ゴールドは反落、原油は切り返し 米金融政策や中東情勢に神経質
2024/04/26 11:05
ゴールドは反落、原油は切り返し 米金融政策や中東情勢に神経質
＜金は反落、安全資産への逃避が減退＞
今週（4/22─）の米ドル建て金先物は反落しました。イスラエルとイランの攻撃の応酬は今のところエスカレートしておらず、安全資産としての金への逃避需要が減少したためです。2,300ドル付近で下げ止まりの様相もみせていますが、米再利上げの可能性も懸念され始めました。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ：2,250─2,400ドル
円建て金先物価格の１週間予想レンジ：10,900─12,000円
＊米利上げはあるのかに関心
米国で強いインフレ指標が続く中、米連邦準備理事会（FRB）に対する市場の関心は、利下げの開始時期から、利上げの可能性に移り始めています。
米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は18日、利上げの可能性は低いとしながらも、排除はできないと指摘。「利上げは自分自身の基本方針ではない」としましたが、「経済指標で目標達成に利上げが必要と示されれば、当然そうしたい」と述べました。
NY連銀総裁は米連邦公開市場委員会（FOMC）では副議長を務め、常に投票権を持つ常任メンバーであり、発言は重みを持ちます。ウィリアムズ総裁は、物価は目標に戻る（低下する）との予想は崩しませんでしたが、市場は一気にタカ派警戒度を強めました。
米消費者物価（CPI）は1─3月と3カ月続けて前月比0.4％上昇と強い数字が連続しています。インフレの強さは一時的、とはとても言えない状況であり、なかでも賃金上昇を反映しやすいスーパーコア（エネルギーを除くサービスコアからさらに住居費を除いたもの）の強さが目立ちます。
その雇用は3月米雇用統計で非農業部門雇用者数が30万3,000人増と市場予想を上振れ。1月からの3カ月間平均でも27万6,333人と高水準です。平均時給は3月時点では落ち着いていますが、雇用が強ければ、いずれ賃金にも表れるでしょう。
23日に発表された4月の米総合購買担当者景気指数（PMI）速報値が50.9と、4カ月ぶりの低水準となったことで、タカ派懸念はいったん後退しました。しかし、今後の経済データ次第で再び利上げ観測が強まる可能性もあり予断を許しません。
もし再利上げとなれば、利息の付かない金には不利ですが、金利上昇で株安が進めば、リスク回避の資金が金に逃避する可能性もあります。
＊米ドル建て金先物の日足（期間：2023/9/14～2024/4/25）、青：25日移動平均線、黄：200日移動平均線
（出所：TradingView）
＜原油は反発、弱めの米経済指標で＞
今週のWTI原油先物価格は反発しました。4月の米総合購買担当者景気指数（PMI）など弱めの景気指標に反応しドル指数が低下。ドル建てで取引される原油先物にも割安感が出ました。中東情勢も一段の悪化は抑えられていますが、依然不安定で予断を許しません。
米エネルギー情報局（EIA）が24日に発表した19日時点の週間石油在庫統計では、原油在庫が5週ぶりに減少し需給の引き締まりも意識されています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ：１バレル81─85ドル
＊あちらが収まればこちらが
イランとイスラエルの攻撃の応酬は今のところエスカレートしていないようです。19日にイスラエルによるとみられる爆発がイラン中部でありましたが、イランは同日の爆発を「重要ではない」と指摘。双方とも抑制的な態度を示していることで、市場のリスク回避姿勢が後退しています。
投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所のVIX指数（別名：恐怖指数）は19日に昨年10月以来となる20ポイントに一時上昇しましたが、足元では15ポイント台まで低下しています。
しかし、イスラエルとイランの攻撃の応酬がいったん収まる兆しが出てきたことで、今度はガザ情勢をめぐる懸念が再び高まってきました。イスラエルはイスラム組織ハマスとの衝突を巡りパレスチナ自治区ガザ最南部のラファに侵攻する姿勢を強めていると伝えられています。
ラファはもともと25万─30万人が住むために建設された町とされますが、現在は避難者が多く逃げ込んでおり、ガザ人口の4分の3に相当する150万人以上に膨れ上がっていると言われます。イスラエルがラファを攻撃すれば民間人の犠牲者が増えるおそれがあり、緊張感が高まることが懸念されています。
軍事衝突が中東全体に広がらなければ金融市場のリスク回避も限定的となるかもしれません。しかし、イスラエルとイスラム圏全体の対立が中東情勢を不安定化させている大きな背景であり、この点が緩和されない限り、中東を覆う緊張感の解消は期待薄です。
＊WTI原油先物の日足（期間：2023/8/17～2024/4/25）、青：25日移動平均線、黄：200日移動平均線
（出所：TradingView）
