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ゴールドは上昇一服、原油も調整局面 「純金茶碗の価値」

2024/04/19 12:30

<金は上昇一服、米利下げ観測が後退>
今週(4/15─)の米ドル建て金先物は上昇一服となりました。インフレ指標の高止まりで米利下げ観測が後退。米金利が上昇する中、金は上値がやや重くなっています。ただ、米利下げ観測後退は株安要因にもなっており、株式市場からの逃避資金が下支えする中、依然として過去最高値圏を維持しています。

米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,300─2,450ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,100─12,200円

*米利下げ観測後退で株安、金に資金逃避か
1月の米消費者物価指数(CPI)が発表された2月時点では、米インフレの高止まりは一時的とみることもできましたが、2月・3月とも市場予想を上回る結果となりました。米雇用統計で示される労働状況も強く、インフレ鈍化のめどが立ちにくくなっています。

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は16日、「最近のデータは明らかにわれわれに自信を与えるものではなく、むしろその自信を得るには予想よりも長い時間がかかる可能性が高いことを示している」と述べ、利下げ開始時期の後ずれを示唆しました。

市場の米利下げ開始予想時期は大きく後ずれ。CMEフェドウオッチ(18日時点)によると、予想中心時期は6月から9月に後退、昨年末時点では6回程度を見込んでいた今年の利下げ回数も1-2回との見方が増えています。

足元で株式市場が調整局面に入っているのは、地政学リスクの高まりもありますが、これまで株価を支えてきた米利下げ転換期待が大きく後退していることが影響しているとみられています。金利上昇は利息の付かない金にとってマイナス材料ですが、株式市場からの資金逃避先として金が選択されていると考えられています。

*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/9/11~2024/4/18)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
米ドル建て金先物の日足チャート
(出所:TradingView)


<原油は下落、米原油在庫が増加>
今週のWTI原油先物価格は下落基調となりました。足元は約3週ぶり安値水準の82ドル台で推移しています。中東情勢は依然予断を許しませんが、新たな動きがみられないことから、いったん利益確定的な売りが優勢になったとみられています。米原油在庫の増加も需給の緩みを懸念させました。

WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル80─85ドル

*米原油在庫、4週連続で増加
米エネルギー情報局(EIA)が17日に発表した12日時点の週間石油在庫統計では、原油在庫が4週連続で増加しました。製油所の稼働率低下や、米国の石油需要が伸び悩んでいる可能性があるとみられています。ただ同週は、留出油とガソリンの在庫はともに2週ぶりに減少しており、需要全体としてはそれほど悪くないとの見方もあります。

今年の世界石油需要の見方が主要機関で分かれていることが話題になっています。石油輸出国機構(OPEC)は11日に発表した月報で、2024年の世界石油需要が前年比で日量225万バレル増になるとの従来見通しを据え置きました。一方、国際エネルギー機関(IEA)は12日公表した月報で、今年の石油需要の伸びの予測を13万バレル引き下げ日量120万バレル増としました。

中東情勢の行方が不透明なこともありますが、中国経済が不安定なほか、電気自動車(EV)の需要も見方が分かれており、原油価格の予想を難しくしています。

*WTI原油先物の日足(期間:2023/8/18~2024/4/18)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
WTI原油先物の日足チャート
(出所:TradingView)


<今週のトピック、盗まれた純金茶碗の「価値」は>
東京の百貨店、日本橋高島屋の展示販売会で1,000万円の純金製茶碗が盗まれました。茶碗は見つかり、犯人も逮捕されましたが、金価格が高騰している中、こうした犯罪は増えるかもしれないので警戒が必要です。

この事件で目を引いたのは、茶碗の転売価格でした。茶碗は24金(24K)製、つまり金の含有率が99.99%の純金で、重さは380グラム。展示販売会での価格は税込みで1,040万6,000円でした。

しかし、犯人が江東区の貴金属店で売却した値段は約180万円と販売価格の約6分の1。報道によると、犯人が売却したのは11日ですので、金の国内店頭買取価格は1グラム1万2,577円、少なくとも金の価値だけで477万9,260円になったはずです。詳しい事情はわかりませんが、足元を見られて買い叩かれたと考えられます。

180万円で買い取った貴金属店は、別の店に約480万円で転売したと報じられています。ちょうど純金分の価格になりますが、展示会での販売価格1,040万円の半分にもなりません。これはどうしてなのでしょうか。

残り半分は、デザインなど芸術作品としての価値ということになります。その「意匠」にプレミアムを感じる別の購入者がいれば、同じ価格もしくはそれ以上の価格で売ることもできますが、そうでなければ純金の分だけの価値になっていまします。

作品を気に入り、その値段を払う価値があると思えば、購入していいと思いますが、売却する際に、その値段で売れないかもしれないことには注意が必要であると言えそうです。


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伊賀大記

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伊賀大記(イガダイキ)

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