「最強」の米ドル、「最弱」の円

2022/04/11 12:04

ウィークリー・アウトルック

PDFはこちら

【今週のポイント】
・4月に入って当社取り扱い通貨の中で米ドルが「最強」、円が「最弱」
・金融政策で「おいてけぼり」の「円安」だけでなく、「米ドル高」の様相も
・RBNZはどの程度利上げするのか
・BOC声明や総裁会見で、今後の利上げペースについてのヒントが示されるかどうか

今週の主要経済指標・イベント

4月に入ってからの通貨の騰落率をみると、当社取り扱い通貨の中で米ドルが最も強く、円が最も弱い状況です(Bloombergの主要17通貨の中では、米ドルはノルウェークローネとブラジルレアルに次いで3位、円は最下位)。

年初来でみても、円は「最弱」で、金融政策の正常化を進める主要中銀に対して、金融緩和を継続する日銀が「おいてけぼり」となっている状況を反映してきました。一方、米ドルは4月に入って上昇基調が強まっており、アグレッシブな利上げやQT(量的引き締め)の観測から米長期金利(10年物国債利回り)が大幅に上昇している状況を反映しています。

日銀はYCC(イールドカーブ・コントロール)によって長期金利をゼロ±0.25%に誘導する姿勢を堅持しています。したがって、米長期金利が一段と上昇するようなら米ドル/円に上昇圧力が加わりそうです。12日の米国の3月CPI(消費者物価指数)や14日の同小売売上高は要注意でしょう。

*******
5日、米財務省はロシアが米銀に保有する米ドル資金の移動を禁止しました。このため、ロシア国債の利払いが実行されず、事実上のデフォルト(債務不履行)となった模様です。大手格付け会社のムーディーズとフィッチは3月末にロシアの格付けを取り下げていましたが、S&Pは4月7日に「SD(選択的デフォルト)」とし、翌8日に「格付けなし」に変更しました。

報道によれば、ロシアは22年中の国内外での国債発行を停止するとのこと。ロシアはエネルギー輸出によって引き続き外貨を獲得している模様ですが、資金繰りはますます厳しくなりそうです。<西田>

※ロシアの「デフォルト」については、3月21日配信の特別レポートで詳しく解説しています。

*******

RBA(豪中銀)は4日の政策会合で、政策金利を0.10%に据え置いたものの、声明ではこれまでの「忍耐強く対応する用意がある」との文言削除。利上げに慎重なRBAの姿勢が変化したことが示唆されました。市場では、RBAは6月に利上げを行うとの観測があります。14日発表の豪州の3月雇用統計が良好な内容になれば、利上げ観測は一段と強まり、豪ドルの支援材料となりそう。日銀は緩和的な金融政策を続ける姿勢を示していることから、特に対円で豪ドルが上昇しやすいと考えられます。

RBNZ(NZ中銀)BOC(カナダ中銀)が13日にそれぞれ政策会合を開きます(RBNZとBOCの会合については後述)。その結果にNZドルやカナダドルが反応する可能性があります。

14日には、TCMB(トルコ中銀)の政策会合があります。トルコの3月CPI(消費者物価指数)は前年比61.14%と、前月の54.44%から上昇率が加速し、02年3月以来20年ぶりの高い伸びとなりました。インフレへの対応策として利上げが考えられるものの、TCMBが利上げを行うのは困難とみられます。TCMBの金融政策への影響力が大きいエルドアン・トルコ大統領が低金利を志向しているからです。

TCMBは14日の会合で政策金利を14.00%に据え置くとみられ、その通りの結果になればトルコリラ/円に大きな反応はみられないかもしれません。ただ、トルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)が大幅なマイナス(11日時点でマイナス47.14%)になっていることは、トルコリラにとってマイナス材料です。今後、トルコの実質金利にも市場の意識が向かえば、トルコリラ/円に対して下押し圧力が加わる可能性があります。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:122.000円~127.000円>
ブレイナード理事やカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁など、ハト派のFRB関係者からもタカ派的な発言が相次ぎました。ハト派ですら高インフレの抑制を最重視せざるを得ないということでしょう。次回5月3-4日のFOMCでは利上げが確実視されており、0.5%幅になる可能性が高そうです。また、急ピッチでのQT(量的引き締め)開始を決定しそうです。

