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騙されない投資家1~「安全な投資はない!」

2022/01/25 08:06

2018年7月から19年11月まで55回にわたって、マイナビニュースに「騙されない投資家になるために」というコラムを連載いたしました(アーカイブは現在でも閲覧可能です)。その中から厳選したものを、データをアップデートするなど加筆・修正して、不定期でお届けします。

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投資の初心者の方で、十分に説明を聞いて投資をしたのに、思わぬ損失が出て「騙された!」と感じたことはありませんか。でも、金融商品の正しい知識を持っていれば、そうした事態は避けられたかもしれません。そこで、投資の初心者が知っておくべきこと、誤解しやすいことを、できるだけ平易に解説しようと思います。

「安全な投資はない!」

いきなりのタイトルですが、100%安全な投資はないという意味です。投資とは、将来得られるであろう収益を目的として、現在持っている資金(借り入れも含む)を投入することです。

「将来得られるであろう収益」は確定しているわけではなく、あくまで投資家が期待しているにすぎません(※)。そして、現実には収益がマイナスになること、つまり損失が発生することもあるわけです。

(※)投資家の期待は、過去の実績や、様々な要素を分析した理論値などから形成されます。そして、それらは先物やオプションといった金融商品から逆算して求めることも可能です。

株式投資の場合は、簡単に理解できるでしょう。株価は上がる場合もあれば、下がる場合もあります。それでも、上がると期待するから投資するわけです。

では、債券の場合はどうでしょう。元本が保証されており、一定期間保有すると元本は戻ってきます。そして、債券を保有している期間中は利子を受け取ることもできます。ところが、債券も安全ではありません。元本を保証しているのは、あくまでも発行体とよばれる企業や地方自治体、国などです。

発行体に元本と利子を支払う能力と意思があれば、その債券への投資は期待通りの収益を上げるはずです。しかし、発行体の財務状況が悪化して支払い能力がなくなれば、債務不履行、いわゆるデフォルトが発生します。その場合、①利子が受け取れない、②元本の一部または全部が返済されない、①と②のいずれか、または両方が発生します。

発行体が国の場合は支払い能力に問題はなさそうですが、一定の条件下で国が支払わないことを選択する可能性もゼロではありません。また、発行体に支払い能力と意思があっても、投資家が満期より前に債券を売却した場合に損失が発生する可能性もあります。(これらの点に関してはいずれ詳しくお話ししたいと思います)。

預貯金の場合は、預け入れた金融機関が保証してくれるだけでなく、預金保険機構が保護してくれます。それでも、金融機関が過去に破たんしたケースは枚挙に暇がありませんし、預金保険機構が一定額以上の預金を保護しない、いわゆるペイオフが発動されたケースも、たった1度だけですが過去にありました。

投資とは呼べませんが、自分自身で保管する「タンス預金」も決して安全ではありません。火災による焼失や紛失、盗難などによって損失が発生する可能性はあるからです。

投資の安全性については金融商品によって大きな差があり、安全性の高いものから、全く安全でないものまであります。ただし、そうした安全性の差は、それぞれの金融商品に期待される「将来得られるであろう収益」の差にかなり反映されていると考えるべきです。つまり、「将来得られるであろう収益」が大きい金融商品ほど、安全性は低いはずです。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。

西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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