党ですが、議席数は過半数に遠く及びません。また、新人民戦線を構成する複数の政党から誰を指名するか。議席が最も多いのは「不屈のフランス」で、党首はメランション氏です。ただ、メランション氏は左寄り過ぎるとして、与党連合内には拒絶反応があるようです。

議会で過半数の支持を得られる首相候補はなかなか見つからないかもしれません。マクロン大統領がアタル首相の辞任を拒否したのもそのためでしょう。どの政党にも属さない人物を首相に指名して組閣させる「テクノクラート内閣」もありうるようです。イタリアではドラギ元ECB総裁が首相を任された例もあります。ただ、民主主義に反するとの批判もあります。

どのような経済政策が追求されるか
過半数の議席を持つ政党がない、いわゆる「ハング・パーラメント」では有効な政策が打ち出せず、政治が停滞する事態となるかもしれません。仮に、新人民戦線が主導権を握って政策を推し進めるとすれば、財政に大きな負担が加わる可能性があります。新人民戦線は、最低賃金の引き上げ、エネルギーや食料の一部に価格上限を設定、マクロン大統領の年金改革の撤廃などを提唱しているからです。

フランスは財政赤字が拡大しており、欧州委員会(EU)から財政規律違反手続きの対象とされています。新人民戦線の政策に対して市場が警鐘を鳴らすかもしれません(英トラス・ショックの例)。

極右・RN(国民連合)の躍進
決選投票で失速したとはいえ、RNは125議席を獲得しました(同盟政党を含めると143議席)。22年の選挙では89議席、17年の選挙では8議席だったので、勢力は次第に強まっています。若いバルデラ氏を党首に任命するなどして、極右のイメージ改善を図っている効果もありそうですが、移民排斥や反EU・反ユーロの信条は根底では変わらないでしょう。27年に予定される大統領選挙ではさらに支持を増やすかもしれません(政治の膠着が続けば、その前に解散・総選挙があるかもしれません)。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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