米長期金利(10年物国債利回り)は8日に、19年3月以来となる2.7%台をつけました。11年夏以降で長期金利が3%台を示現したのは、利上げの最終局面だった18年終盤などごくわずか。したがって、長期金利は頭が重くなりそうです。それでも、長期金利が一段と上昇するようなら15年6月につけた125.860円を目指す展開となりそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/米ドル 予想レンジ:1.08000ドル~1.12000ドル>
3月9-10日開催のECB理事会ではAPP(資産購入プログラム)のテーパリング(段階的縮小・終了)をスピードアップし、今年7‐9月に完了させることを決定。また、利上げは「ゆっくり」で、APP終了後「しばらく経ってから」とされました。ただし、ラガルド総裁は理事会後の会見で、「『しばらく』は1週間かもしれないし、数カ月かもしれない。問題は時間軸ではなく、データ次第」と説明していました。

7日に公表された同理事会の議事要旨によれば、一部のメンバーはAPP終了期日を夏季に設定することを主張しました。それにより、「インフレ見通しが悪化した場合に7‐9月中に利上げを実施する可能性に道を開く」ためでした。その他のメンバーは(期日を設定せずに)様子見するアプローチが望ましいと考えました。

8日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は22年後半に1回につき0.1%として6回の利上げを織り込んでいます。仮にそれが正しいとしても、現在マイナス0.5%の中銀預金金利(政策金利)は22年末でわずかにプラスになる程度。米国や英国との政策金利差は現在より拡大しているでしょう。ただし、ECBによる利上げ開始は大きな変化であり、そうした観測は一時的にせよ通貨ユーロのプラスになりそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.07500~1.10000NZドル>
RBNZ(NZ中銀)は、前回2月23日の政策会合まで3会合連続で利上げを行いました。13日の会合では、政策金利をさらに引き上げることが決定されるとみられ、焦点はどの程度利上げするのか(利上げ幅)になりそうです。

前回会合以降、NZの主要な経済指標の発表はほとんどありませんでした。また、今回の会合では四半期金融政策報告の公表や総裁会見が行われません。さらに、RBNZの金融政策において重要な判断材料となるNZの1-3月期CPI(消費者物価指数)は、会合後の21日に発表されます。これらを考えると、利上げ幅は過去3回と同様に0.25%になる可能性が高そうです。

市場では0.50%の利上げ観測もあるため、利上げ幅が0.25%にとどまれば、NZドルが売られそうです。豪ドル/NZドルは、1.10000NZドル(心理的な節目)に向かって上昇する可能性があります。ただ、RBNZは今後も利上げを継続するとみられます。RBNZの声明でそのことが示唆されれば、政策金利の結果を材料にしたNZドル売りは長続きしないかもしれません。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<カナダドル/円 予想レンジ:97.000円~100.00円>
BOC(カナダ中銀)は、3月2日の前回会合で0.25%の利上げを行うことを決定。18年10月以来3年5カ月ぶりに利上げを実施しました。

カナダの2月CPI(消費者物価指数)は前年比5.7%と、前月の5.1%から上昇率が加速し、91年8月以来の高い伸びを記録。BOCのインフレ目標(2%を中心に1~3%のレンジ)から一段と乖離しました。また、コジッキBOC副総裁は3月25日の講演で、「カナダのインフレ率は高すぎる」と指摘し、「BOCはインフレ率を目標へと戻すことに主眼を置いており、力強く行動する用意がある」と述べました。これらをみると、BOCは13日の会合で0.50%の利上げを行うと考えられます。

0.50%の利上げは、市場にほぼ織り込まれています。その通りの結果になった場合には、声明や会合後に行われるマックレム総裁の会見に注目です。マックレム総裁の会見などで、今後も積極的に利上げを行う可能性があるとの姿勢が示されれば、カナダドル/円が堅調に推移しそう。カナダドル/円は、100.117円(3/28高値)が上値メドです。

13日のBOC会合ではまた、国債の保有残高を減らす「QT(量的引き締め)」について議論されるとみられます。QTの開始が決定された場合、カナダドルにとってプラス材料になりそうです。<八代>

筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。」

執筆者プロフィール
八代 和也(やしろ かずや)
シニアアナリスト
2001年ひまわり証券入社後、為替関連の市況ニュースの配信、レポートの執筆などFX業務に携わる。2011年、マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)に入社。豪ドル、NZドル、カナダドル、トルコリラ、南アフリカランド、メキシコペソを中心に分析し、レポート執筆のほか、M2TV出演、セミナー講師を務めている。
【プロフィール】広島県出身。
【趣味】野球・サッカー観戦。
【一言】より分かりやすくタイムリーなレポートを心掛けています。


topへ