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ゴールドは弱含み、原油も軟化 ともに調整局面か

2024/05/02 12:35

今週の「金・原油マーケット特別レポート」は本日(5月2日)掲載いたします

<金は弱含みの展開、強い米雇用関連指標で>

今週(4/29─)の米ドル建て金先物は弱含みの展開となりました。4月30日に発表された2024年1─3月期の米雇用コスト指数が市場予想を上回る強さとなり、賃金インフレへの警戒から米金利が上昇、利息が付かない金に売りが出ました。抵抗ラインだった25日移動平均線を下抜け、調整色が強まっています。

米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,250─2,400ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,200─12,200円

*FOMC、懸念していたほどタカ派ではないと受け止め
4月30日─5月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利の据え置きは市場予想通りでしたが、懸念していたほどタカ派的ではなかったと受け止められました。

量的引き締め(QT)の減速ペースについて、住宅ローン担保証券(MBS)の縮小ペースは月間350億ドルで維持されましたが、国債は月間の上限が600億ドルから250億ドルに引き下げられ、市場予想の300億ドルを下回りました。縮小幅が小さいとバランスシート(総資産)の減り方が緩やかになり、引き締め度合いは弱まります。

市場ではFRB(米連邦準備理事会)の次の一手が利下げではなく追加利上げになる可能性も取りざたされていますが、パウエルFRB議長は会見で、次の行動が利上げになることについては「ありそうにない(unlikely)」と述べました。

ただ、依然として米インフレ高止まりを示唆する米物価指標が多く、先行きは不透明です。26日に発表された3月米PCE(個人消費支出)価格指数では、FRB当局者が「スーパーコア」として注目する住宅・エネルギーを除くPCEサービス上昇率が前月比0.4%上昇と2月の0.2%上昇から伸び率が加速しました。
金利が上昇すれば利息の付かない金にとっては不利な状況になります。

*中銀が需要牽引の構図継続
一方、金の需要は底堅い様子です。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、2024年第1四半期の金の総需要(店頭需要含む)は1238.3トンと前年同期比2.6%増加しました。第1四半期としては2016年の1286.1トン以来の大きさです。

ETF(上場投資信託)からは113.7トンと引き続き流出が続きましたが、中央銀行による金購入量(ネット)が前年同期比1.2%増の289.7トンと第1四半期として2010年以降で最大となりました。宝飾品セクターも金価格の歴史的な高騰にもかかわらず同2%減の479トンにとどまっています。

*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/8/25~2024/5/1)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
米ドル建て金先物の日足チャート
(出所:TradingView)


<原油は軟化、中東情勢は予断許さず>
今週のWTI原油先物価格は大きく下落しました。米国の石油需給が緩むとの見方から売りが出て、1バレル80ドルの大台を割り込んでいます。中東情勢の緊張緩和観測も出ましたが、こちらは依然として予断を許さない展開です。

WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル77─82ドル

*米原油在庫が予想に反し増加
米エネルギー情報局(EIA)が1日に発表した26日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫が前週比726.5万バレル増と、市場予想の減少に反し大幅増加しました。留出油は減少しましたが、ガソリンも小幅ながら増加しています。

原油在庫は、その前の週に636.8万バレル減少しており、その反動が出た可能性もありますが、4月米ISM製造業景気指数が節目の50を下回ったこともあり、米国の石油需要が伸び悩むとの懸念が出ています。
米週間石油在庫統計(増減幅)

*停戦模索、ラファ侵攻には警戒続く
イスラエルとイスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザでの一時停戦を模索しています。もし合意に至れば、イスラエルは民間人への被害が大きくなるとみられるガザ最南部ラファへの侵攻を見合わせる可能性があるとみられています。

ただ、イスラエル軍は29日も、パレスチナ自治区ガザの南部ラファをはじめ各地で空爆を実施していると伝えられており、予断を許しません。150万人以上が密集するラファで軍事作戦が拡大されれば、民間の犠牲者が多数出るとみられています。

イスラエルのネタニヤフ首相は30日、パレスチナ自治区ガザで続く戦闘の休止合意の有無にかかわらず、ガザ最南部ラファに侵攻しイスラム組織ハマスを壊滅すると述べたと伝えられています。

*WTI原油先物の日足(期間:2023/8/25~2024/5/1)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
WTI原油先物の日足
(出所:TradingView)


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伊賀大記

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伊賀大記(イガダイキ)

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