「大予想」2023年の為替・株

2022年回顧

2022年為替相場の総括

金融政策が最大の相場材料

22年の為替相場は、主要中央銀行の金融政策が大きな相場材料となりました。21年終盤に利上げを開始したRBNZ(ニュージーランド中銀)、BOE(英国中銀)などに続いて、3月にBOC(カナダ中銀)やFRB(米国中銀)、5月にRBA(豪州中銀)、7月にECB(欧州中銀)がそれぞれ利上げを開始しました。

2月下旬のロシアのウクライナ侵攻によってエネルギー価格が高騰。新型コロナ関連の制約によってサプライチェーン障害や労働市場のタイト化も起こり、各国で物価が高騰。高インフレ下で景気が低迷するスタグフレーションの様相が強まるなか、各中央銀行は当初の想定を超えるアグレッシブな利上げを余儀なくされました。

例外だったのは、BOJ(日本銀行)やTCMB(トルコ中銀)などわずか。BOJは物価目標の持続的な達成が展望できないとして、大規模な金融緩和、いわゆる長短金利操作(YCC=イールドカーブ・コントロール)付き量的質的金融緩和を堅持しました。TCMBはインフレ率が80%を超えるなかでも8月以降に4回の利下げを敢行し、エルドアン大統領の要求に沿う形で政策金利を「一ケタ(14%⇒9%)」にしました。

9月までは米ドルが堅調、円が最弱。ユーロや英ポンドも軟調

今年初めから9月末までの主要通貨の騰落率をみると、金融政策の差を反映して、米ドルやメキシコペソ、カナダドルが堅調でした。メキシコペソやカナダドルはエネルギー価格高騰の恩恵を受けた面もありました。一方で、世界的に長期金利が上昇するなかで、日銀が長期金利の誘導目標上限である0.25%を死守したこともあって、円が最弱。

ユーロや英ポンドも軟調でした。ユーロは、ユーロ圏と地理的に近いウクライナ戦争の影響が大きく、とりわけロシアへの天然ガス依存度の高いドイツは大きな打撃を受けました。ユーロは対米ドルでパリティ(1ユーロ=1米ドル)を割り込み、9月下旬には22年ぶりの安値をつけました。

他方、英国では9月に誕生したトラス前首相(在任期間は史上最短の45日間)が提案した大規模減税が市場で嫌気され、株価、債券、通貨のトリプル安を招きました。英ポンドは同じく9月下旬に史上最安値をつけました。

様変わりした10月以降

9月下旬、政府・日銀が大規模な米ドル売り円買い介入を開始したあたりから、相場付きが徐々に変わりました。そして、10月21日に米ドル/円は一時約32年ぶりとなる151.899円をつけると、その後は下落基調に転じました。スピード調整が目的だった為替介入は、結果的には潮目が変わるまでの時間稼ぎに成功したと評価できるかもしれません。

大幅な利上げや長期金利の上昇により住宅や設備投資など金利敏感セクターの減速が鮮明になり、また世界的な景気減速予想から原油価格は6月以降に下落基調となりました。市場ではインフレがピークアウトした、あるいは近くピークアウトするとの期待から各中銀の利上げ打ち止め観測や利下げ期待も浮上し、長期金利も低下基調となりました。

10月初めから12月16日までの主要通貨の騰落率は、米ドルが最弱。カナダドルやメキシコペソ、南アフリカランド、豪ドルなどの資源国通貨も低位に沈みました。堅調だったのは、RBNZがアグレッシブな利上げを続けたNZドル。そして、米ドル安の裏側でユーロや英ポンドも堅調でした。ECBがインフレ抑制姿勢を堅持したこと、英国でトラス政権の後を継いだスナク政権が緊縮型の財政計画を発表したことも、それぞれの通貨をサポートする材料となったようです。

マネーフローの変化

コロナ・ショック後の強力な金融緩和や財政出動によって膨張した世界のマネーは、主要な中央銀行が金融政策を徐々に正常化するなかで収縮、その過程で市場の様々な歪みを浮き彫りにしました。

中国では、不動産バブルが崩壊。21年の終わりに事実上破たんした中国恒大に続き、多くの不動産会社が破たんしたものとみられます。ロシアは経済制裁の影響で6月に国債の利払いを実行できず、デフォルト(債務不履行)とみなされました。また、ビットコインをはじめ多くの暗号資産が大幅に下落。11月には暗号資産交換業大手FTXが破たん、その他の多くの取引業者が苦境に陥ったようです。ただし、それらの破たんは(少なくとも12月16日時点で)グローバルなショックには発展していません。

米中間選挙は民主党が健闘

11月の米中間選挙では民主党が健闘しました。上院は辛うじて過半数を維持(半数の50議席+副大統領票)。下院では共和党に逆転を許したものの、議席差を僅差としました。トランプ前大統領の支援した候補が苦戦を強いられ、最大の敗北者は同氏だとの指摘もあります。もっとも、23-24年の議会は「ねじれ議会」となるため、バイデン大統領のレームダック化が進みそうです。リセッションの接近も予想されるなか、バイデン政権の求心力の低下は米国にとって好ましいものではないでしょう。

