トルコリラ対ドル最安値、外国人投資家の売り

2021/05/31 08:41

松島新の週刊2分でわかるトルコ

「政局と中銀」

トルコリラは28日の取引で対米ドルで過去最安値を更新しました。対米ドルで一時1ドル=8.6145リラまで下落。去年11月の安値1ドル=8.58リラを超えて売られました。クロス取引のトルコリラの対円相場は1リラ=12円80銭台前半に下落、去年11月初旬以来の安値をつけました。

トルコリラは先週、5日続落しました。新興国通貨全体は概ねアメリカの長期金利(米10年物国債利回り)をにらんだ展開でしたが、トルコリラは目立って下落しました。

複合的な要因があると指摘されました。エルドアン大統領が今年3月以降、アーバル総裁を含むトルコ中央銀行の高官を相次いで3人解任。高インフレを背景にマーケットが利上げを催促するなか、政治圧力で中銀が利下げ方向にあるとみられています。中銀の独立性に対する疑問、金融政策に対する信頼感の低下がトルコリラの圧迫要因になりました。

フィナンシャル・タイムズによりますと、アメリカ・カリフォルニア州議会の上院は世界最大級の2つの公的年金基金にトルコが発行するファンドに投資しないことを義務付ける法案を投票、採択しました。バイデン政権がオスマン帝国のアルメニア人殺害をジェノサイド(大量虐殺)と認定したことを受けた動き。他の基金が続く可能性があります。

S&Pグローバル&レーティングスがトルコの格付けを見直すと伝えられたこともトルコリラ売り要因になりました。S&Pはトルコの格付けを投資適格級から2段階下の「Bプラス」で据え置きました。S&Pのほか、ムーディーズとフィッチもトルコを投資不適格級(ジャンク債級)に格付けています。

エルドアン大統領が、反政権派ジャーナリストが搭乗したライアンエアー機を強制着陸させた問題で、北大西洋協力機構(NATO)にベラルーシ政府への制裁を緩めるよう求めたと報じられてこと、トルコの総選挙が前倒しされるとの観測、野党のイスタンブール市長に禁固刑が科せられると伝えられたことも影響。外国人投資家が積極的にトルコリラを売りました。

「CPI」

エルドアン大統領を取り巻く政治環境、脆弱な経済のファンタメンタルズ、中銀政策への信頼感低下など、トルコリラを圧迫する要因が山積み。一段安になるとの見方が少なくありません。

目先の材料になりそうなのは3日発表の5月の消費者物価指数(CPI)。アナトリア通信が14人のエコノミストを対象にした調査では、前年同月比17.17%が予想中央値でした、前月の17.14%から小幅ながら伸びが加速するとの予想。中銀は年末のインフレ率を12.2%とする予測を公表しています。

トルコ中銀は6月17日に次回の金融政策決定会合を予定しています。それまで金融政策をめぐる観測がトルコリラ相場を動かす可能性があります。

[May 30, 2021 T336]

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