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中央銀行からのメッセージは?

2024/01/22 12:52

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【今週のポイント】
・日銀会合やECB理事会の結果を受けて、市場の金融政策見通しがどう変化するか
・植田日銀総裁やラガルドECB総裁の記者会見で先行きのヒントがでるか
・BOCの声明や総裁会見で利下げ観測が後退するか

今週(1/22- )は中銀会合シリーズの前半。23日に日銀、24日にBOC(カナダ)、25日にTCMB(トルコ)、SARB(南アフリカ)、ECBの政策会合の結果が判明します。後半の来週は、31日にFRB(日本時間2月1日)、1日にBOE(英国)。

今週、最も注目されるのは、日銀の金融政策決定会合の結果と植田総裁の記者会見でしょう。日銀は早晩、金融緩和の縮小に着手するとみられます。昨年12月7日には植田総裁の「チャレンジング」発言を受けて、今年1月にも利上げ(マイナス金利の解除)に踏み切るとの観測が強まりました。

しかし、その後に植田総裁が緩和縮小に慎重な姿勢をみせたこと、インフレ率のピークアウト感があること、そして能登半島地震が発生したことなどから、市場の利上げ観測が後退。Bloombergが1月上旬に行った調査では51人のエコノミストの約6割が4月の利上げを予想、3月以前の利上げ予想はほとんどなくなりました。

今週の主要経済指標・イベント

また、日銀の会合終了時に公表される「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、24年度の物価見通しが下方修正されるとの報道もあります。事実なら、それも利上げ観測の後退要因となりえます。

そのため、今週の決定会合で金融緩和の修正に向けた明確なシグナルは出ないでしょう。ただ、日銀内には早期利上げ支持も根強くある模様です。市場は、声明や総裁会見での微妙なニュアンスの変化にも神経質に反応するかもしれません。

ユーロ圏では、景気の低迷が続いており、インフレ率に鈍化傾向がみられます。そうした状況下でも、ECB関係者からは早期利下げをけん制する発言が頻繁に出ています。タカ派のホルツマン・オーストリア中銀総裁は15日、ダボスでインタビューに応じて、「24年に利下げを想定すべきでない」と強い口調で述べました。中立ないしややハト派寄りとされるチーフエコノミスト、レーン理事は12日の講演で、「利下げは近い将来のトピックではない」と述べました。

ラガルド総裁は11日のTVインタビューで、利下げの時期に関して言葉を濁しました。19日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が有力視する利下げタイミングは4月(確率68%)。理事会後の会見でラガルド総裁から市場の利下げ観測をけん制する発言が出るのか、要注目でしょう。<西田>

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豪ドル/円などのクロス円は、22-23日の日銀金融政策決定会合が材料になりそうです。日銀の声明や植田総裁の会見を受けて市場の利上げ観測が後退する場合、円安圧力が加わるとともに、クロス円は堅調に推移する可能性があります。

24日には、NZの23年10-12月期CPI(消費者物価指数)が発表され、またBOC(カナダ中銀)の政策会合が開かれます。NZドルはCPIの、カナダドルはBOC会合の結果に反応しそうです。

米国など主要国の株価動向にも注目です。19日の米株式市場では、ダウとS&P500が史上最高値をつけました。主要国の株価が上昇を続ける場合、リスクオン(リスク選好)の動きが強まる可能性があります。リスクオンは円にとってマイナスになる一方で、豪ドルやNZドルにとってプラスになると考えられます。
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TCMB(トルコ中銀)が25日に政策会合を開きます。市場では、前回23年12月の会合時と同じく2.50%の利上げを行うとの見方が有力です(政策金利は45.00%へ)。市場予想とかい離する結果になれば、トルコリラが反応しそうです。

TCMBの声明にも注目です。TCMBは前回会合時の声明で、「金融引き締め(利上げ)サイクルを可能な限り早期に完了させる」とし、近く利上げを終了する意向を表明しました。今回の声明で、利上げサイクルの終了が示唆されるかどうかに注目です。トルコの12月CPI(消費者物価指数)は前年比64.77%と、かなり高い状況です。こうした中でTCMBが利上げサイクルの終了を示唆すれば、トルコリラ安圧力が加わる可能性があります。

