米FRBで今、何が起きているか(2):クック理事への辞任圧力
2025/08/22 07:53
【ポイント】
・トランプ政権がクック理事の辞任を要求
・クック理事が辞任すれば、トランプ大統領が後任を指名
・トランプ大統領が7人の理事の過半数を指名へ??
・金融政策やそれ以外の政策にも影響は出そう
トランプ大統領は20日、FRBのクック理事に辞任を要求。21日には司法省高官がパウエル議長に書簡を送り、クック理事を解任するよう求めたとのことです。
クック理事は住宅取引での不正が疑われており(※)、FHFA(連邦住宅金融局)のパルト局長が司法省に対して捜査を行うよう求めています。
※住宅ローンの申請時に、居住物件と報告。短期間ののちに別の州でも同様の申請をしたとのこと。条件次第では、違法と判断されるかもしれません。
もっとも、司法省の担当者は今年5月にトランプ大統領に指名されたばかりで、これまでも同様の件で民主党の上院議員やNY州司法長官の調査を指導してきたようです。FRBに対する政治圧力の一環と考えることもできそうです。
■8/14付け「米FRBで今、何が起きているか。様々に圧力を加えるトランプ政権」をご覧ください。
FRB議長に理事の解任権はなく、解任できるのは大統領だけとのこと。同件においてクック理事の行為が不正と判断されれば、トランプ大統領が解任する「正当な理由」になるかもしれません。
クック理事は辞任要求を拒否しているようですが【補足1】、仮に空席になれば、トランプ大統領が後任を指名することになります。パウエル議長の後任と合わせれば、7人の理事のうち4人をトランプ大統領が指名(1期目に2人、2期目の2人)、過半数を掌握することになります。
金融政策に関しては、FOMCで12人の投票により決定されるため、トランプ政権の意向がストレートに反映されることはないかもしれませんが、事態の進展を見守る必要はありそうです【補足2】。
*******
【補足1】クック理事の任期は2038年まで
FRBの議長・副議長を含む7人の理事は、任期14年で2年おきに一人ずつ交代する仕組みです。途中で辞任した場合は後任が残りの任期を務め、その後に再指名されるケースがあります。

なお、Bloombergによれば、クック理事の22年の上院での承認は50対50で、最終的にハリス副大統領が賛成票を投じました。共和党議員が反対したのは、クック氏が過度に緩和的な金融政策を志向すると懸念したからだそうです。
【補足2】金融政策の決定
金融政策は、7人の理事と12の地区連銀の総裁ら、計19人が参加するFOMC(連邦公開市場委員会)で決定されます。最終的な決定を行う投票メンバーは、7人の理事と、NY連銀総裁(FOMCでは副議長を務めます)、残り11地区連銀の総裁のうち1年ごとの輪番で4人、計12人。
金融政策以外では、ワシントン本部の7人の理事で決定される事項も多く(例えば、地区連銀が申請する公定歩合変更の承認など)、ここで過半数を掌握することには重要な意味があるでしょう。
・トランプ政権がクック理事の辞任を要求
・クック理事が辞任すれば、トランプ大統領が後任を指名
・トランプ大統領が7人の理事の過半数を指名へ??
・金融政策やそれ以外の政策にも影響は出そう
トランプ大統領は20日、FRBのクック理事に辞任を要求。21日には司法省高官がパウエル議長に書簡を送り、クック理事を解任するよう求めたとのことです。
クック理事は住宅取引での不正が疑われており(※)、FHFA(連邦住宅金融局)のパルト局長が司法省に対して捜査を行うよう求めています。
※住宅ローンの申請時に、居住物件と報告。短期間ののちに別の州でも同様の申請をしたとのこと。条件次第では、違法と判断されるかもしれません。
もっとも、司法省の担当者は今年5月にトランプ大統領に指名されたばかりで、これまでも同様の件で民主党の上院議員やNY州司法長官の調査を指導してきたようです。FRBに対する政治圧力の一環と考えることもできそうです。
■8/14付け「米FRBで今、何が起きているか。様々に圧力を加えるトランプ政権」をご覧ください。
FRB議長に理事の解任権はなく、解任できるのは大統領だけとのこと。同件においてクック理事の行為が不正と判断されれば、トランプ大統領が解任する「正当な理由」になるかもしれません。
クック理事は辞任要求を拒否しているようですが【補足1】、仮に空席になれば、トランプ大統領が後任を指名することになります。パウエル議長の後任と合わせれば、7人の理事のうち4人をトランプ大統領が指名(1期目に2人、2期目の2人)、過半数を掌握することになります。
金融政策に関しては、FOMCで12人の投票により決定されるため、トランプ政権の意向がストレートに反映されることはないかもしれませんが、事態の進展を見守る必要はありそうです【補足2】。
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【補足1】クック理事の任期は2038年まで
FRBの議長・副議長を含む7人の理事は、任期14年で2年おきに一人ずつ交代する仕組みです。途中で辞任した場合は後任が残りの任期を務め、その後に再指名されるケースがあります。

なお、Bloombergによれば、クック理事の22年の上院での承認は50対50で、最終的にハリス副大統領が賛成票を投じました。共和党議員が反対したのは、クック氏が過度に緩和的な金融政策を志向すると懸念したからだそうです。
【補足2】金融政策の決定
金融政策は、7人の理事と12の地区連銀の総裁ら、計19人が参加するFOMC(連邦公開市場委員会)で決定されます。最終的な決定を行う投票メンバーは、7人の理事と、NY連銀総裁(FOMCでは副議長を務めます)、残り11地区連銀の総裁のうち1年ごとの輪番で4人、計12人。
金融政策以外では、ワシントン本部の7人の理事で決定される事項も多く(例えば、地区連銀が申請する公定歩合変更の承認など)、ここで過半数を掌握することには重要な意味があるでしょう。
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