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日銀のゼロ金利解除の経験、マイナス金利解除への示唆

2023/12/18 07:43

【ポイント】
・日銀は00年および06年にゼロ金利を解除
・利上げタイミングは米FRBに遅れ、00年には早期に利下げへ転換
・FRBは23年7月に打ち止めた可能性が高く、日銀の利上げは続かないかも

日銀は金融緩和の修正を検討し始めており、16年1月に導入したマイナス金利(※1)の解除を視野に入れています。以下では、00年8月および06年7月のゼロ金利解除を概観し、マイナス金利解除に向けての示唆を得たいと思います。

※1 市中銀行が日銀に預ける当座預金のうち「政策金利残高」にマイナス0.1%の金利を適用すること。

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金融危機(※2)後の景気低迷に対して、日銀は99年2月にゼロ金利政策(※3)を導入しました。その後、米国のITブームの追い風もあり、日本経済が回復基調となったため、日銀は00年8月にゼロ金利を解除し、政策金利を0.25%に引き上げました(この時、植田審議委員は解除に反対)。その後、米国でIT株バブルが弾けて、01年3月に米国がリセッション入りしたこともあり、日銀は01年3月にゼロ金利を復活させるとともに量的緩和を導入しました。

※2 平成バブル崩壊の後遺症によって、97年に三洋証券や北海道拓殖銀行が破たん、98年に山一証券、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行などが破たん。

※3 当時の政策金利は無担保コールレート(翌日物)。

米国の住宅ブームにけん引されて世界経済が回復基調を強めたため、日銀は06年3月に量的緩和を終了、06年7月にゼロ金利を解除し、政策金利を0.25%に引き上げました。07年2月には0.50%に引き上げました。その後、リーマンショックを受けて08年10月に金融緩和に舵を切り、10年10月にはゼロ金利(正確には0.0-0.1%の超低金利)と量的緩和を組み合わせた包括的金融緩和策を採用しました。

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00年8月のゼロ金利解除、06年7月のゼロ金利解除の両方に共通しているのは、日銀が金融引き締めに舵を切ったのが、米FRBに相当に遅れたことでしょう。

日米の政策金利

00年のケースでは、米FRBは99年6月に利上げを開始。日銀がゼロ金利を解除したのは、FRBの最終利上げ(00年5月)の3カ月後でした。また、06年のケースでは、米FRBは04年6月に利上げを開始、日銀のゼロ金利解除はFRBの最終利上げ(06年6月)の1カ月後でした。そして、00年のケースでは、ゼロ金利解除からわずか7カ月後にゼロ金利の復活を余儀なくされました。

さて、米FRBは22年3月に利上げを開始、23年7月の利上げをもって利上げサイクルが終了した可能性が高そうです。米国をはじめとした世界経済の状況次第でしょうが、日銀がマイナス金利を解除して利上げを開始するとしても、すぐに緩和転換を余儀なくされるリスクをはらんでいるのかもしれません。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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