25日には、SARB(南アフリカ中銀)の政策会合も開かれます。政策金利は現行の8.25%に据え置かれるとの見方が市場では大勢です。市場では、SARBは5月に利下げを行うとの観測があります(3月の会合は政策金利の据え置きを予想)。SARBの声明やクガニャゴ総裁の会見を受けて、市場の金融政策見通しが変化するかどうかに注目です。声明やクガニャゴ総裁の会見が利下げ観測を後退させるような内容になれば、南アフリカランドの支援材料になりそうです。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:143.000円~150.000円>
米長期金利(10年物国債利回り)は19日、昨年12月上旬以来となる4.20%に接近しました。昨年11-12月の期間で行った回帰分析に基づけば(下記)、長期金利4.20%から求められる米ドル/円の推計値は146.23円。ただし、今年1月に入って米ドル/円の実勢値が推計値を2%前後上回るケースが散見されます。日銀の利上げ観測の後退が背景と考えることができそうです。

   推計式:<米ドル/円>=96.195+11.912*<米長期金利>
         推計期間:23.11.1-12.29 決定係数R2=0.92

仮に、米長期金利が4.20%で、かつ米ドル/円の実勢値が推計値を2%上回るならば、米ドル/円は149.15円が想定されます。23日の日銀金融政策決定会合の結果を受けて、利上げ観測が一段と後退する、あるいは米長期金利が4.20%を超えて上昇する場合、昨年11月中旬以来となる米ドル/円の150円台が視野に入るかもしれません。

一方で、日銀の会合結果を受けて日本の長期金利が上昇する、あるいは来週のFOMCを控えてここもと上昇基調だった米長期金利が反落するなどのケースでは、米ドル/円は軟化しそうです(例えば、上記推計式に基づけば、米長期金利4.00%から求められる米ドル/円の推計値は143.85円)。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/円 予想レンジ:159.000円~164.000円>
ユーロ/円は今年に入って上昇基調が続いています。これは米ドル/円が大きく上昇したためです。ユーロ/米ドルは下落基調でした。ユーロ/米ドルは足もとで、昨年の変動レンジ(1.12743ドル~1.04466ドル)の中心(=1.08605ドル)近辺で推移しています。

ECBが25日の理事会および総裁会見を利用して市場の利下げ観測を後退させるならば、ユーロ/米ドルに上昇圧力が加わる可能性はあります。ただ、ECBとFRBの金融政策の方向およびタイミングが類似しているため(市場は、春の利下げ開始や、24年中に0.25%×5回程度の利下げを見込む)、来週のFOMCを前にユーロ/米ドルの方向感は出にくいかもしれません。

今週のユーロ/円は、日銀の金融政策決定会合の結果を受けた米ドル/円の動きに大きく影響を受けそうです。米ドル/円が昨年11月中旬以来となる150円台を目指す場合、ユーロ/円は昨年11月27日につけた直近高値の163.654円が視野に入るかもしれません。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.06800NZドル~1.08500NZドル>
24日にNZの23年10-12月期CPI(消費者物価指数)が発表されます。物価の動向はRBNZ(NZ中銀)の金融政策に大きな影響を与えるため、要注目です。

RBNZは前回23年11月の政策会合時の声明で、「インフレ圧力が想定以上に強まれば、追加利上げが必要となる可能性が高い」としました。一方で、RBNZのこれまでの利上げの影響もあってNZの景気が減速していることから、市場は“RBNZの利上げサイクルはすでに終了し、次の一手は利下げになる”と予想しています。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によれば、市場では5月に利下げが行われるとの見方が有力です(2月と4月の政策会合は政策金利の据え置きを予想)。

CPIの市場予想は前年比4.7%と、RBNZ(NZ中銀)のインフレ目標(2~3%)を引き続き上回るものの、上昇率は7-9月期の5.6%から鈍化するとみられています。CPIが市場予想を下回る結果になれば、RBNZの利下げ観測が市場で強まるとともに、NZドル安圧力が加わりそう。その場合、豪ドル/NZドルは、1月2日高値の1.08269NZドルを超えるかもしれません。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.32000カナダドル~1.36000カナダドル>
24日にBOC(カナダ中銀)の政策会合が開かれます。会合の結果に米ドル/カナダドルは反応しそうです。

政策金利は現行の5.00%に据え置かれると考えられます。その通りの結果になれば、BOCの声明やマックレム総裁の会見が材料になりそうです。

市場では、BOCは4月に利下げを行うとの観測があります。BOCは前回23年12月会合時の声明で、「必要なら、政策金利をさらに引き上げる用意がある」と表明しました。この姿勢に変化がないなど、声明やマックレム総裁の会見が利下げ観測を後退させるような内容になれば、カナダドル高材料になりそうです。その場合、米ドル/カナダドルは、米ドル側の材料(米国の経済指標や長期金利の動向)にも影響を受けると考えられるものの、1.32828カナダドル(1/5安値)に向かって下落する可能性があります。<八代>

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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