トルコリラ急落でどうなる、欧米の厳しい見方

2021/11/22 07:28

松島新の週刊2分でわかるトルコ

「8日連続最安値」

トルコリラ売りは止まる兆しがありません。軟調な展開が続いていたトルコリラは、エルドアン大統領の「市民の金利負担を取り除く」との議会演説、それに呼応したトルコ中銀銀行の1%追加利下げで売りが加速しました。

トルコリラの対米ドル相場は8日連続で最安値を更新。エルドアン大統領の演説と中銀利下げで5%下落、19日の取引で一時買い戻されたものの、終盤の取引で再び売られ一時1ドル=11.33リラまで下落。3日間で合計7%下げました。

クロス取引のトルコリラ/円も下げ続けました。一時1リラ=10円03円と、10円割れ目前まで下落。10円10銭近辺で先週の取引を終えました。ブルームバーグのデータによりますと、年初来の下落率は27.3%に達しました。

エルドアン大統領は「高金利が高インフレを招く」と繰り返し主張しています。金利を引き引き下げればインフレが落ち着く、と世界のほとんどのエコノミストと反対の見解。エルドアン大統領の要求に反し利上げしたアーバル前総裁を解任、後任のカブジュオール総裁はこれまで合計4%利下げしました。通貨安を誘い、エルドアン大統領の主張とは逆にインフレ上昇が前年比20%近くまで加速しました。

多くを輸入に依存する食料品、石油や天然ガスが高騰。市民の生活を大きく圧迫しています。トルコの有力調査会社メトロポールの最新の調査によりますと、64%以上のトルコ人が政府は経済問題を解決できないと考えていることがわかりました。エルドアン大統領が金融危機を解決できると信じている人は28%に留まりました。

「厳しい見方」

政府の影響が強いトルコの主要メディアは、トルコ中銀の利下げについて、エルドアン大統領の意向を含むアナトリア通信伝を解説なして報じました。イスタンブール株式市場の主要株価指数が最高値を更新、堅調な経済指標を詳しく伝えていますが、トルコリラ急落と経済への影響についてはほとんど報じていません。

一方、欧米の主要メディアは、エルドアン大統領の政治圧力で中銀が利下げを強いられ、通貨危機の兆しがあると詳しく報じました。フィナンシャル・タイムズは、トルコリラが最安値に沈み、投資家は「悪循環」を警告したと伝えました。12月会合で中銀が再び利下げ、持続できない状態になるとするゴールドマン・サックスのアナリストの見方を引用。トルコ中銀がエルドアン大統領から独立しない限りトルコリラの回復はみえないと解説しました。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、トルコの通貨危機が生活費を押し上げ、金融システムのリスクが高まったと報じました。トルコ企業が米ドル建てとユーロ建ての巨額債務を抱え、トルコの銀行を圧迫しているとしています。投資情報誌バロンズは、国際通貨基金(IMF)の支援が現実的な解決策だがエルドアン大統領の意向で難しいと伝えました。トルコの度重なる基本的な経済政策のミスで、経済打撃による資本規制を強いられるのは時間の問題だとしています。

ファンダメンタルズとテクニカルは、いずれもトルコリラがさらに下落する可能性を示唆しています。今週は消費者信頼感指数と設備稼働率が発表されますが、相場への影響はほとんどないとみられます。金融市場の心理、米国債利回りと米ドル地合い、原油相場の影響を受けそう。エルバン財務相が間接的に辞意を表明したと一部で報じられましたが、行方は不透明。エルドアン大統領の金利や通貨に対する発言があれば、トルコリラが敏感に反応することが予想されます、

[NOVEMBER 21, 2021 T361]

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