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エリオット波動・宮田レポート(短期アップデート) ※6月9日更新

2023/06/09 10:08

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[日経平均]
【当面の想定レンジ】 30,750~33,350円

[NYダウ] 
【当面の想定レンジ】 33,100~34,700ドル

[ナスダック]
【当面の想定レンジ】 12,300~13,900

[米ドル/円]
【当面の想定レンジ】 137.000~142.000円


[日経平均]
世界金融危機の底値を付けた08年10月以降、日経平均はおよそ4年周期で底入れしており、現在の相場はコロナショック底(20年3月)を起点とする4年サイクルの中にあります。この4年サイクルは、二つの2年サイクル(2年+2年)で構成されています。22年3月からは後半の2年サイクルに入っており、さらに今年3月(彼岸底)からは現行2年サイクル後半(1年サイクル)に入っています。

筆者の想定では、現行1年サイクルの高値を付けるのは今年10月以降。それまで日経平均は上値追いの展開が期待できます。


【週足・エリオット波動分析】
21年9月からの第(2)波による調整は、今年の大発会安値(25,661円)を以て完了したとみています。
それはコロナショック底(20年3月)から34ヵ月後(フィボナッチ数)に付けた、重要な二番底に当たり、そこから日経平均は第(3)波に入った、というのが基本観です。

日経平均は今年の「彼岸底」から第➂波中の第(3)波=「サード・オブ・サード」強気相場が進行中です。
このサード・オブ・サードは、日経平均を4万円レベルに押し上げる、力強くダイナミックな強気波動に育っていくでしょう。

日経平均は6月7日に一時32,708円まで上昇、節目の[32,778円]をほぼ達成後に下げに転じ、翌8日には一時31,420円まで下げるという荒っぽい動きになっています。

来週は米FOMC(6/13-14)を控えての様子見ムードから、上昇一服感が強まりやすいでしょう。後述するように、これまで急ピッチの上昇に伴う過熱感を冷ますべく、調整局面(おそらくは日柄調整でしょう)となっておかしくありません。

もっとも、「サード・オブ・サード」というパワフルな上昇波動中に起きる調整は、いつでも買いの好機といえるでしょう。

筆者は短期的には調整含みの展開もあり得ると考えますが、調整完了後は[33,344円](90年6月高値)を試すでしょう。

歴史的な強気相場が進行中
日経平均は89年高値までにまだ距離がありますが、日経500平均は一時2995まで上昇(6/7)しており、21年9月に付けた史上最高値(3033.45)の更新が視野に入っています。

日経平均やTOPIXの33年ぶり高値という点ばかりが注目されていますが、日経500平均をみれば、日本株相場及び日本経済が、今まさに空前の領域に歩を進めるところであり、新たな成長ステージが始まることがわかります。

デフレ時代の経験則が通用しない、歴史的な強気相場が進行している、という認識が必要でしょう。


名目GDPは過去最高に─少子高齢化でも成長できるニッポン

内閣府が8日発表した、23年1月-3月のGDP改訂値は、名目GDPが前期比2.0%増、年率換算で8.3%増でした。速報値段階で、年率換算の名目GDPは570円兆円と、消費増税を控えた19年7-9月期に記録した過去最高(560兆円)を上回っていましたが、改訂値はさらに2兆円近く多い、約572兆円(571兆9800億円)でした。

長いデフレ時代を通じ、「少子高齢化で日本は成長が見込めない」とは繰り返し見聞きしたセリフでした。

しかし今回の名目GDPの成長は─海外投資家は実質よりも名目を重視するといわれます─「デフレ時代の常識」が崩壊した証とみられます。

そして株価は経済を表す鏡であるという前提に立てば、過去最高値をまだ更新していない日経平均・TOPIXは「少子高齢化でも成長するニッポン」の実力に比べ大きく出遅れている、といっても言い過ぎではないでしょう。


海外投資家が9週連続で買い越し

5月第5週(5月29日-6月2日)に海外投資家は日本株の現物と先物を合わせて2216億円買い越しました。買い越しは4月第1週から9週連続、この間の買い越し額は6兆4000億円(うち現物は4兆5000億円)に上り、引き続きアベノミクス相場最初の9週間(現物先物で3兆円、現物で2兆7800億円)を大きく上回るペースで資金流入が続いています。

なお個人投資家は株高のさなか一貫して現物を売り続けていましたが、8週ぶりに買い越しました(388億円)。個人投資家の利益確定売りは、ひとまず一巡したかもしれません。

