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米雇用統計はやや弱めながら、市場の反応は行き過ぎ!?

2024/05/04 06:28

【ポイント】
・4月NFPは小幅増、賃金の伸びは鈍化。失業率は上昇
・それでも労働市場の基調変化とまでは言えず
・長期金利の低下や米ドル/円の下落は行き過ぎか
・米ドル/円の基調転換にはさらなる景気減速の証左が必要か

米国の4月雇用統計はやや弱め。米長期金利(10年物国債利回り)は発表直前の4.55%から4.45%に急低下。米ドル/円は一時151.844円まで下落。その後、長期金利、米ドル/円とも小幅に反発。

4月雇用統計は弱めながら、単月のデータにすぎず、また内容をみても、パウエル議長がFOMC後の会見で利下げの条件とした「労働市場の急速な悪化」には該当しないでしょう。

3日の「為替介入への警戒続く!? 米雇用統計後の展開は?」で、次のように指摘しました。

「雇用統計が弱ければ、後退しつつあった米利下げ観測が前倒しとなり、長期金利は低下しそうです。そうなれば(その後の状況にもよりますが)、後々には4-5月の2度の為替介入が米ドル/円のトレンドを転換させたと記憶されるかもしれません」

上で述べたシナリオ通りの展開となるのか、今後の経済データを吟味する必要があるでしょう。なお、雇用統計後に発表された4月ISM非製造業景況指数は49.4と、22年12月以来の50割れとなりました(仕入価格指数は上昇)。それ以前の50割れはコロナショック直後の20年5月まで遡ります。

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4月の雇用統計は、事業所調査のNFP(非農業部門雇用者数)が前月比17.5万人増と、市場予想(24.0万人増)を下回り、前月(31.5万人増)から減速しました。NFPが20万人増を下回ったのは昨年11月以来5カ月ぶり。それでも、コロナショック前の17-19年の平均17.7万人増と比べても悪いペースではありません。

米雇用統計 NFP

時間当たり賃金は前年比3.9%増で、前月の4.1%増から伸びが鈍化。それでも、インフレ率(3月PCEコアは前年比2.8%)を上回りました(=実質賃金の伸びはプラス)。また、<雇用者数×週平均労働時間×時間当たり賃金>で求められる総賃金指数は前年比5.6%と、前月の5.9%から伸びがやや鈍化しました。

米賃金とPCE

米総賃金とCPI

家計調査に基づく失業率は3.9%と前月の3.8%から上昇。失業率は昨年4月の3.4%を底にジリジリと上昇傾向にあるように見えます。ただ、4月の失業率は小数点以下2位までとすれば、3.87%で、前月(3.83%)からの上昇幅は小幅でした。労働参加率は62.7%と前月から横ばい。コロナショック以降の上昇トレンドがやや停滞しているように見えます。

失業率

労働参加率
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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