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ECBの利下げは賃金動向次第か

2024/01/31 07:56

【ポイント】
・ユーロ圏はリセッションを辛うじて回避!?
・ECBの利下げは賃金動向次第か
・ECB内部でもタイミングの意見は分かれる
・市場は4月以降毎回の0.25%利下げを織り込む

ユーロ圏はリセッションを回避!?
30日、ユーロ圏および域内主要国の10-12月期GDPが発表されました。ユーロ圏GDPは前期比0.0%と横ばい。簡便的にリセッション(景気後退)と定義される2四半期連続のマイナスは避けられました。

ユーロ圏GDP

域内最大経済のドイツのGDPは前期比マイナス0.3%と、2四半期連続マイナスでリセッション。同2位のフランスのGDPは前期比0.0%。経済規模で上位2カ国の低迷が目立ちました。イタリアやスペインはプラス成長で、前期から伸びが高まりました。

■ユーロ/英ポンドのテクニカル分析は、「ユーロ/英ポンド、下落一服シグナルが出現」をご覧ください(マイページへのログインが必要です)。

ECBの利下げは賃金動向次第か
ラガルドECB総裁は30日のTVインタビューで、理事会メンバーはタイミングについて様々な見解を持っているものの、「次の一手は利下げ」で全員が一致していると述べました。そのうえで、「賃金関連のデータが決定的に重要だ」と指摘しました。

ユーロ圏の23年7-9月期賃金・俸給は前年比7.4%、20年コロナショックでの落ち込みの反動で大幅に上昇した後も高止まりしているようにみえます。ただ、ECBの同データは発表のタイミングが遅いので、ECBはその他の関連データも判断材料とするはずです。

ユーロ圏賃金

ECB内部でもタイミングの意見は分かれる
ナーゲル・ドイツ連銀総裁(タカ派)は30日、「ユーロ圏のインフレは(2%目標の)正しい方向に向かっているのは間違いないが、もっとデータが必要だ」と述べました。

ブイチッチ・クロアチア中銀総裁(タカ派)は30日、利下げ開始が4月になるか6月になるかは大きな問題ではないとの趣旨の発言をしました。

センテノ・ポルトガル中銀総裁(ハト派)は29日、「5月の賃金データを待つ必要はない」として、早期で緩やかな利下げを支持しました。

ビルロワドガロー・フランス中銀総裁(ハト派)は27日、今後のどの会合でも利下げする可能性があると語りました。

ECBハトタカ

市場は4月以降毎回の0.25%利下げを織り込む
30日のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は3月の利下げ(0.25%と想定、以下同じ)を24%、4月の利下げを92%織り込んでいます。そして、4-10月の計5回の理事会で毎回の利下げをほぼ確実視しています。ECBの判断と市場の観測にはまだ開きがあるとみられ、それがどのように埋まるのかは今後のデータ次第となりそうです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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