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「トランプ・ラリー?」でドル高か

2024/07/02 07:54

【ポイント】
・「トランプ勝利」なら長期金利上昇・米ドル高・株高?
・それとも「トランプ・ラリー」の先まで見据えて、市場は冷静に対応か

1日の欧米市場で米ドル/円は一時161.694円をつけました。ISM製造業景況指数など経済指標は必ずしも堅調ではありませんでしたが、長期金利(10年物国債利回り)が上昇したことが影響したようです。

長期金利上昇の背景は、連邦最高裁がトランプ氏の主張する大統領免責特権を部分的に認めて連邦地裁に審理を差し戻したこと。これによりトランプ大統領(当時)が選挙結果を覆そうとした「1月6日」事件の公判開始は、11月の投票日より遅れることが確実になったようです。6月27日のTV討論会での優勢に加えて、今回の決定によって、市場はトランプ氏が勝利する可能性が高まったと判断したようです。「トランプ政権」では、減税により財政赤字が拡大し、加えて(中国などに対する)関税引き上げがインフレ圧力を高める(=金利上昇)との思惑があります。

16年11月の選挙では、トランプ氏の当選後に長期金利が上昇し、米ドル/円が上昇した、いわゆる「トランプ・ラリー」が起こりました。当時の状況を振り返っておきましょう。

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16年は年初から「円高」が進行しました。米FRBが15年12月に、08年9月のリーマン・ショック後初の利上げに踏み切ったにもかかわらず、中国景気の悪化や原油価格の下落、米景気の不透明感などからリスク回避の姿勢が強まったためです。16年6月の英国の国民投票でブレグジットが可決されたこともリスクオフに拍車をかけました。

米ドル円 トランプラリー

16年後半に入ると米ドル/円は揉み合いとなりましたが、11月の選挙でトランプ氏が勝利すると、長期金利とともに大きく上昇しました。トランプ氏が勝利すれば、対外強硬姿勢や国内政治の不安から米ドルは下落するとの観測もありました。しかし、トランプ氏勝利によって、減税や内向きの政策による景気浮揚や財政赤字の拡大が強く意識されたのでしょう。米株も上昇基調となりました。

米長期金利 トランプラリー

もっとも、17年1月にトランプ氏が大統領に就任すると、制裁関税の発動などの保護貿易主義を嫌気して米ドル/円は下落基調となりました(当時、関税によるインフレ圧力は問題視されなかったのでしょう)。FRBが16年12月以降に積極的に利上げを続けたことで、市場で景気減速懸念が強まって長期金利が低下したことも、米ドルの弱気材料になったようです。

S&P500  トランプラリー

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トランプ氏が選挙戦を有利に進めれば、長期金利や米ドルは上昇するでしょうか。それとも「トランプ・ラリー」後も見据えて、比較的落ち着いた動きとなるのか。米ドル/円の上昇が続く場合に本邦当局が為替介入に踏み切るかどうかと合わせて、要注目でしょう。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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