米景気は大きく減速するか

2022/05/23 13:05

ウィークリー・アウトルック

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【今週のポイント】
・米株は弱気相場入り、米長期金利は低下基調

・米景況感の悪化に伴うリスクオフに要注意!
・RBNZは政策金利見通しをどの程度上方修正するか

先週(5/16-)、ナスダック総合指数、S&P500指数に続いてNYダウも終値ベースで高値から15%超下落し、弱気相場入りしました。市場が懸念しているのは、米景気の大幅な減速、そしてスタグフレーション(景気停滞と高インフレの併存)でしょう。

今週の主要経済指標・イベント

米イールドカーブ(利回り曲線)は、長期金利(10年物国債利回り)がピークをつけた5月6日以降にフラットニング(平坦化)しています。2年以上の金利が低下(債券価格が上がるのでブル)、1年以下の金利が上昇(債券価格が下がるのでベア)しており、ブルベア・フラットニングといいます。これは、利上げ観測が一段と強まる一方で、アグレッシブな利上げによる景気減速を織り込んだためです。

米国債のイールドカーブ(利回り曲線)

今のところ、米景気は堅調なようです。1-3月期GDPは前期比年率-1.4%と縮小しました。ただし、個人消費や設備投資などの国内民間最終需要は3.1%の寄与度(GDPを何%分押し上げたか)でした。4-6月期はまだ半ばですが、5月18日時点のアトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)によれば、2.4%と予測されており、国内民間最終需要の寄与度は4.1%とさらに高まる予測です。

米GDP成長率と需要項目寄与度

労働市場も堅調。失業率は3.6%と、20年春のコロナ・ショック直前の最低水準3.5%とほぼ同じ。NFP(非農業部門雇用者数)は4月まで12カ月連続で前月比40万人超増加しています。

ただし、消費者や企業の先行きに対する見方は悪化しており、株安の継続などが逆資産効果などを通じて自己実現的に景気減速につながらないか注意する必要はあるでしょう。<西田>

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RBNZ(NZ中銀)が25日に政策会合を開きます。その結果が豪ドル/NZドルやNZドル/円、NZドル/米ドルに影響を与える可能性があります(豪ドル/NZドルについては後述)。

主要国の株価動向には要注意(特に米国株)。主要国株価が下落を続ければ、リスクオフ(リスク回避)の動きが市場で強まるかもしれません。その場合には円や米ドルが堅調に推移し、クロス円や豪ドル/米ドルは下落して米ドル/カナダドルは上昇する可能性があります。

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トルコリラが軟調に推移しています。トルコリラは先週(5/16- )、対米ドルで約5カ月ぶり、対円で約2カ月ぶりの安値をつけました。

足もとのトルコリラ安の主因として、トルコのインフレ加速や経常赤字の拡大、TCMB(トルコ中銀)の金融政策が挙げられます。トルコの4月CPIは前年比69.97%と、上昇率は前月の61.14%から加速し、02年2月以来20年2カ月ぶりの高水準を記録。インフレの加速にもかわらず、TCMBは1月以降政策金利を14.00%に据え置いています。トルコの経常収支は3月まで5カ月連続で赤字でした。

26日にTCMBが政策会合を開きます。政策金利は現行の14.00%に据え置かれるとみられ、その通りの結果になれば、トルコリラ安圧力は一段と強まる可能性があります。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:125.000円~130.000円>
今週(5/23-)は、米FOMC議事録(5/3-4開催分)やPCE(個人消費支出)デフレータ(4月分)に要注目。FOMC議事録では、0.50%の利上げとQT(量的引き締め)開始の判断に至った経緯や、先行きの利上げペースに関するヒントなどが明らかになりそう。FOMC後の会見で、パウエル議長は「次の2会合で0.50%の利上げを議題にすべきだとの認識がある」と語っており、FOMC内の議論は相当タカ派寄りにシフトした可能性があります。

FOMC議事録やPCEデフレーターを受けて一段と利上げ観測が強まるか。また、その場合に米株がどう反応するか。利上げ観測が強まれば、米ドル高要因ですが、米株が一段と調整色を強めるようだと、リスクオフの米ドル高・円高になる可能性があり、米ドル/円は頭の重い展開となりそうです。