【時間足・エリオット波動分析】
30,785円(5/31安値)以来の上昇はマルiii波の第v波とカウントされ、その上値メドのひとつとして[32,778円]を前回本レポート(6月6日付)であげました。

【32,778円】…マルi波の上昇幅の2倍がマルiii波の上昇幅になる水準

この上値メドに6月7日高値(32,708円)は近いものでした。そこから日経平均は急反落し8日安値(31,420円)まで一気に1300円近い下げとなりました。

マルiii波は32,708円を以て終わり、そこからはマルiv波の調整に入ったとみられます。その下値レンジとしてマルⅲ波のレッサー・ディグリー(ⅳ)波領域[31,560円-30,785円]に注目です。

8日の下げで、日経平均は想定下値レンジ内に一時入りました。とはいえ、この日の安値を以て調整すべてが終わったとみるのは尚早です。

マルii波が「ジグザグ」であったことから、マルiv波は「トライアングル」や「フラット」など保ち合いパターンになる可能性が比較的高いでしょう(↓チャートにはトライアングルによる展開イメージを示しています)。
【6月9日 8:21更新】



[NYダウ]

【NYダウ日足・エリオット波動分析】 
NYダウは22年1月高値(36,952ドル)から同年10月安値(28,660ドル)までの下げ半値戻り水準(32,806ドル)を大きく上回っています。「半値戻りは全値戻り」との相場格言に従えば、今後NYダウは過去最高値へ向けての上昇が期待できることになります。NYダウに限れば、年内にも史上最高値更新があるかもしれません。

NYダウは、22年10月から大きなリバウンド局面・(B)波が進行中とみられ、(B)波は三波構成(A-B-C)が想定されます。

22年12月高値(34,712ドル)からの(B)-B波による下げは、31,429ドル(3/15安値)を以て終了し、そこからは(B)-C波の上昇に入った可能性が高いとみています。それはNYダウを過去最高値圏に押し上げることになるでしょう。
3月末から200日MAが上昇基調を続けていることは、NYダウが中期上昇トレンドに入ったことを証左しています。

直近NYダウには、新値三本足陽転、パラボリック・MACDの買いシグナル点灯など、強気サインが相次ぎました。短期的にも上値試しの基調が強まりそうです。


【NYダウ時間足・エリオット波動分析】
(波動カウント1)
31,492ドル(3/15安値)から(B)-C波による上昇トレンド。その最初の上昇第(i)波は34,257ドル(5/1高値)で、調整第(ii)波は32,586ドル(5/25安値)を以て、各々終了したとみられます。そこからは上昇第(iii)波が始まった可能性が高いでしょう。このカウントによると、短期的にもNYダウは34,300ドル処のレジスタンスを試す展開が想定されます。

(波動カウント2)
34,712ドル(22/12/13高値)からのB波はトライアングル((a)波~(e)波)を形成中です。
32,586ドル(5/25安値)からは、トライアングル中(d)波の上昇とみられます。当面はトライアングル内でのもみ合いが続くでしょう。
【6月9日 8:55更新】


[ナスダック]

【ナスダック総合指数日足・エリオット波動分析】
21年11月高値からの調整は、プライマリー級第➃波に位置付けられます。この第➃波の全体像としては複雑な、時間がかかるパターン(トライアングルなど)になることが見込まれます。例えば➃波がトライアングルなら、その完成まである程度の期間が必要でしょう。

22年12月安値・10,207を起点とする上昇は、➃-(B)波に位置付けられます。(B)波は基本的に、三波構成(A-B-C)で展開していきます。この見方に基づくと、今年後半にナスダックは、14,646(22年3月高値、ダイアゴナル始点水準)を打診する強基調となりそうです。

6月7日には一時13,361まで上昇、22年4月以来およそ1年2カ月ぶり高値となりました。21年からの下落に対する半値戻り水準[13,150]をクリアしつつあり、早々に[13,873](61.8%戻り水準)を試す展開になるかが注目されます。

【フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)・エリオット波動分析】
昨年10月安値(2089)以来の上昇は、➃波中(B)波の上昇に位置付けられます。この(B)波の波動カウントは以下の通りです。

[目先波動カウント1]
昨年12月安値(2445)からの上昇は(B)波-C波に相当します。2867(4/27安値)からC波-マルiii波の上昇ですが、それは3643(5/30高値)を以て終わったかもしれません。そうであれば、マルiv波のスピード調整となりそうです。

