マネースクエア マーケット情報

「34年ぶり高値更新」の持つ意味

2024/04/24 09:05

【ポイント】
・米ドル/円が34年ぶりの高値、日経平均が34年ぶりに史上最高値
・34年前は日銀が利上げに転じたことで、米ドル/円が反落、日経平均が下落

「(米ドル/円が)34年ぶり高値更新」との見出しが連日のようにメディアを飾っています。為替相場に馴染みのない方は、「(米ドル/円が)高値を34年ぶりに更新する」ビッグイベントが起こったと勘違いしそうです。もちろん、見出しは間違いではないのですが、22年10月の高値を上回った今年3月27日以降、米ドル/円が上値を追うたびに「34年ぶり高値更新」をしてきたわけで・・(Bloombergデータ、以下同じ)

*******
さて、「34年ぶり」の持つ意味を考えてみましょう。

米ドル/円は90年4月17日に159.90円と、160円目前で当時のピークをつけました。米ドル/円が160円を超えたのは86年12月まで遡ります。86年といえば、85年9月プラザ合意(ドル高是正)⇒87年2月ルーブル合意(ドル安是正)という歴史的局面のただ中でした。

米ドル円 長期

当時の日米経済の最大の関心事(懸念)は貿易不均衡でした。86年4月には前川レポートが発表され、不均衡是正のために内需拡大や市場開放などが強く提唱されました。日銀の公定歩合(当時の主要政策金利)は87年2月に2.5%に引き下げられ、89年5月に3.25%に引き上げられるまで当時としては非常に低い水準に維持されました。

一方、米FRBの政策金利は89年2月に9.75%に引き上げられていました。そのため、当時の日米政策金利差は最大7.25%あったことになります。貿易不均衡を背景とした円高圧力により米ドル/円は88年11月に121円まで下落しました。しかし、その後は日米金利差による上昇圧力もあって89年半ばには150円近辺に、そして(タイムラグはありますが)90年4月に160円近くまで上昇しました。

日米政策金利差

以上を振り返ると、貿易不均衡を背景とした円高圧力は常にあったものの、87年ごろから90年初頭は日銀が緩和的金融政策を続けたことで、日米金利差が拡大して米ドル/円の上昇をもたらしたと言えそうです。

翻って、現在も日銀の「緩和的金融政策」が米ドル/円上昇の一因です。80年代は「内需拡大のため」、現在は「物価目標達成のため」と理由は異なるものの、結果として「円安」や「株高」をもたらしている点は非常に似ています。日経平均が「34年ぶり」に史上最高値をつけたのも偶然ではなく、必然なのかもしれません。

34年前は、日銀が公定歩合を89年5月の2.5%から90年8月の6.0%まで引き上げたことで、株下落に拍車をかけ、米ドル/円の反落を演出しました。鈴木財務相は18日のG20後の記者会見で、「為替水準は金利差だけで決まるわけではない」と発言しました。ただ、金利差が非常に重要であることは間違いないでしょう。今回はどのような展開が待っているのか。今後の日銀の金融政策が非常に注目されます。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