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＜金は反落、安全資産への逃避が減退＞
今週（4/22─）の米ドル建て金先物は反落しました。イスラエルとイランの攻撃の応酬は今のところエスカレートしておらず、安全資産としての金への逃避需要が減少したためです。2,300ドル付近で下げ止まりの様相もみせていますが、米再利上げの可能性も懸念され始めました。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ：2,250─2,400ドル
円建て金先物価格の１週間予想レンジ：10,900─12,000円
＊米利上げはあるのかに関心
米国で強いインフレ指標が続く中、米連邦準備理事会（FRB）に対する市場の関心は、利下げの開始時期から、利上げの可能性に移り始めています。
米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は18日、利上げの可能性は低いとしながらも、排除はできないと指摘。「利上げは自分自身の基本方針ではない」としましたが、「経済指標で目標達成に利上げが必要と示されれば、当然そうしたい」と述べました。
NY連銀総裁は米連邦公開市場委員会（FOMC）では副議長を務め、常に投票権を持つ常任メンバーであり、発言は重みを持ちます。ウィリアムズ総裁は、物価は目標に戻る（低下する）との予想は崩しませんでしたが、市場は一気にタカ派警戒度を強めました。
米消費者物価（CPI）は1─3月と3カ月続けて前月比0.4％上昇と強い数字が連続しています。インフレの強さは一時的、とはとても言えない状況であり、なかでも賃金上昇を反映しやすいスーパーコア（エネルギーを除くサービスコアからさらに住居費を除いたもの）の強さが目立ちます。
その雇用は3月米雇用統計で非農業部門雇用者数が30万3,000人増と市場予想を上振れ。1月からの3カ月間平均でも27万6,333人と高水準です。平均時給は3月時点では落ち着いていますが、雇用が強ければ、いずれ賃金にも表れるでしょう。
23日に発表された4月の米総合購買担当者景気指数（PMI）速報値が50.9と、4カ月ぶりの低水準となったことで、タカ派懸念はいったん後退しました。しかし、今後の経済データ次第で再び利上げ観測が強まる可能性もあり予断を許しません。
もし再利上げとなれば、利息の付かない金には不利ですが、金利上昇で株安が進めば、リスク回避の資金が金に逃避する可能性もあります。
＊米ドル建て金先物の日足（期間：2023/9/14～2024/4/25）、青：25日移動平均線、黄：200日移動平均線
（出所：TradingView）
＜原油は反発、弱めの米経済指標で＞
今週のWTI原油先物価格は反発しました。4月の米総合購買担当者景気指数（PMI）など弱めの景気指標に反応しドル指数が低下。ドル建てで取引される原油先物にも割安感が出ました。中東情勢も一段の悪化は抑えられていますが、依然不安定で予断を許しません。
米エネルギー情報局（EIA）が24日に発表した19日時点の週間石油在庫統計では、原油在庫が5週ぶりに減少し需給の引き締まりも意識されています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ：１バレル81─85ドル
＊あちらが収まればこちらが
イランとイスラエルの攻撃の応酬は今のところエスカレートしていないようです。19日にイスラエルによるとみられる爆発がイラン中部でありましたが、イランは同日の爆発を「重要ではない」と指摘。双方とも抑制的な態度を示していることで、市場のリスク回避姿勢が後退しています。
投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所のVIX指数（別名：恐怖指数）は19日に昨年10月以来となる20ポイントに一時上昇しましたが、足元では15ポイント台まで低下しています。
しかし、イスラエルとイランの攻撃の応酬がいったん収まる兆しが出てきたことで、今度はガザ情勢をめぐる懸念が再び高まってきました。イスラエルはイスラム組織ハマスとの衝突を巡りパレスチナ自治区ガザ最南部のラファに侵攻する姿勢を強めていると伝えられています。
ラファはもともと25万─30万人が住むために建設された町とされますが、現在は避難者が多く逃げ込んでおり、ガザ人口の4分の3に相当する150万人以上に膨れ上がっていると言われます。イスラエルがラファを攻撃すれば民間人の犠牲者が増えるおそれがあり、緊張感が高まることが懸念されています。
軍事衝突が中東全体に広がらなければ金融市場のリスク回避も限定的となるかもしれません。しかし、イスラエルとイスラム圏全体の対立が中東情勢を不安定化させている大きな背景であり、この点が緩和されない限り、中東を覆う緊張感の解消は期待薄です。
＊WTI原油先物の日足（期間：2023/8/17～2024/4/25）、青：25日移動平均線、黄：200日移動平均線
（出所：TradingView）
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