通貨急落後も低金利主張、リラ売り変化の兆しみえず

2021/11/29 07:26

松島新の週刊2分でわかるトルコ

「不安定」

トルコリラの不安定な展開が続いています。先週末は南アフリカで確認された新型コロナウイルスの新たな変異種「オミクロン」への警戒感で世界の金融市場が荒れました。米国債利回りが急低下したことを受け米ドルが売られ、逃避買いで円が急上昇しました。リスク回避で新興国通貨は下落しました。

金融市場全体のリスク回避に加え、トルコリラは国内問題も寄与して売られました。23日の最安値更新後に一旦戻したものの、26日の取引で再び急落しました。クロス取引のトルコリラ/円は26日に4.5%急落、1リラ=9円10銭台で先週の取引を終えました。ブルームバーグのデータによりますと、トルコリラ/円の年初からの下落率は34%に達しました。

トルコリラ安地合いは、エルドアン大統領が低金利の重要性を強調後に、トルコ中央銀行が主要政策金利の1週間物レポ金利を追加利下げしたことがきっかけでした。中銀の独立性がなくなり、「高金利が高インフレを招く」と主張するエルドアン大統領が金融政策を事実上決めていることへの懸念が強まりました。

エルドアン大統領は「自由のための経済戦争」として中銀の利下げを擁護。26日には、「金利は低下する。国民や農民が金利で苦しむことはさせない」と主張。国際通貨基金(IMF)からの支援を受ける考えにあらためて反対する意向を示しました。エルドアン大統領が考えを変える兆しはありません。

トルコ中銀は26日、「トルコの銀行は引き続き強固であり、通貨危機に対応する十分な流動性がある」との報告書を発表しました。ウォール・ストリート・ジャーナルは、トルコリラ急落を受けたエルドアン大統領に対する圧力を緩和、方針を変更しないことを示したものだと伝えました。

ウォール・ストリート・ジャーナルとフィナンシャル・タイムズによりますと、イスタンブール、アンカラ、イズミールなどトルコの主要各都市で、通貨急落で生活を圧迫された市民によるエルドアン大統領に対する抗議デモが拡大しました。2016年のクーデター未遂事件以降に反政府デモが本格化するのは初めて。野党の一部はエルドアン大統領の辞任を要求。トルコの市民は生活防衛のため、米ドル建て預金を増やしています。

「インフレ20%超も」

トルコリラは当面、エルドアン大統領の動きに敏感に反応すると予想されます。金利や通貨に関する発言で大きく振れる可能性があります。エルドアン大統領は、アラブ首長国連邦(UAE)の実験を握るアブダビ首長国のムハンマド皇太子と会談するなど、アメリカ抜きで湾岸諸国との関係強化に動いています。トルコリラ急落には不満を抱いていて、金融機関が通貨急落を誘導していないかを調査するよう関係機関に指示しました。

今週はトルコの国内材料が豊富。10月貿易収支、第3四半期(7~9月)の国内総生産(GDP)、11月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)が発表されます。ロイターの調査によりますと、11月CPIは前年同月比20.7%上昇が予想中央値。10月の19.89%から加速するとの見通し。予想レンジは19.3~21.06%でした。

ファンダメンタルとテクニカルの両面はトルコリラがさらに下落する可能性を示唆しています。国際金融協会(IIF)のエコノミストは、政策当局者が11月18日の利下げは間違いで、利下げサイクルを完了する姿勢を示すことがトルコリラ安の抑制に必要だとツイッターに投稿しました。これまでのところ、逆の動きしか確認できません。

[NOVEMBER 28, 2021 T362]

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