 

2022年のトラリピを振り返る
-「悪い円安」が流行語? 一方「トラリピ世界戦略」は -

「2022年ユーキャン・流行語大賞」のトップ10に「悪い円安」がランクインしました。
相場を日々追っている方からすれば、毎日のように耳にした言葉でしょう。しかも「流行語」にもランクインしたのですから、2022年の「円安」はもはや相場にかかわる人たちだけのニュースではなかったということがうかがえます。

多くの対円通貨ペアは大きな値動きを見せ、中でも米ドル/円は実に24年ぶりのドル高・円安を記録。このような相場状況はトラリピ運用にどのような影響を与えたのでしょうか?

トラリピの「注文件数」「注文口座数」、そして各通貨ペアの「騰落率」や「レンジシェア」から2022年を振り返ります。

 

【1】2022年のトラリピ人気通貨ペア

まずは『2022年に注文されたトラリピの件数』ランキングを見てみましょう。

2022年トラリピ新規注文件数ランキング※2022年1月3日~2022年11月30日の新規注文件数
通貨ペア
1位 米ドル/円
2位 ユーロ/円
3位 豪ドル/NZドル
4位 カナダドル/円
5位 豪ドル/円
6位 ユーロ/英ポンド
7位 NZドル/円
8位 NZドル/米ドル
9位 英ポンド/円
10位 ユーロ/米ドル
11位 豪ドル/米ドル
12位 英ポンド/米ドル
13位 メキシコペソ/円
14位 トルコリラ/円
15位 南アフリカランド/円

※米ドル/カナダドルは2022年5月取引開始のためランキングから除外
※注文後取り消されたトラリピも含む

特に大きく円安方向に振れた米ドル/円の注文件数がトップになりました。
大きなトレンドが出ている局面への向き合い方は人それぞれでしょうが、大きな動きがみられる中でもそれを好機ととらえて新たにトラリピを注文したケースは少なくなかったということかもしれません。

では、トラリピを注文した口座数でも確認してみましょう。

2022年トラリピ新規注文口座数ランキング※2022年1月3日~2022年11月30日の新規注文口座数
通貨ペア
1位 ユーロ/円
2位 豪ドル/NZドル
3位 カナダドル/円
4位 米ドル/円
5位 ユーロ/英ポンド
6位 豪ドル/円
7位 NZドル/米ドル
8位 NZドル/円
9位 豪ドル/米ドル
10位 ユーロ/米ドル
11位 英ポンド/円
12位 メキシコペソ/円
13位 英ポンド/米ドル
14位 トルコリラ/円
15位 南アフリカランド/円

※米ドル/カナダドルは2022年5月取引開始のためランキングから除外
※注文後取り消されたトラリピも含む

注文件数では2位だったユーロ/円が1位の座に収まりました。続く2位は豪ドル/NZドル、3位はカナダドル/円。新規注文件数1位の米ドル/円は4位となり、5位にはユーロ/英ポンドがランクイン。トップ5は普段から親しみのある対円通貨ペア3つと「トラリピ世界戦略」でおなじみの2通貨ペアが占めることになりました。

米ドル/カナダドルは取り扱い開始が2022年5月なのでランキングには含めていませんが、もし含めるならユーロ/英ポンドの次点でした。5月の取り扱い以降(約6カ月半)で集計した結果なので、2023年がどうなるか引き続き注目です。

 

【2】値動きでみる2022年

(1)騰落率でみる

各通貨ペアの2022年1月3日の終値を「100」として指数化しグラフにしました。期間は2022年1月3日~11月30日です。

まずは対円通貨ペアから。

対円通貨ペア騰落表

比較的おとなしく推移していたのは最初の2カ月間ほど。
3月半ばから一気に値動きが大きくなり、トルコリラ/円以外の通貨ペアは円安方向(上昇方向)に推移していきました。「悪い円安」のはじまりです。多くの通貨ペアが年初と比較して一時10%以上の上昇を見せました。

特に米ドル/円は年初より30%近く上昇した場面もありました。足元では多少落ち着いてきたように見えますが(それでも11月末時点で年初+20%)、まだまだ目が離せません。

次に、対円以外の通貨ペアを見てみましょう。

対円以外通貨ペア騰落表

対米ドルの通貨ペアは軒並み下落傾向でした。米ドル高の影響がはっきり見て取れます。
「米ドル高」「円安」2つの側面があり、それらが組み合わさった結果「米ドル/円24年ぶりの高値(=米ドル/円の上昇トレンド)」となったということがよくわかります。

一方で、対米ドルではない通貨ペアはやや上昇傾向となりましたが、高くても+10%の範囲内にとどまりました。豪ドル/NZドルユーロ/英ポンド米ドル/カナダドルの3つです。

