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FOMC議事録:タカ派的内容も、既に「過去の話」か?

2023/10/12 07:14

【ポイント】
・FOMC後の長期金利上昇によって「据え置き」派が過半数に?
・焦点は「抑制的な政策水準をどれだけ長く維持するか」へ
・UAWストライキ、学生ローン返済再開、シャットダウンなどのリスク要因に言及

9月19-20日に開催された米FOMCは政策金利の据え置きを決定しました。ただ、参加者の政策金利見通しである「ドット・プロット」の中央値が年内の追加利上げを示唆するなど、タカ派的でした。11日に公表された議事録はそれを裏付ける内容でした。

FOMC議事録


ただ、その後の長期金利上昇は、FOMC内のパワーバランスを「追加利上げ」派から「据え置き」派にシフトさせた可能性が高そうです。今後の焦点は、FOMCが「高金利」をいつまで維持するか、その間にインフレ率が顕著に鈍化して2%目標の達成が現実味を帯びるか、に絞られそうです。

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米長期金利は9月中旬以降に上げ足を速め、10月6日には一時4.89%と、07年8月以来の高値をつけました。これは、FOMCが「最後」の利上げを行った7月26日の水準を約1%、前回FOMC直後の水準を約0.50%上回っています。足もとで、長期金利の上昇を理由の一つとして、追加利上げに慎重なFOMC参加者の発言が増えています。

9月の「ドット・プロット」では、FOMC参加者19人中12人が年内に0.25%の追加利上げを予想、残る7人が据え置きを予想していました。その後に3人以上が「追加利上げ」から「据え置き」にシフトし、「据え置き」が過半数になったとしても不思議ではないでしょう。


ドットプロット


12日のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む年内の利上げ(0.25%幅)は0.25回まで低下しており、据え置き見通しが強まっていることを示しています。

米金融政策見通し OIS

今後の焦点は、いつ利下げに転じるかにシフトしそうです。上述のOISに基づけば、市場が5割超の確率(=メインシナリオ)で0.25%利下げを織り込むのは24年6月以降です。その時点までにFOMCは2%の物価目標達成を確信しているでしょうか。

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FOMC議事録で注目されたのは以下のポイントです。

景気を下押しするリスク要因として、UAW(全米自動車労組)のストライキが頻繁に言及されたこと。

政策金利(5.25-5.50%)は抑制的水準にあり、意図した通りに景気にブレーキをかけていると判断されたこと。

消費者ローンの金利上昇や財政支援のはく落、学生ローンの返済再開によって、家計の財政状況が厳しくなっていること。

労働市場は引き続きタイトながら、求人件数の減少、求人倍率の低下、自発的失業率の低下、週平均労働時間の減少など、労働需要の低下を示唆する指標が増えていること。

FOMCが重視する、住居費を除くコアサービス価格に顕著な鈍化がみられないこと(=インフレ目標の達成に自信が持てないこと)。

シャットダウン(政府機能の一部停止)が長期化すれば景気にネガティブであり、また経済指標の発表が遅れて政策判断を困難にすること(10月1日でのシャットダウンは回避されましたが、11月17日のシャットダウンの可能性は残っています)。

今後の政策判断はデータ次第であること。そして、数人の参加者は、政策判断と(市場との)コミュニケーションの焦点は、「政策金利がどこまで上昇するか」から「政策金利を抑制的な水準にどれだけ長く維持するか」にシフトすべきだと考えたこと。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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