マネースクエア マーケット情報

日銀は4月にマイナス金利を解除できるか

2024/02/12 08:34

【ポイント】
・市場は4月の利上げを約7割の確率で織り込む
・足もとの経済指標は弱め
・今週のGDPや企業物価指数により利上げ観測は後退するか
・その場合、円の実効レートは一段の低下も

日銀が早期にマイナス金利を解除する(利上げする)との見方は後退しています。また、植田日銀総裁は9日の国会答弁で、マイナス金利解除後も「緩和的な金融環境が当面続く可能性が高い」と述べ、前日の内田副総裁と同様の見解を表明しました。

それでも、OIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は4月24-25日の会合でのマイナス金利解除を7割以上の確率で織り込んでおり(3月17-18会合では約3割)、24年中に計3回の利上げ(0.10%幅を想定)を5割以上の確率で予想しています。

もっとも、日銀が4月に利上げを開始することができるかは、今後の経済情勢次第でしょう。その点、利上げの後ズレを示唆する材料が散見されます。それらは、(1)賃金の伸びの鈍化、(2)小売売上高の鈍化、(3)インフレ率の鈍化、などです。

まず、厚生労働省の毎月勤労統計によれば、12月の現金給与総額(賞与含む)は前年比1.0%と市場予想(1.4%)を下回りました。

日本の賃金

経産省が発表した12月小売売上高は前年比2.1%と、市場予想(5.1%)や前月実績(5.4%)を大きく下回りました。

日本の小売売上高

そして、総務省が発表した1月の東京都区部CPI(生鮮食品とエネルギーを除く)は前年比3.1%と、市場予想(3.4%)や前月実績(3.5%)を下回り、27日に発表される全国CPIの下振れを示唆しました。

日本のCPI

今週は、1月企業物価指数(13日)、昨年10-12月期GDP(15日)、12月鉱工業生産(同)、12月第3次産業活動指数(16日)などが発表されます。とりわけ、GDPは7-9月期の落ち込み(前期比年率-2.9%)からの反発が予想されています(市場予想は同1.2%)。これらの経済指標が景気の軟調やインフレ圧力の低下を示唆するようであれば、日銀の利上げ観測はさらに後退するかもしれません。

日銀の円実効レートは、昨年12月に日銀の利上げ観測の高まりとともに上昇しましたが、年明け後は低下しています。一段と低下しないか要注目でしょう。

円の実効レート
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