まさしく「トラリピ世界戦略」の通貨ペアです。

豪ドル/NZドルについては仕掛けていたレンジを上抜けてしまうような経験をされた方も多いと思いますが、騰落率で比較するとほかの通貨ペアよりは振れ幅が大きくなかったことがわかります。

(2)総推移・レンジシェアでみる

次に、各通貨ペアの「100pipsあたり総推移」そして「レンジシェア」を見てみましょう。

-100pipsあたり総推移とは?-
100pipsの値幅内でどの程度の総推移があったのかがわかるもので、値動きの多さを判断する指標の1つ。
《総推移÷高低差》で算出。

-レンジシェアとは?-
ある期間における最高値を100%としたときの最安値の水準を%で表したもの。
《(最高値―最安値)/最高値×100》で算出。

2022年 100pipsあたり総推移ランキング
通貨ペア 100pipsあたり総推移
(単位:pips)
1位 NZドル/円 4,518.7
2位 英ポンド/円 4,463.2
3位 トルコリラ/円 4,323.4
4位 豪ドル/円 3,557.8
5位 南アフリカランド/円 3,434.6
6位 豪ドル/NZドル 3,349.8
7位 ユーロ/円 3,309.1
8位 豪ドル/米ドル 3,139.7
9位 ユーロ/英ポンド 3,053.4
10位 NZドル/米ドル 2,749.4
11位 カナダドル/円 2,719.8
12位 ユーロ/米ドル 2,692.4
13位 英ポンド/米ドル 2,009.3
14位 米ドル/円 1,739.6
15位 メキシコペソ/円 1,720.1

※米ドル/カナダドルは2022年5月取り扱い開始のためランキングから除外

「あれ?この通貨ペアが上位?」という感想を持つ方が多いのではないでしょうか。
この「100pipsあたり総推移」を見るときには注意が必要です。なぜなら「どのくらい動いたか」のみに焦点を当てているため。
この指標が示す「運用に適した値動きをしているかどうか」は大切な情報ですが、トラリピを運用するための証拠金も考慮する必要があります。例えば英ポンド/円は2位に位置していますが、1位のNZドル/円と比較するとおよそ2倍の証拠金がかかります※。この点にも気を付けながらデータを見るようにしましょう。
※11/30時点の終値で比較。英ポンド/円:166.394円、NZドル/円:86.903円

レンジシェアは次のとおり。
トラリピの場合、資金効率を重視するのであれば狭いレンジでたくさん動く通貨ペアが理想的です。動く幅が狭いという傾向を想定できれば、無駄のないトラリピ設定を検討できます。

2022年 レンジシェアランキング
通貨ペア レンジシェア
(単位:%)
1位 豪ドル/NZドル 7.91
2位 ユーロ/英ポンド 11.52
3位 英ポンド/円 12.93
4位 NZドル/円 14.35
5位 ユーロ/円 16.21
6位 ユーロ/米ドル 17.07
7位 豪ドル/円 18.40
8位 トルコリラ/円 18.67
9位 NZドル/米ドル 19.14
10位 カナダドル/円 19.22
11位 豪ドル/米ドル 19.42
12位 NZドル/米ドル 21.62
13位 英ポンド/米ドル 25.07
14位 米ドル/円 25.31
15位 メキシコペソ/円 28.97

※米ドル/カナダドルは2022年5月取り扱い開始のためランキングから除外

豪ドル/NZドルユーロ/英ポンドが1位・2位になりました。
ちなみに米ドル/カナダドルは2022年5月~11月までの値動きで算出すると「11.25%」。そのままランキングに当てはめると2位になります。期間は違うものの、ほかの「トラリピ世界戦略」2通貨ペアと遜色ない値動きだったと言えそうです。

また「レンジシェアの値が大きい=トラリピを仕掛けるべきではない」とは限りませんが、広いレンジで動く傾向がある通貨ペアに対して、その値動きをできるだけ拾えるようにトラリピを仕掛けようとするとそれだけ多くの証拠金が必要になります。
ですので、資金効率の観点では小さい方がより小回りの利いた戦略で運用できるといえます。

トラリピを効率よく活用するには、「値動きの多さ=収益機会の多さ」「資金効率のよさ」の両方を見極めた通貨ペア選びが大切。ここまで紹介した「100pipsあたり総推移」と「レンジシェア」を合わせて参考にしてみてください。
※各種データはこちらでご確認いただけます(ご覧いただくにはマイページログインが必要です)。

 

●2022年のトラリピまとめ

対円通貨ペアがほぼ一様に上昇傾向だったのに対して「トラリピ世界戦略」の3通貨ペアは比較的値動きが小さく、トラリピがワークしやすい相場だった。

掲載している内容は、2022年1月3日~11月30日までの値動きを元に作成しております。その後の値動きによっては、傾向が変わる可能性がある点にご留意ください。

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