市民は絶望・困窮、リラ急落と高インフレ

2021/12/06 07:29

松島新の週刊2分でわかるトルコ

「介入2回」

インフレが加速するなか、「金利は敵」と主張するエルドアン大統領の政治圧力を受けたトルコ中央銀行が追加利下げ。政策に不満を高めたエルバン財務相が1日に辞任、後任にネバティ副財務相が昇格しました。ネバティ氏は高い金利は優先しないと就任後に明言。エルドアン大統領は自身の政策に反対する中銀幹部3人を更迭、財務省も親しい人材を確保しました。金利引き下げを求める政治圧力に抵抗する財政・金融高官がいなくなりました。

トルコ統計庁が3日発表した11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比21.31%上昇。10月の19.89%から加速、予想の20.7%を上回りました。生産者物価指数は前年比54.62%上昇と非常に高い数字でした。トルコリラ急落で輸入物価が高騰しました。

ブルーベイ・アセットマネジメントのティモシー・アッシュ氏が独自に実施した調査では、89.5%がトルコのインフレ統計は信用できないと答えました。ユーロニュースによりますと、トルコ学術界と元政府高官で構成される独立インフレ研究グループは、実際のインフレ率は50%に達したと分析しました。

追加利下げ、財務相の交代、低金利の重要性をエルドアン大統領が繰り返し主張したことを手掛かりにしたトルコリラ売りは止まる兆しがありません。フィッチがトルコの格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げたこともトルコリラ売りに寄与しました。

トルコ中銀は1日、「不健全な価格形成」を抑制するためとして10億ドル規模の米ドル売り・トルコリラ買い介入を実施。3日に2回目の直接介入を実施しました。いずれも効果は短期で終わり、下落基調は変わりませんでした。トルコリラの対米ドル相場は1ドル=13.7リラ台と最安値圏。クロス取引のトルコリラ/円は8円20銭近辺と最安値近辺で先週の取引を終えました。

ロイターによりますと、エルドアン大統領は4日の演説で、トルコリラ下落と高インフレは近く落ち着くと述べました。同時に、金利を低くするとの公約をあらためて示しました。

「困窮と絶望」

トルコ国内の多くは政府傘下にあり、独立したトルコメディアは慎重な報道に徹しています。半面、外国メディアは、トルコ情勢を厳しく伝えています。

フィナンシャル・タイムズは、トルコの経済政策がエルドアン大統領の独裁色を強めたと報じました。ネバティ新財務相が公的金融機関を道具に使うとの懸念もあるしています。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、エルドアン大統領の低金利政策で通貨が急落、トルコ人全員が怒っていると伝えました。パンの配給に長蛇の列、肉の購入を断念、より良い生活を求めてヨーロッパに脱出した市民もいるとしています。トルコの経済政策が国民の絶望と高インフレを招いたと伝えました。

トルコリラは当面、金融市場全体の心理、米国債利回りとドル地合い、原油相場の影響を受けそう。新型コロナウイルスのオミクロン型変異種の感染が世界に拡大、市場の不安定化がトルコリラのネガティブ要因になるとみられます。ムーディーズはトルコ格付けをB2に維持、見通しをネガティブにしました。

テクニカルとファンダメンタルズの両面がトルコリラの下落を示唆。最高権力者の政治的な問題であるため、トルコリラ売り要因は消えないとの指摘があります。通貨が下落しインフレが加速するというネガティブ・スパイラルが続く可能性があります。

[DECEMBER 05, 2021 T363]

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