米長期金利は3.0%台へ⁉

2022/04/18 13:19

ウィークリー・アウトルック

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【今週のポイント】
・米長期金利が3.0%を目指す展開となれば、米ドルのプラス材料か
・ワシントンでのG20や、仏大統領選挙の情勢にも要注意
・NZのCPIを受けてRBNZの利上げ観測が強まるかどうか
・BOCの利上げやQT開始、BOC総裁のタカ派的な姿勢がカナダドル/円を支援しそう

米長期金利(10年物国債利回り)の上昇が続いています。先週14日には18年末以来となる2.83%をつけました。11年8月以降で米長期金利が3.0%を超えたのはわずかな時期しかありません。また、この間の最高は18年10月の3.26%でした。

今後、米長期金利が3.0%に達し、さらに上昇する可能は高そうです。3月に公表されたFOMCの「ドット・プロット(中央値)」が示す政策金利は22年末が1.875%、23年末が2.75%で、その水準での利上げ打ち止めが示唆されました。ただし、FOMC参加者16人中の5人は政策金利が23-24年に3.0%を超えると予想していました。足もとでFOMC参加者の政策金利見通しは上方修正されている可能性が高そうです。

14日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が予想する22年末の政策金利は約2.5%であり、23-24年には3.0%を大きく超えるとの予想もありそうです。そうしたケースで、米経済が堅調を維持して、リセッション懸念が強まらないのであれば、長期金利が3.0%を超えても不思議ではないでしょう。

米長期金利の上昇によって、日米金利差(日<米)は拡大傾向が続いています。また、英国やドイツの長期金利は米長期金利に追随していましたが、今年3月以降は格差(英、ドイツ<米)が拡大しています。それらは、米ドル/円の堅調や、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルの軟調を示唆しています。4月初めに米2年物国債利回りは10年物国債利回りを一時上回りましたが、その後は下回っています。そうしたイールドカーブの逆転が解消していることも、米ドルにとってプラス材料でしょう。

主要国の長期金利変化

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今週(4/18- )は、政治・外交情勢が注目されます。18日にIMF・世銀総会がワシントンで開催され、19日にはIMFの世界経済見通しが公表される予定です。20日は同じくワシントンで、G7およびG20財務相・中央銀行総裁会議が開催されます。G20は、従来メンバーのロシア参加の是非を巡って波乱含みです。

24日に決選投票が行われる仏大統領選挙も気になるところでしょう。現職マクロン大統領の苦戦が伝えられるようだと、通貨ユーロにとってマイナス材料となりそうです。<西田>

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RBNZ(NZ中銀)BOM(メキシコ中銀)SARB(南アフリカ中銀)は21年に、BOC(カナダ中銀)は22年3月に利上げを開始しました。RBA(豪中銀)は政策金利を据え置き続けているものの、6月に利上げを開始するとの観測が市場にはあります。一方で、日銀は緩和的な金融政策を続ける姿勢を示しています。

日銀とBOCなど他の中銀(トルコ中銀を除く)との金融政策の方向性の違いを背景に、対カナダドルや対メキシコペソなどで円安圧力が加わりやすいと考えられます。今週(4/18- )は、カナダやNZ、南アフリカのCPI(消費者物価指数)が発表されます。CPIが市場予想を上回る結果になれば、カナダドル/円やNZドル/円、南アフリカランド/円は堅調さを増しそうです。

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TCMB(トルコ中銀)は14日の政策会合で、政策金利を14.00%に据え置きました。据え置きは4カ月連続です。

トルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)は、大幅なマイナス(政策金利:14.00%、3月CPI:前年比61.14%=マイナス47.14%)となっているにもかかわらず、TCMBが政策金利を据え置いたことは、トルコリラにとってマイナス材料と考えられます。トルコリラ/円は、米ドル/円の上昇に支えられているものの、トルコの実質金利のマイナス幅の大きさにも市場の意識が向かえば、下押し圧力が加わる可能性があります。<八代>

経済指標カレンダー

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:123.000円~128.000円>
先週(4/11- )、米ドル/円は約20年ぶりとなる126円台をつけました。米長期金利が堅調に推移するならば、心理的に重要な130円の大台が視野に入りそうです。

米ドル/円の上昇に対して、日銀は「円安は日本経済にプラス」との基本姿勢を変えていません。4月28日の金融政策決定会合でも、YCC(イールドカーブ・コントロール)を含めて金融緩和の継続を決定しそうです。

