3%と130円の壁!?

2022/04/25 12:56

ウィークリー・アウトルック

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次週5月2日はマンスリー・アウトルック5月号を配信する予定です。

【今週のポイント】
・米長期金利は18年12月以来の3.0%示現なるか
・米ドル/円は02年4月以来の130円示現なるか
・今週は日米の金融政策の差を再認識か
・豪CPIの結果を受けてRBAの利上げ観測が強まるかどうか

米長期金利(10年物国債利回り)は先週20日に2.977%と、3年半ぶりの3%を目前にして小反落しています。一方、米ドル/円は20日に約20年ぶりとなる129.390円をつけた後やや軟化しています。今週は日銀の金融政策決定会合があり、また米国の3月PCE(個人消費支出)が発表されます。来週5月3—4日には米FOMCも開催されるため、日米の金融政策の方向性の差を再認識することになりそうです。そうであれば、米長期金利の3%、米ドル/円の130円の壁は越えられるかもしれません。

今週の主要経済指標・イベント

22日時点のOIS(翌日物金利スワップ)によれば、市場の22年末の米国の政策金利は2.77%が予想されています。これは0.25%換算で約10回分の利上げを意味します。つまり、年内残り6回のFOMCのうち4回で0.50%利上げ、2回で0.25%利上げが実施されるのと同様のペースです。

同様に英国の政策金利は22年末に2.40%と予想されています。全てのMPC(金融政策委員会)で利上げが実施され、0.50%利上げも1回あるかないかといったイメージです。他方、ECBについても利上げ観測が高まっています。現在マイナス0.50%の政策金利は10月にはプラス圏に浮上し、年末には0.28%と予想されています。これに対して、日本の政策金利は22年末までほぼゼロ%が続くとの予想です。

日本と、米国や英国、さらにはユーロ圏との政策金利の差は拡大が予想されています。基本的には、米ドル/円や英ポンド/円、ユーロ/円のプラス材料となりそうです。

主要国の政策金利、政策金利変化(市場予想)

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今週(4/25- )、上述した日銀の金融政策決定会合のほかに、主要国の物価やGDP(国内総生産)などの経済指標が発表されます。

27日に豪州の1‐3月期CPI(消費者物価指数)、28日にドイツの3月CPI、29日にユーロ圏の3月CPI米国の3月PCEデフレーターなどの物価関連。WTI原油先物価格が3月上旬に1バレル=130ドルにワンタッチするなど、物価上昇圧力は引き続き大きそうです。そうしたなかで、インフレ率の頭打ちの兆候が少しでもみられるかが大きなカギとなりそうです。

28日には米国の、29日にはドイツ、ユーロ圏、メキシコの1‐3月期GDPがそれぞれ発表されます。米国の1‐3月期GDPは前期比年率1.0%と、前期の同6.9%から大幅減速が予想されています。ただ、前期は在庫投資(主に在庫の復元のため?)がGDPを4.9%押し上げており、1‐3月期はその反動が想定されます。つまり、数字の落差のほど景況は悪化していない可能性が高いということです。また、1‐3月期の後半や4月はコロナ規制の緩和により景気が後押しされた可能性が高く、4‐6月期のGDPはある程度好調なスタートを切ったとみられます。その他の国・地域についても、1‐3月期GDPが低めに出てもそれほど悲観的になる必要はないのかもしれません。<西田>

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黒田日銀総裁は22日の講演で、「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を中心とした金融緩和を粘り強く継続する」と述べました。黒田総裁は28日の金融政策決定会合後に記者会見をしますが、会見では現在の金融政策を維持する姿勢を改めて示すとみられます。その通りになれば、日銀とBOC(カナダ中銀)やRBNZ(NZ中銀)など他の中銀との金融政策の方向性の違いが市場で改めて意識されそうです。豪ドル/円やNZドル/円、カナダドル/円は堅調に推移する可能性があります。

一方で、主要国の株価動向には注意が必要です。米FRBなど主要中銀の利上げ観測や米国の長期金利(10年物国債利回り)の上昇は、株価にとってマイナス材料と考えられるからです。主要国の株価が下落を続ければ、リスクオフ(リスク回避)の動きが市場で強まる可能性があります。その場合には円が強含んで豪ドル/円やNZドル/円、カナダドル/円は上値が重くなるかもしれません。

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メキシコの4月前半のCPI(消費者物価指数)が22日に発表され、結果は総合指数が前年比7.72%、コア指数は同7.16%でした。総合指数の上昇率は3月前半の7.29%から加速し、コア指数の上昇率も3月前半の6.68%から加速しました。BOM(メキシコ中銀)のインフレ目標は3%です(2~4%が許容レンジ)。

BOM(メキシコ中銀)は、前回3月まで7会合連続で利上げを実施し、現在の政策金利は6.50%です。4月前半のCPIでインフレ圧力のさらなる強まりが示されたことで、次回5月12日の会合では、直近3会合と同じ幅の利上げ(0.50%)、あるいはそれを超える幅の利上げが行われる可能性もあります。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:125.000円~131.000円>
昨年7月1日から今年4月21日までの米ドル/円と米長期金利(10年物国債利回り)の相関係数(日足)は0.96と、ほぼ完全な正の相関。回帰分析により米長期金利を用いて米ドル/円の推計式を求めると以下の通り。

