トルコリラ節目割り最安値、大統領の健康不安も

2021/11/15 07:22

松島新の週刊2分でわかるトルコ

「1ドル=10リラ」

トルコリラの下げが止まりません。トルコ売りとも言える下げ。金融政策への不信感と政局不安が圧迫しました。

トルコリラの対米ドル相場は先週5日連続で下落。1ドル=10.0258リラまで一時売られました。欧米の金融機関のアナリストは来年にも1ドル=10リラの節目を超えてドル高・リラ安が進むと予想していました。予想を超えるペースでトルコリラ売りが加速した形。クロス取引のトルコリラ/円も最安値を更新。12日の取引で1リラ=11円35銭近辺まで一時リラ安・円高が進みました。

トルコの10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比19.89%。9月から加速したものの、変動の大きい食品やエネルギーなどの品目を除くコアCPIは16.82%と、前月の16.98%から鈍化しました。インフレ高進が深刻なことは明らかですが、トルコ中央銀行のカブジュオール総裁が「コアCPI」を重視する姿勢を示していることなどから、追加利下げ観測が根強くトルコリラを圧迫しました。マーケットの一部で「輸出競争力が高まるため、トルコ政府が通貨安を容認している」と噂されたこともトルコリラ売りを誘いました。

対外要因がトルコリラに影響しました。アメリカの10月CPIは前年比6.2%と予想を上振れ。連邦準備理事会(FRB)がテーパリング(量的緩和の縮小)ペースや利上げを早めるとの一部観測で米国債利回りが上昇、キャリートレードの投資対象である新興国通貨を圧迫しました。トルコリラにも影響が及びました。

エルドアン大統領の健康不安説も一部で材料視されました。イタリアで開催されたG20(主要20カ国)首脳会議の記者会見後のエルドアン大統領の足元がふらついたこと、重要イベントに欠席したことなどを手掛かりに健康不安説が欧米で幅広く報じられました。政局が混乱するとの警戒感が強まりました。

トルコ政府はエルドアン大統領の健康不安説を完全否定。エルバン財務相は通貨安容認を否定しました。外貨預金の準備率の引き上げを発表したものの、トルコリラ売りは止まりませんでした。

「中銀会合」

トルコ中銀は18日に金融政策を決める会合を開きます。中銀は過去2回の会合で合計3%利下げしました。ロイターによる18日会合に関する調査では政策金利の1週間物レポ金利を1%引き下げ15%にするという予想が中央値でした。ブルームバーグの調査も1%利下げ予想。アナトリア通信のエコノミスト21人を対象にした調査は1%利下げ予想が中央値、利下げ幅レンジは0.25%~1.50%と予想が分かれました。

INGのアナリストは、1%利下げを予想すると同時に、サプライチェーンの混乱を背景にトルコ中銀が利下げサイクルを一旦止めるガイダンスを発表する可能性があるとコメントしました。

トルコリラは当面、金融市場の心理、米国債利回りと米ドル地合い、原油相場の影響を受けそう。トルコ中銀の会合が相場に影響する可能性があります。

ファンダメンタルズとテクニカルの両面がトルコリラ安を示唆しています。エルドアン大統領と与党・公正発展党(AKP)の支持率低下が止まらないことで、「人気取り政策」「ばらまき政策」が拡大しトルコ経済に長期的に打撃になるとの懸念があります。最安値を連日更新するなか、トルコ中銀と国営銀行がトルコリラの防衛に動くが注目です。

[NOVEMBER 14, 2021 T360]

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