70%インフレが圧迫、大統領離れ

2022/05/09 07:24

松島新の週刊2分でわかるトルコ

「インフレ率70%」

日本のゴールデンウィーク中、トルコリラ相場はこう着したようにみえます。トルコリラ/円は1リラ=8円70銭台の狭いレンジで推移しました。クロス取引のため、米ドル/円の影響を受けたもの、ストレート取引の米ドル/リラではリラ安基調が鮮明でした。1ドル=14.70リラ台前半から14.80リラ台後半に下落しました。

トルコの高インフレが材料。トルコ統計庁が5日発表した4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比69.97%でした。3月の61.14%から加速。市場予想の68%を上回りました。前月比は7.25%上昇。エルドアン大統領が首相として政権についた2003年以来の高水準でした。運輸は前年比105.86%上昇。食品とノンアルコール飲料は89.1%上昇、家具は77.64%上昇しました。

インフレは政府統計より大幅に高いとの見方が少なくありません。独立系調査会社ENAがまとめたCPIは前年比156%上昇。統計庁の数字の2倍以上でした。ENAの計算では前月比8.68%上昇しました。

トルコ中央銀行は4月末、インフレ率は6月に70%前後でピークに達し、年末に42.8%前後に低下するとの見通しを発表しました。ウクライナにおける戦争で石油、ガス、小麦は高止まり。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた中国のロックダウン(都市封鎖)の影響で世界のサプライチェーン(供給網)はさらに混乱し幅広いモノの価格を押し上げています。トルコ中銀の予想以上に高インフレが継続する可能性が指摘されています。

「大統領離れ」

物価高騰はトルコ国民の家計を大きく圧迫。政府に対する不満が高まりました。メトロポールの最新世論調査によりますと、「エルドアン大統領は経済問題を解決できない」と答えた有権者は59%にのぼりました。エルドアン大統領の経済政策を支持する有権者は39.1%にとどまりました。センカーの調査では、有権者の66.2%が次の選挙までに「与党・公正発展党(AKP)は経済問題を解決できない」と考えていることがわかりました。別の世論調査でもエルドアン大統領の支持率低下は止まりません。

来年6月に大統領・議会選が実施されます。ロイターは、家計は非常に窮迫していて、長らく続いたエルドアン大統領の統治時代に幕が下りる可能性がでてきたと伝えました。

ブルーベイ・アセットマネジメントのティモシー・アッシュ氏は、「トルコの高インフレは酷い金融政策が原因」とツイッターに投稿しました。「トルコのインフレは制御不能状態。トルコリラが崩壊しない限り中銀が利上げする可能性はゼロだ」と続けてツイートしました。

トルコリラは当面、金融市場の心理、原油相場、米ドル地合いの影響を受けるとみられます。政策金利からインフレ率を差し引いた単純計算のトルコの実質金利はマイナス50%を超えているため外国人投資家はトルコへの投資を躊躇、トルコリラを圧迫する要因になっています。トルコ中銀の次回会合は26日。観光シーズンに入る5月に政策を再点検する方針を示しているため、中銀の動きがトルコリラを動かすことになりそう。それまでは、外部要因、特に米国債利回りや原油相場に左右されそう。買い材料は少ない一方、売り材料は山積み。上値が重い展開が予想されます。エルドアン大統領の突発的な発言があれば反応しそうです。クロス取引のトルコリラ/円は、米ドル/円の振れが大きくなっているため、対米ドル相場と異なる方向に動く可能性があります。

[May 09 2022 T385]

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