トルコリラ売り加速、恐れた事態が現実に

2021/09/27 07:23

松島新の週刊2分でわかるトルコ

「予想外の利下げ」

外国為替市場を含め世界の金融市場は先週、アメリカの中央銀行にあたる連邦準備理事会(FRB)が金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)に注目しました。FRBはテーパリング(量的緩和の縮小)を11月にも発表することを強く示唆。FOMCメンバーの金利予想をチャート化したドットプロットで来年にも利上げサイクルに入る可能性を示しました。利上げが前倒しされるとの見方で米国債利回りは急上昇、米ドル高地合いが強まりました。

FOMCが開かれた22日、ブラジル中央銀行は政策金利を1%引き上げました。翌23日はノルウェー中銀が0.25%利上げ、イングランド銀行は高いインフレ見通しを示し利上げが近い可能性を示唆しました。

世界の中央銀行が金融引き締めに動く中、トルコ中央銀行は23日の会合で主要政策金利の1週間物レポ金利を19%から18%に引き下げました。8月の消費者物価指数(CPI)が19.25%と予想以上に上昇したにもかかわらず、引き締めではなく金融緩和しました。エコノミストは金利据え置きを予想していました。

「金利は悪」「高金利が高インフレを招く」。世界のエコノミストと逆の主張を繰り返すエルドアン大統領の政治圧力に中銀のカブジュオール総裁が配慮した決定だったと受け止められました。過去3代の中銀総裁は利下げを拒み更迭されました。自身の職を守るか、インフレ上昇を抑制するため要求に背くか、の2択だった可能性があります。

市場関係者が恐れていた事態。カブジュオール総裁に対する失望感でトルコリラが目立って売られました。トルコリラの対米ドル相場は1ドル=8.89リラまで売られ、2日連続で過去最安値を更新しました。クロス取引のトルコリラ/円も続落。1リラ=12円40銭台と、昨年11月以来の安値をつけました。12円04銭の最安値が意識されました。

トルコ中銀はガイダンス(見通し)を示しませんでしたが、ロイターによりますと、バークレイズ、JPモルガン、ゴールドマン・サックスは追加利下げがあると予想しました。来年中に政策金利は15%まで下がるとの見方があります。

「対米関係」

アナトリア通信によりますと、国連総会に出席するためニューヨークを訪れたエルドアン大統領は22日、アメリカのバイデン大統領との関係は「不健全だ」と述べました。CBSニュースのインタビューで、ロシア製地対空ミサイルシステム「S400」を追加購入する意向を示しました。

アメリカ政府は、ロシア製ミサイルシステムを導入したことを理由にアメリカの最新鋭ステルス戦闘機F35の開発計画からトルコを排除しました。トルコがロシア製兵器を追加購入すれば、トルコとアメリカの関係がさらに悪化するとみられ、トルコリラに影響する可能性があります。

「選挙にらむ」

トルコリラは当面、他の新興国通貨と同様に、金融市場の心理、米国債利回りと米ドル地合いの影響を受けるとみられます。30日に公表されるトルコ中銀の議事録が注目。金利に関するエルドアン大統領の発言があれば、反応しそうです。

2023年にトルコの大統領選が実施されます。最新の世論調査では、野党に属するアンカラのヤヴァシュ市長とイスタンブールのイマモール市長の支持率が、エルドアン大統領を上回っています。議会選挙が前倒しされるとの観測があるなか、与党の公正発展党(AKP)の支持率は大幅に低下しました。エルドアン大統領は選挙を意識して、企業や個人の負担を軽減するため金利引き下げをさらに要求する可能性があるとの見方が一部あります。

トルコリラ下落に対応して、トルコ政府が外貨準備高を使って市場介入に再び動く可能性があります。過去の介入で外貨準備高が大幅に減少したため余力は少ないものの、一定の効果があるかもしれません。

テクニカルとファンダメンタルズの両面がトルコリラの一段安を示唆しています。トルコ中銀の決定を受け外国人投資家を中心にした売り圧力がさらに続く可能性がありそう。INGは24日付けの最新見通しで、トルコリラの対米ドル相場が2023年末まで段階的に下落する予想を維持しました。

[SEPTEMBER 26, 2021 T353]

topへ