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M2TVへのご質問:ユーロ債について教えて!

2023/10/11 07:43

10月6日のグローバルView(YouTube)に以下のご質問をいただきました(勝手ながら文言は変更させていただきました。ご容赦ください。オリジナルのご質問はYouTubeのコメント欄でご確認いただけます)。

ユーロ債について教えてください。ユーロ債は誰が発行して、誰が返済するのか。また、債券の発行によって調達した資金はどのように使われるのでしょうか。

まず、「ユーロ債」というと2種類の債券が想起されます。両者は全く異なるものです。

ユーロ円債など
昔からあるユーロ債は、ユーロ圏やユーロ通貨と全く関係がありません。ここでいうユーロ債とは、発行通貨の母国市場以外の市場で発行される債券のこと(企業年金連合会:用語集)。例えば、日本の企業(あるいは外国の企業)が円建ての債券をロンドン市場やNY市場で発行すれば、それらはユーロ円債と呼ばれ、ユーロ債の一種です。
※ここでの「ユーロ」は、欧州で自国以外の通貨や金融商品の取引が盛んだったことから来ていますが、必ずしも欧州が絡んでいるとは限りません。

EU共同債
そして、恐らくご質問いただいたのは、ユーロ圏が発行する債券という、もう一つの意味の方でしょう。残念ながらユーロ圏ではありませんが、EU(欧州連合)が発行する共同債があります。主なものはコロナの復興資金として2020年から発行されており、各国の公的支出を支援するものです。

コロナ復興計画では26年までに計8,000億ユーロの債券が発行される計画です。EUが発行するので信用力は高く、高い格付けを得ていますが、発行量は少なく(ユーロ圏主要国の国債発行残高は兆ユーロ単位)、また「国債」ではないので、流動性に乏しいようです。ただし、24年中に発行額が5,000億ユーロに達する見込みで、十分な規模に達したとして先物が上場される可能性があるようです。そうなれば、投資家の売買も活発化しそうです。

コロナ以前にもEU共同債が発行された実績はあるようですが、規模は小さく、目的は域内の金融や為替の安定に限定されたものでした。

EUにも、欧州委員会が管轄する予算が少ないながら存在します。使途は、域内の経済成長や農業支援など。資金調達は債券ではなく、各国政府からの上納金(GNI=国民総所得≒GDPの0.7%程度)、VAT(付加価値税)の一部、EU外との貿易にかかわる関税などが中心です。英国がEUを離脱した理由の一つは上納金の大きさでした。

以上の通り、ユーロ圏全体の信用力を示すベンチマーク(指標)は存在しません。投資家は、財政規律の堅固なドイツなどや、逆に規律の脆弱なイタリアなどの国債利回り、さらには両者の格差などを参考にしています。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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