新経済政策の代償、介入も効果薄い

2022/01/10 07:31

松島新の週刊2分でわかるトルコ

エルドアン大統領が年末に発表したトルコリラ建て預金を保護する奇策。高インフレを低金利で抑制するとの「新経済政策」の対応策の1つといえる措置です。発表後にトルコリラの対米ドル相場は過去最安値から急反発しました。クロス取引のトルコリラ/円は最安値の1リラ=6円10銭台からクリスマスまで大幅続伸し一時10円10銭台まで戻しました。エルドアン大統領は「外国為替市場のバブルが1日で崩壊した」と述べ成果を強調しました。

基調は12月最終週に変わりました。リラ建て預金保護策の効果と持続性を疑問視する市場関係者が増え、投資家はトルコリラ売り・外貨買いに転じました。年明け3日に発表された12月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比36.08%上昇と、11月の21.31%から急加速。コンセンサス予想の27.28%を大幅に上回りました。通貨安で輸入物価が高騰したことが影響しました。12月の生産者物価指数(PPI)は11月の54.62%から79.89%上昇に急加速しました。

アーヴァルによりますと、JPモルガンのアナリストはトルコのCPIが5月に55%に上昇、50%を超すインフレが11月頃まで続く可能性があると予想しました。「トルコ中央銀行は大幅利下げしたことを後悔する様子がなく、今後金融引き締めに動く可能性は非常に低い」とコメントしたとしています。

フィナンシャル・タイムズは7日、トルコリラ相場を押し上げるために、トルコ当局は12月に73億ドルを使って市場介入していたと報じました。トルコ中銀のデータをもとに試算したもので、発表された5回の米ドル売り・リラ買い介入に加えて裏口介入した規模が非常に大きかったことがわかったとしています。ゴールドマン・サックスのアナリストは介入があったと分析し、トルコ国内銀行と外国の中央銀行からの借り入れを除くトルコの外貨準備は実質的にマイナス660億ドル(約7兆600億円)だとするコメントを引用。中銀が介入できる余地が小さいとの市場関係者の見方を伝えました。

「中銀会合」

トルコリラは当面、金融市場の心理、原油相場、米ドル地合いの影響を受けるとみられます。アメリカの12月消費者物価指数(CPI)を受けた外国為替市場全体の動きに反応する可能性があります。テクニカルとファンダメンタルズの両方はトルコリラがさらに下落する可能性を示唆しています。

エルドアン大統領の金利や通貨をめぐる突発的な言動やトルコ当局の動きがトルコリラを揺さぶりそう。トルコ中銀は先週、トルコ企業の輸出により受け取った米ドル、ユーロ、英ポンドの25%を買い取ると発表しました。外貨準備を増やすことが目的。トルコリラの反応は限定的でした。

ロイターは、トルコ政府が導入したリラ建て預金保護制度について、外貨からリラに交換して預け入れられた資金はほとんどないとする銀行関係者の話を伝えました。与党・公正発展党(AKP)の幹部は、預金保護制度の効果がなく、政府はさらなる措置を検討しているとしています。

トルコ中銀は20日に金融政策を開く会合を開きます。トルコ中銀は昨年、エルドアン大統領の政治圧力により政策金利を19%から14%に引き下げました。政策金利からインフレ率を差し引いた単純計算の実質金利はマイナス22.08%になりました。20日の会合で追加利下げする可能性があり、マイナス幅はさらに拡大しそうです。

[JANUARY 09 2022 T368]

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