マネースクエア マーケット情報

サンクスギビングデー

2023/11/20 12:23

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【今週のポイント】
・ブラックフライデーでクリスマス商戦のスタートをチェック
・ECB議事要旨や日本CPIで金融政策見通しに変化は生じるか
・トルコ中銀の利上げ幅とタカ派的な姿勢は変化するか

今週(11/20- )は、23日が米国の感謝祭(サンクスギビングデー)。翌24日はブラックフライデー。この日からクリスマス商戦が本格的にスタートします。さらに、ネット通販が最も活況を呈するとされる、週末を挟んだサイバーマンデーも注目されます。

今年のクリスマス商戦はどうでしょうか。高金利下で景気の先行きが懸念される状況で好調は期待できないかもしれません。NRF(全米小売連盟)は今年11-12月の小売売上高(自動車・ガソリン・レストランを除く)を3-4%増と予想しています。これは19年の3.8%以来の低い伸びです。ただ、コロナ禍で20年、21年と売り上げが大きく伸びたのは、政府が支援金や減税によってサポートしたからでしょう。その反動があってもおかしくない22年も5.4%増でした。コロナ前の10年間の平均が3.6%なので、今年も悪くないと予想されているようです。

今週の主要経済指標・イベント

クリスマス商戦に関する報道は、ショッピングセンターの客足やクレジットカードの利用額など断片的なものがほとんど。クリスマス商戦の包括的な結果が判明するころには市場の関心は他に移っていそうです。それでも、どんな報道のされ方をするのか、興味深いところでしょう。<西田>

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豪ドル/米ドルやNZドル/米ドル、米ドル/カナダドルは、米国の長期金利(10年物国債利回り)の動向に反応しやすい地合いになりそうです。米長期金利の低下が続けば、米ドルが全般的に軟調に推移して、豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは上値を試し、一方で米ドル/カナダドルは下値を試す展開になると考えられます。

クロス円(豪ドル/円やNZドル/円、カナダドル/円など)は、米ドル/円の動向にも影響を受けます。米ドル/円が軟調に推移する場合、クロス円は伸び悩む可能性があります。

23日にTCMB(トルコ中銀)の政策会合が開かれます。TCMBはエルカン総裁が就任した6月以降、5会合連続で利上げを行っており、現在の政策金利は35.00%です。トルコの10月CPI(消費者物価指数)は前年比61.36%と、上昇率は9月の61.53%から若干鈍化したものの、依然として高く、TCMBは23日の会合で政策金利をさらに引き上げると考えられます。

TCMB会合における注目点は、「利上げ幅」や「TCMBのタカ派的な姿勢が変化するか」になりそうです。10月の会合時の声明では、「金融引き締めは、インフレ見通しの大幅な改善が達成されるまで、タイムリーかつ段階的な方法で必要なだけさらに強化される」とされました。利上げ幅が市場予想の2.50%を下回る、あるいは声明でTCMBのタカ派的な姿勢が弱まったと市場が受け止めれば、利上げが行われたとしても、トルコリラは軟調に推移しそうです。

23日には、SARB(南アフリカ中銀)の政策会合も開かれます。SARBは7月と9月の2会合連続で政策金利を8.25%に据え置いており、市場では政策金利は今回も据え置かれるとの見方が大勢です。SARBの次の一手は利下げとなり、早ければ24年5月に利下げが行われるとの見方もあります。会合後に行われるクガニャゴSARB総裁の会見が利下げ観測を後退させるような内容になれば、南アフリカランドが堅調に推移する可能性があります。
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BOM(メキシコ中銀)のロドリゲス総裁は13日に「今後の政策会合で利下げの議論を開始する可能性がある」と述べ、ヒース副総裁は17日に「24年2月か3月から、1~3回利下げする可能性がある」と語りました。

23日にメキシコの11月前半のCPI(消費者物価指数)が発表されます。CPIが市場予想の前年比4.35%を下回る結果になれば、BOMの利下げ観測が市場で高まるとともに、メキシコペソの上値を抑える要因になる可能性があります。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:148.000円~151.000円>
先週17日、米ドル/円は150円を割り込み、米長期金利(10年物国債利回り)は4.50%を下回りました。4月1日-9月末の期間で回帰分析した結果(※)に基づけば、米長期金利4.435%(17日実績)に対応する米ドル/円の推計値は148.953円で、149.634円(17日実績)を0.5%下回りました。「実績>推計値」なので、米長期金利が上昇しなければ、米ドル/円には上昇圧力が加わりにくくそうです。

