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主要中銀の利下げ開始はいつ?

2024/02/19 12:14

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【今週のポイント】
・FOMC議事録やECB議事要旨に注目
・ユーロ圏の賃金上昇圧力は低下するか
・CPIでカナダ、南アフリカ、メキシコの金融政策見通しが変化するか

16日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が5割超の確率で利下げ開始を織り込んでいるのが、FRBとECBは6月、BOE(英中銀)は8月。いずれも、昨年12月末時点の市場予想に比べて2会合あとズレ、2週間前(2月2日)の市場予想と比べて1会合あとズレしています。

もっとも、同じOISに基づけば、ECBの4月理事会での利下げ確率は37%、FRBの5月FOMCでの利下げ確率は44%、BOEの6月MPC(金融政策委員会)での利下げ確率は48%です。今後の経済情勢次第では利下げ開始の予想時期が1会合前倒しになる可能性もあります。

今週(2/19- )は、FOMC議事録(1月30-31日開催分)やECB理事会の議事要旨(1月24-25日開催分)が注目されます。FRBやECB関係者は市場の早期利下げ観測をけん制してきましたが、内部でどのような議論がなされたか。景気や物価の判断に加えて、市場の金融政策見通しをどう受け止めたか。ECB内では利下げを求める声も相応にあった可能性があります。

今週の主要経済指標・イベント

ECBのラガルド総裁は15日、欧州議会の公聴会で、2%の物価目標への回帰を確信するためには更なる証左が必要だと述べました。性急な利下げによってインフレが再燃するリスクを懸念し、賃金動向を注視しているとしました。

20日にはECBが昨年10-12月期の「交渉賃金」を発表する予定です。7-9月期の「交渉賃金」は前年比4.69%と、前期の4.40%から加速しました。ECBの実験的な先行指標によれば賃金上昇圧力は昨年末に低下したとの報道もあり、どのような結果になるか注目でしょう。

活況が続く主要株式市場の動向にも要注意かもしれません。株価が一段と上昇すれば、リスクオン(リスク選好)が強まって、資源・新興国通貨が主要通貨に対してアウトパフォームしそうです。一方で、39,000ドル手前で足踏みしているNYダウやバブル期の最高値に肉薄している日経平均が大台や高値の達成後に急落するような事態となれば、リスクオフ(リスク回避)が一気に強まる可能性もなくはないでしょう。その場合、年初来、あるいは2月に入って、Bloombergの集計する主要17通貨の騰落率で最下位に沈む円が上昇するかもしれません。<西田>

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今週(2/19- )は、カナダと南アフリカの1月CPI(消費者物価指数)、メキシコの2月前半CPIが発表されます。カナダドルや南アフリカランド、メキシコペソはCPIの結果が材料になりそうです。市場では、BOC(カナダ中銀)やSARB(南アフリカ中銀)、BOM(メキシコ中銀)のいずれも、次の一手は利下げになると予想しています。CPIの結果を受けて利下げ観測が強まるかどうかに注目です。

22日のTCMB(トルコ中銀)の会合では、政策金利は45.00%に据え置かれそうです。前回1月の会合時の声明で、「月次のインフレ率の基調に大幅な鈍化がみられ、またインフレ期待が予測範囲に収束するまで、政策金利は現行水準に維持される」としたからです。22日の会合で政策金利が据え置かれ、またTCMBの金融政策スタンスに変化がみられなければ、トルコリラに大きな反応はなさそうです。

豪ドル/円やカナダドル/円などのクロス円は、米ドル/円の動向に注意が必要かもしれません。本邦当局による円安(米ドル/円の上昇)をけん制するトーンが強まれば、米ドル/円はいったん下落する可能性があります。その場合、クロス円も引きずられることも考えられます。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:146.000円~152.000円>
先週13日発表の米国の1月CPIが強めだったことを受けて、米長期金利(10年物国債利回り)は14日に一時4.33%まで上昇。米ドルは13日に一時150.840円を付けました。今週のFOMC議事録の内容や株価動向などによって米長期金利が一段と上昇するようであれば、米ドル/円は151円台に乗せて、昨年11月の高値151.872円や22年10月の高値151.899円が視野に入るかもしれません。