米長期金利を用いた米ドル/円の推計式

推計式に従えば、長期金利が3.0%に到達しても、米ドル/円は128円弱。米ドル/円の130円と整合的な長期金利は3.2%程度と求められます。ただ、過去10年間で長期金利が3.0%台をつけたのは、ごく短期間を除けば、18年9月中旬から12月上旬の局面しかありません。15年12月に始まった前回の利上げ局面の最終段階です。その時の長期金利のピークは3.26%でした。金利が大台到達した場合の市場心理を考慮すれば、3.0%と130円の壁を同時に越えるシナリオもあるかもしれません。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/英ポンド 予想レンジ:0.82000ポンド~0.85000ポンド
ECBの利上げ観測が高まっています。最近のECB関係者の発言に基づいて、次回6月9日の理事会で明らかになる最新の経済見通しを受けて、7月にAPP(資産購入プログラム)を終了し、早ければ7月中に利上げするシナリオが浮上しています。

OIS(翌日物金利スワップ)によれば、市場は7月と9月に0.25%ずつのECBの利上げを織り込んでいます。少し前まではECBが22年中に利上げするとの見方は少なかっただけに、年内利上げの観測がユーロをサポートしているのでしょう。ただし、冒頭で示したように、ECBの利上げのペースはBOEのそれよりも遅そうです。そのため、いったんECBの利上げが始まれば、市場の関心はそのペースに移るとみられます。現在のOISの示唆の通りであれば、ユーロ/英ポンドには下押し圧力が加わるようになりそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.08000~1.10500NZドル>
RBA(豪中銀)は政策金利を0.10%に据え置き続けているものの、4月5日の会合時の声明では、これまでの「忍耐強く対応する用意がある」との文言を削除しました。これは、利上げに向けての地ならしとみられます。

豪州の1-3月期CPI(消費者物価指数)が27日に発表されます。CPIが市場予想(総合指数:前年比4.6%。トリム平均値:同3.4%)を上回る結果になれば、市場では次回5月3日のRBA会合での利上げ観測が強まる可能性があります。その場合、豪ドル/NZドルは上昇しそうです。豪ドル/NZドルの上値メドとして、20年8月につけた1.10440NZドルが挙げられます。

一方で、21日に発表されたNZの1-3月期CPIは前年比7.1%と、上昇率は21年10-12月期の5.9%から加速し、90年4-6月期以来の高い伸びとなりました。NZにおけるインフレ圧力の強さを考えると、RBNZは今後も利上げを続けるとみられます。

RBNZにも利上げ観測があるため、豪CPIの結果を受けて豪ドル/NZドルが上昇したとしても、上昇は長続きしない可能性があります。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<カナダドル/円 予想レンジ:98.000円~103.00円>
20日に発表されたカナダの3月CPI(消費者物価指数)は、総合指数が前年比6.7%と、上昇率は2月の5.7%から加速し、91年1月以来の高い伸びを記録。BOC(カナダ中銀)のインフレ目標(2%を中心に1~3%のレンジ)を大きく上回りました。

BOCはまた、総合CPIと同様に3つのコアインフレ指標も重視しており、コアインフレ指標はいずれも2月から上昇率が高まりました。
<コアインフレ指標の結果>
*前年比。( )は前回2月
・CPI共通値:2.8%(2.7%)
・CPI中央値:4.7%(4.4%)
・CPIトリム値:3.8%(3.5%)

BOCは4月13日の政策会合で0.50%の利上げを行うことを決定。政策金利を0.50%から1.00%へと引き上げました。次回6月1日の会合でさらに0.50%の利上げが行われるとの観測が市場にはあり、3月CPIの結果はその観測を補強する結果と言えそうです。

日銀は現在の金融政策を維持する姿勢を示しており、日銀とBOCの金融政策の方向性の違いを考えると、カナダドル/円は堅調に推移しそう。カナダドル/円は、102.899円(4/21高値)超えを試すかもしれません。

ただ、米国など主要国の株価が下落を続ければ、リスクオフ(リスク回避)の動きが強まる可能性もあり、その場合にはカナダドル/円は上値が重い展開になるかもしれません。<八代>

カナダのCPI(前年比)

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。」

執筆者プロフィール
八代 和也(やしろ かずや)
シニアアナリスト
2001年ひまわり証券入社後、為替関連の市況ニュースの配信、レポートの執筆などFX業務に携わる。2011年、マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)に入社。豪ドル、NZドル、カナダドル、トルコリラ、南アフリカランド、メキシコペソを中心に分析し、レポート執筆のほか、M2TV出演、セミナー講師を務めている。
【プロフィール】広島県出身。
【趣味】野球・サッカー観戦。
【一言】より分かりやすくタイムリーなレポートを心掛けています。


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