  ※推計式:<米ドル/円>=87.392+13.880*<米長期金利>
   推計期間:23年4月1日-9月29日 決定係数R2=0.88

今週は、FOMC議事録(10/31-11/1開催分)が公表されます。据え置きを決定した同会合の声明文やパウエル議長の会見はややハト派的でした。したがって、議事録を受けて米長期金利が大きく上昇するとは考えにくいところ。ただ、感謝祭の休場もあり、市場の流動性は低下しそうです。思わぬ値動きには注意する必要がありそうです。

他方、市場は、日本の10月CPI(消費者物価指数)がやや上振れするとみているようです。市場予想の通り、あるいはそれを上回るなら、植田総裁が金融緩和継続を訴えても、市場は24年春に向けてゼロ金利解除を少しずつ織り込んでいきそうです。その場合は、米ドル/円の下押し圧力となるかもしれません。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/円 予想レンジ:160.000円~164.500円>
ユーロ/円は先週(11/13- )、162円、163円、164円の壁を一気に突き抜けた後、週後半にスピード調整が入ったようです。10月末からの上昇トレンドが転換するとの判断は時期尚早かもしれません。

今週、ECB理事会の議事要旨(10/25-26開催分)が公表されます。ラガルド総裁は理事会後の会見で、「政策金利がピークに達したかどうか、断定はしない」と述べ、「今はフォワード・ガイダンスに適した時期ではない」と付け加えました。一方で、「利下げは議論されなかった。時期尚早だ」と明言しました。議事要旨では、追加利上げを求める声はあったのか、参加者全員が高金利の維持を支持したのか、利下げが可能になる条件などにも一切触れられなかったのか、などが注目されます。

17日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は次回12月の理事会からわずかながら利下げを織り込み始めます。そして、4月には利下げ確率が76%、7月には追加利下げがほぼ100%、9月には3回目の利下げが63%織り込まれています。理事会の議事要旨を受けて市場の利下げ観測は後退するでしょうか。

仮に、ECBの利下げ観測が今後強まる一方で、対照的に日銀の利上げ観測が強まるようなら、ユーロ/円は16日の164.243円でピークをつけたと事後的に判断できるかもしれません。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.07700NZドル~1.09400NZドル>
先週発表された豪州の10月雇用統計や7-9月期賃金コスト指数は、市場予想よりも強めの結果でした。

雇用統計と賃金コスト指数の結果は、以下の通り。( )は市場予想です。
・失業率:3.7%(3.7%)
・労働参加率:67.0%(66.7%)
・雇用者数:前月比5.50万人増(2.00万人増)
・賃金コスト指数:前年比4.0%(3.9%)

失業率は市場予想通りだったものの、労働参加率が市場予想に反して9月の67.0%から上昇して過去最高となりました。これをみると、失業率はヘッドラインが示唆するよりも良好と言えそうです。

労働市場の堅調は豪ドルにとってプラス材料と考えられ、豪ドル/NZドルを下支えしそうです。

今週は21日にRBA(豪中銀)議事録(11/7会合分)が公表され、またブロックRBA総裁が討論会に参加します。市場ではRBAの利上げ観測もあります。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によれば、市場が織り込む利上げの確率は、次回12月5日の会合では5%程度ですが、24年2月までで約2割、3月まで約3割へと上昇します(日本時間20日10:00時点)。議事録の内容やブロック総裁の発言が利上げ観測を高める内容になれば、豪ドルが堅調に推移して、豪ドル/NZドルは1.09351NZドル(11/2高値)に接近するかもしれません。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.35000カナダドル~1.38500カナダドル>
足もとの米ドル/カナダドルは、米国の長期金利(10年物国債利回り)の動向に反応しやすい地合いです。米長期金利は17日に一時およそ2カ月ぶりの低い水準をつけました。米長期金利の低下が続けば、米ドル/カナダドルは200日移動平均線(11/17時点で1.35075カナダドル)に向かって下落しそうです。

21日に発表されるカナダの10月CPI(消費者物価指数)も材料になる可能性があります。CPIの市場予想は前年比3.1%と、BOC(カナダ中銀)のインフレ目標(2%を中心に1~3%のレンジ)を上回るものの、上昇率は9月の3.8%から鈍化するとみられています。

市場では、BOCの次の一手は利下げになるとの見方が有力。市場の金融政策見通しを反映するOISによれば、市場が織り込む利下げの確率は、次回12月6日の会合で約1割、24年1月までで約2割、3月までで約3割です(日本時間20日10:30時点)。CPIが市場予想を下回る結果になれば、利下げ観測が高まるとともに、カナダドルが軟調に推移して、米ドル/カナダドルを下支えする可能性があります。<八代>

西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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