米ドル/円の上昇に対して、日米金利差の拡大(米ドル高要因)が続くとの見方が強かった22年9月には神田財務官が「(介入の)スタンバイの状況」と語ったうえで、実際に介入が行われました。昨年11月にも神田財務官は「スタンバイしている」と語りましたが、介入はなく、それでも米ドル/円は反転しました。

足もとでは、予想時期は後ズレしているものの、FRBが利下げを開始し、日銀がマイナス金利を解除するとの大枠に変化はないとみられます。そのため、本邦当局には米ドル/円の自律的な反転を待つ余裕があるかもしれません。それでも、米ドル/円の上昇が続けば、本邦当局による為替介入の警戒感から徐々に上値は重くなりそう。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/円 予想レンジ:158.000円~164.000円>
ユーロ/円は16日に昨年11月以来となる161.893円をつけました。ユーロ/米ドルは13日の米CPIを受けて大きく下げたものの、先週末にかけて下げ分をほぼ戻しました。ユーロ/円の上昇は、米ドル/円とユーロ/米ドルの双方の上昇の恩恵を受けた格好です。

ただ、ユーロ/米ドルは今年に入って下げ基調が続いています。米国の景気が堅調に推移する一方で、ユーロ圏景気は停滞。とりわけ、ドイツはリセッション(景気後退)の様相を呈しています。

ECBが市場の利下げ観測に対するけん制を続ければ、ユーロは底堅く推移するかもしれません。ただし、景気への懸念からECBのハト派メンバーから利下げを求める声が高まるなど、ECB内の不協和音が漏れてくるようになれば、米国とドイツの長期金利差が縮小する形で、ユーロ/米ドルに下押し圧力が加わりそうです。そうなれば、米ドル/円が上昇を続けて、昨年11月の高値や22年10月の高値に接近しない限り、ユーロ/円も軟調となりそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.05800NZドル~1.07500NZドル>
豪ドル/NZドルは2月12日に一時1.05809NZドルへと下落し、23年5月以来、およそ9カ月ぶりの安値をつけました。RBNZ(NZ中銀)が次回28日の政策会合で利上げを行うとの観測が強まり(NZドル買い材料)、そのことが豪ドル/NZドルへの下押し圧力となりました。

ただその後、13日に発表されたNZのインフレ期待は1年先が3.22%、2年先が2.50%と、いずれも前回(3.60%と2.76%)から低下しました。この結果を受けてRBNZの利上げ観測が後退して豪ドル/NZドルは反発。16日には1.06976NZドルへと上昇する場面がありました。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によれば、市場が織り込む次回28日のRBNZ会合における確率は、据え置きが約8割、利上げが約2割。同じく、市場が織り込む次回3月18-19日のRBA(豪中銀)会合における確率は、据え置きが約9割、利下げが約1割です。RBNZとRBAのいずれも、次回会合では政策金利は据え置かれるとの見方が有力です。

今週は、20日にRBA(豪中銀)議事録(2/5-6開催分)が公表され、21日に豪州の23年10-12月期の賃金価格指数、23日にはNZの10-12月期の小売売上高が発表されます。それらを受けて、市場のRBAやRBNZの金融政策見通しが大きく変化しなければ、豪ドル/NZドルは方向感が出にくく、1.06NZドル台を中心とした値動きになるかもしれません。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.33500カナダドル~1.36300カナダドル>
米ドル/カナダドルは2月13日に一時1.35813カナダドルへと上昇し、23年12月13日以来、2カ月ぶりの高値をつけました。米国の1月CPI(消費者物価指数。2/13発表)が市場予想を上回ったことで、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測が市場で後退し、米ドル/カナダドルへの上昇圧力となりました。

CMEのFedWatchツールによれば、16日時点で市場が織り込む利下げの確率は、次回3月19-20日のFOMC(米連邦公開市場委員会)が10%程度、4月30-5月1日までで30%程度、6月11-12日までで75%程度。9日時点の確率はそれぞれ、16%、60%程度、92%程度でした。FRBの利下げ観測が後退したことで、米ドル/カナダドルは引き続き底堅く推移しそうです。

20日にカナダの1月CPIが発表されます。CPIが市場予想を下回る結果になれば、BOC(カナダ中銀)の利下げ観測が強まるとともに、カナダドル安圧力が加わると想定されます。その場合、米ドル/カナダドルは、1.36212カナダドル(23/11/30高値)に向かって上昇する可能性があります。<八代>

西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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