一方、Bloombergによれば、米ドルの実効レートは年初来3.3%の上昇で、21年初来でも8.2%の上昇にとどまっており、水準は20年3月の「コロナ・ショック」直前の水準とほぼ同じです。インフレ圧力が強いなかで、米当局が「米ドル高」をけん制すると考えにくいでしょう。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/米ドル 予想レンジ:1.07000ドル~1.10000ドル>
ECBは14日の理事会で金融政策の現状維持を決定しました。ラガルド総裁は直後の会見で、APP(資産購入)の終了と今後の政策金利について6月(9日理事会)に決定すると述べました。ECB関係者によれば、7-9月期に0.25%利上げの支持が強まっており、年内に0.50%利上げして政策金利(中銀預金金利)をゼロ%にすべしとの声もあった模様。実際に政策決定がなされれば、ユーロのプラス材料になるかもしれませんが、ユーロ圏と、米国や英国との政策金利差は拡大が予想され、ユーロ高は長続きしない可能性が高そうです。

仏大統領選挙は24日に、現職マクロン大統領と、極右・国民戦線(RN)ルペン氏の間で決選投票が行われます。最新のIPSOS世論調査(4/14-16に1676人対象に実施)によれば、マクロン氏が55.5%対44.5%でルペン氏をリードしているとのこと。ただし、選挙は水物。マクロン氏の苦戦が伝えられるようになれば(=反ユーロ姿勢の強いルペン氏が善戦)、ユーロのマイナス材料になりそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.08000~1.10500NZドル>
RBNZ(NZ中銀)は13日に政策会合を開き、0.50%の利上げを行うことを決定。政策金利を1.00%から1.50%へと引き上げました。利上げは4会合連続です。

RBNZの利上げ幅は市場予想(0.25%)を上回ったものの、NZドルは下落しました(豪ドル/NZドルは上昇)。その主な要因として、RBNZが13日の会合時の声明で「2月の金融政策報告で示した政策金利の見通し(※)に満足している」と表明したことが挙げられます。今回0.50%の利上げを行ったにもかかわらず、政策金利のピークに関するRBNZの見方は変化していない(ピークは上がっていない)との見方もできるからです。

(※)RBNZは2月の金融政策報告で、政策金利のピークは3.35%との見通しを示しました。

目先は上述の13日の会合時の声明が意識されて、豪ドル/NZドルは底固く推移するかもしれません。ただ、RBA(豪中銀)は6月に利上げを開始するとの観測が市場にはある一方、RBNZは今後も利上げを継続するとみられます。RBAとRBNZの金融政策を考えると、豪ドル/NZドルが上昇を続ける状況ではなさそうです。21日発表のNZの1-3月期CPI(消費者物価指数)が市場予想(前年比7.1%)を上回る結果になれば、RBNZの利上げ継続が市場で改めて意識されてNZドル高(豪ドル/NZドルは下落)材料になる可能性があります。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<カナダドル/円 予想レンジ:98.000円~102.00円>
BOC(カナダ中銀)は13日に政策会合を開き、0.50%の利上げを行うことを決定。政策金利を0.50%から1.00%へと引き上げました。利上げは2会合連続です。BOCはまた、「再投資を終了し、4月25日からQT(量的引き締め)を開始する」と表明。「満期を迎えたカナダ国債の入れ替えはせず、その結果としてバランスシートの規模は時間とともに縮小する」としました。

マックレムBOC総裁は会合後の会見で「カナダのインフレ率は高すぎる」と指摘し、「インフレ率を目標に戻すため、BOCは必要に応じて力強く対応する」と強調。政策金利は中立金利(景気を冷やしも過熱もしない政策金利の水準)をなお大きく下回っており、「需給バランスを回復し、インフレ率を目標に戻すため、政策金利を一定期間にわたって中立金利をやや上回る水準へと引き上げる必要があるかもしれない」と述べました。BOCは中立金利を2~3%の間と推計しています。

日銀が緩和的な姿勢を示していることを踏まえると、カナダドル/円には上昇圧力が加わりやすいとみられます。そのなかでBOCが利上げやQTの開始を決定し、またマックレム総裁がタカ派的な姿勢を示したことは、カナダドルにとってプラス材料と考えられます。20日発表のカナダの3月CPI(消費者物価指数)が市場予想(前年比6.1%)を上回る結果になれば、カナダドル/円は一段と上昇し、101.090円(15年6月高値)より上の水準に定着するかもしれません。<八代>

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。」

執筆者プロフィール
八代 和也(やしろ かずや)
シニアアナリスト
2001年ひまわり証券入社後、為替関連の市況ニュースの配信、レポートの執筆などFX業務に携わる。2011年、マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)に入社。豪ドル、NZドル、カナダドル、トルコリラ、南アフリカランド、メキシコペソを中心に分析し、レポート執筆のほか、M2TV出演、セミナー講師を務めている。
【プロフィール】広島県出身。
【趣味】野球・サッカー観戦。
【一言】より分かりやすくタイムリーなレポートを心掛けています。


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