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加藤出氏との対談:主要中銀の金融政策見通し

2024/01/15 08:05

13日に開催された「マーケット2024新春特別セミナー」では、たくさんの方にご来場・ご視聴いただきました。厚く御礼申し上げます。

【ポイント】

・主要中銀の政策変更のタイミングは市場予想より遅れ、かつ小幅ではないか
・金融政策の差から「円高」になるとしても限定的ではないか

私は、第1部で東短リサーチのチーフエコノミスト加藤出(いずる)さんと主要国の金融政策について対談させていただきました。短い時間でしたが、興味深い話が多々聞けましたので、以下にご紹介します(控室での会話を一部含んでいます)。

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主要中銀の金融政策見通し
日銀を除く主要中銀が利下げに転換し、日銀が利上げするという市場の見方に同意しつつ、FRBは市場が織り込むほどのペースで利下げはできない。また、利下げ開始は3月でなく5月ではないか、その後は7月と11月に利下げ(24年中に計3回の利下げ)との見通し。

一方で、日銀の金融緩和の修正も簡単ではなく、マイナス金利の解除を4月とみていました。そして、年内の追加利上げ(=ゼロ金利の解除)は難しいのではないかとのこと。

そして、ECBやBOE(英中銀)については、FRBを横目でみながら、利下げはFRBに遅れる可能性もあるのではないかとのこと。欧州では労組が強いために賃金圧力がなかなか低下しないこと、そして、FRBの利下げによってユーロや英ポンドが(対米ドルで)上昇すれば利下げに踏み切りやすいことがその理由。欧州はスタグフレーションになっており、金融政策のかじ取りは難しいだろうとも。

「円高」は限定的!?
加藤氏は、日本の少子高齢化や労働生産性の低さなどを背景に、長期的には「円安」だとみているようです。24年については金融政策の差から「円高」を予想するものの、上記の金融政策見通しを前提とすれば、「円高」になってもせいぜい対米ドルで130円台半ばぐらいではないかと。「円高」が進めば、外貨を買うタイミングを計るべきだろうとのことのこと。FRBが仮に大幅な利下げをしても、日銀の利上げは限定的とみられるので、金利差は引き続き「日<米」だからというのが大きな理由です。

政治に忖度すれば通貨安も
日銀の金融緩和の修正はすでに遅すぎるとの指摘もあるが、なかなか修正に踏み切れないのは政府債務が巨額であることや、変動型の住宅ローンが多いことなども背景にある。金融政策が物価の安定という本来の目的だけでなく、政治的な忖度にも影響されるようだと円に下落圧力が加わりやすいとも。

同じことが米国にも言える。仮にトランプ氏が大統領になってFRBに対して強い金融緩和圧力をかけるならば、米国でインフレが再燃するとともに米ドル安になるのではないか。

その他に興味深かったのは・・・
日銀の政策会合直前にたびたびリーク報道があるが、政府関係者からだろう。会合に参加する政府関係者は事前にブリーフィングを受けるため、少なくとも総裁や副総裁がどういう議論を進めようとするかはわかるはず。

日銀もかつては政策決定の発表を決まった時刻に行っていた。しかし、実際の決定から発表までに時間があると、出席した政府関係者が先にメディアに漏らすため、決定後すぐに発表する現在のスタイルに変わった。

OIS(翌日物金利スワップ)で市場の金融政策見通しを測ることができるものの、日銀については過度に信用しない方が良い。日本ではOIS取引への参加者が非常に少ないため。

日銀はYCC(イールドカーブ・コントロール)を撤廃せずに、なし崩し的に形骸化していくのではないか。

植田総裁が昨年12月に「チャレンジング」と言ったのは、就任前の2月に「日銀総裁の仕事はチャレンジングだが・・」と議員に答えた経緯があり、「現在はどうか」との質問に「今もチャレンジングだ」という意味での発言だった。ただ、「年末から(来年にかけて)」と言ったのは言い過ぎだった。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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