米財務省のOFAC(外国資産管理局)が25日に期限がくる特例措置(経済制裁下でもロシアの支払いを米投資家が受け取ることを可能とする措置)をそのまま失効させれば、ロシアのデフォルト懸念が強まり、リスクオフを強める可能性はあります。ただし、ロシアは27日期限の利払いを前倒し実施するものとみられ、その場合の次のハードルは6月23-24日の計3.9億ドルの利払いとなりそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/米ドル 予想レンジ:1.03000ドル~1.08000ドル>
ECB内部では高インフレへの対応として利上げを求める声が強まっています。7-9月期の早い段階でAPP(資産購入プログラム)を終了させ、早ければ7月21日の理事会で利上げが決定されそうです。6月9日の理事会およびラガルド総裁の会見では約10年ぶりの利上げのための一段の地ならしが行われるかもしれません。
 
ラガルド総裁は先週末のメディア・インタビューで、7月利上げの可能性に言及しつつ、0.50%の利上げには否定的な見解を示しました。ただし、ドイツやオランダなどのタカ派メンバーは理事会で0.50%の利上げを主張する可能性もあります。

20日時点のOIS(翌日物金利スワップ)によれば、市場は22年末の政策金利を0.458%と予想しています。4月上旬までは現在‐0.50%の政策金利(中銀預金金利)が年内にプラスに転じるとの見方はほとんどなかったので、1カ月半に間に利上げ観測が急速に強まったとの印象です。予想される政策金利は米英のそれよりもかなり低いままです。ただし、通貨ユーロが対米ドルで03年以降の安値圏に沈んでいることを考えれば、ECBの利上げ観測が一段と強まることはユーロをサポートする材料になるかもしれません。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.08000~1.12000NZドル>
今週(5/23- )の豪ドル/NZドルは、25日のRBNZ(NZ中銀)政策会合が材料になるとみられます。RBNZは前回4月まで4会合連続で利上げを行っており、現在の政策金利は1.50%です。

NZではインフレ圧力が強まっており、NZの1-3月期CPI(消費者物価指数)は前年比6.9%と、上昇率は21年10-12月期の5.9%から加速し、90年4-6月期以来の高い伸びを記録。RBNZ(NZ中銀)のインフレ目標(1~3%)から上方へ一段と乖離しました。

RBNZは25日の会合で利上げを行うことを決定しそうです。利上げ幅については、市場では0.50%になるとの見方が有力。その通りの結果になれば、RBNZの政策金利見通しに注目です。RBNZは2月時点で、政策金利は24年9月に約3.4%でピークに達するとの見通しを示しました。政策金利のピークの水準が2月時点から大幅に上方修正されれば、NZドルにとって支援材料になりそう。豪ドル/NZドルは軟調に推移する可能性があります。豪ドル/NZドルは目先、1.08248NZドル(4/25安値)が下値メド、上値は1.11760NZドル(18年8月高値)がメドです。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.27000~1.31000カナダドル>
今週は、カナダの経済指標の発表が少ないため(26日の3月小売売上高くらい)、米ドル/カナダドルは米ドルサイドの材料で変動しそうです。米FOMC議事録や米国の4月PCE(個人消費支出)デフレーターなどを受けて、米FRBの利上げ観測が一段と強まれば、米ドル/カナダドルは堅調に推移しそうです。

主要国の株価動向には注意が必要かもしれません。市場では、FRBの積極的な利上げによって米景気が減速するとの懸念があります。米国など主要国が下落を続ければ、リスクオフ(リスク回避)の動きが市場で強まるかもしれません。リスクオフは米ドル高材料であり、米ドル/カナダドルの上昇要因と考えられます。米ドル/カナダドルの目先のメドとして、下値が1.27123カナダドル(5/5安値)、上値は1.30752カナダドル(5/12高値)が挙げられます。<八代>

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。」

執筆者プロフィール
八代 和也(やしろ かずや)
シニアアナリスト
2001年ひまわり証券入社後、為替関連の市況ニュースの配信、レポートの執筆などFX業務に携わる。2011年、マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)に入社。豪ドル、NZドル、カナダドル、トルコリラ、南アフリカランド、メキシコペソを中心に分析し、レポート執筆のほか、M2TV出演、セミナー講師を務めている。
【プロフィール】広島県出身。
【趣味】野球・サッカー観戦。
【一言】より分かりやすくタイムリーなレポートを心掛けています。


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