[目先波動カウント2]
(B)波は[ダブル・ジグザグ](W-X-Y)であり、2867(4/27安値)からの上昇は2番目のジグザグY波とカウントされます。このY波中A波は3643(5/30高値)で終わり、足元はB波の調整に入った可能性があります。

これらのカウントに共通するのは、目先の調整を経て少なくともあと1回の上昇局面(マルv波かC波)が予想されることです。
【6月9日 9:13更新】



[米ドル/円]

2011年10月に付けた75.570円を起点とする、(A)-(B)-(C)”ジグザグ”パターンによる円安は、151.899円(22/10/21)を以て終わったとみています。この先はおそらく2028年頃まで、米ドル/円はレンジ相場を形成していくでしょう。

【月足・エリオット波動分析】 
通算11年間の(A)-(B)-(C)円安は一括りでⓌ波とラベリングされ、10月以来の円高局面はⓍ波とカウントされます。このⓍ波が将来的に、例えば1ドル=100円を大きく下回る(米ドル安・円高)可能性は低いでしょう。

もっとも、Ⓦ波が通算で75円幅という大きなスケールの米ドル高・円安となった以上、それに対する反動としてのⓍ波のスケールも相応に大きなものになります。

具体的には2015年6月の[125.860円]、Ⓦ波の38.2%戻り水準である[122.741円]、これらはⓍ波のメドとして射程圏内にあります。

ちなみに(A)波(2011年10月⇒2015年6月)はおよそ50円幅上昇し、2016年6月(英国国民投票でEU離脱決定)まで25円程度を引き返しています(半値戻り)。今回も(C)波の上昇幅はおよそ50円ですから、以前のように25円程度の円高が起きるとみれば125円辺りが適当なメド、ということになります。

【週足・エリオット波動分析】 
今年年間のレンジとして筆者は[125円-150円](中央値137.500円)を想定しています。
1月16日に付けた127.158円は、21年1月-22年10月の米ドル高・円安(C)波の半値押し水準(127.239円)に相当し、そして想定レンジ下限に近いものでした。

127.158円(1/16)を以て、Ⓧ波における最初の米ドル安・円高局面(A波)は完了し、以降でB波(米ドル高・円安)が展開中とみています。

足元の米ドル/円は52週MAを大きく上回っています。
既に26週MAと52週MAのデッドクロスは無効になり、13週MAと26週MAのゴールデンクロスによって米ドル/円買いシグナルが点灯しています。

【日足・一目均衡表】

5月30日には半年ぶり円安水準(140.896円)を付けましたが、その後は伸び悩み140円台が定着する動きとはなっていません。

同じ日に財務省・金融庁・日銀による3者臨時会合が開催されたことで、円買い介入の可能性がちらつくようになり、1ドル=140円台乗せ以降も米ドル/円を買い進むことに躊躇する空気が、市場参加者の間に醸成されているように思われます。

今後の米ドル/円上昇ペースが緩やかであれば特段の問題はなさそうですが、急ピッチになるようだと昨年9月・10月のような円買い介入の可能性が浮上すると思われます。

米ドル/円は、138円-137円を下値としながら次の上昇のきっかけを待つ状況が、しばらくは続きそうです。

【時間足・エリオット波動分析】 
137.883円(3/8)からのⓑ波(トライアングル)は133.677円(5/11)を以て完了し、そこからはⓒ波の円安に入ったとみています。

米ドル/円は138円-137円で下値固めの動きが当分は続きそうです。
そのような動きを経て、次は[142.448円](22年10月から今年1月までの円高に対する61.8%戻り水準)を目指す(おそらく緩やかなペースでの)米ドル/円上昇を予想しています。
【6月9日10:03更新】


エリオット波動とは
株式・為替動向を予想する心強いテクニカル手法
米国人ラルフ・ネルソン・エリオットが提唱した、今後の株式や為替など市場価格の動向を予想する手法です。相場は5つの上昇波と3つの下降波(合計8つの波)で一つの周期を作るパターンに従って展開するとされます。
このパターンは集団心理によるもので、数分から数十年といった様々な時間軸において観察されます。
フィボナッチ数列、黄金分割比率をチャート分析に初めて導入したのもエリオットです。

宮田直彦

執筆者プロフィール

宮田直彦(ミヤタナオヒコ)

チーフ・テクニカルアナリスト、マネースクエアアカデミア学長

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
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