米景気と長期金利の行方

2021/04/12 11:26

ウィークリー・アウトルック

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<<今週のポイント>>

・足もとの米景気や物価の動向、米長期金利の反応
・RBNZ(NZ中銀)とTCMB(トルコ中銀)の政策会合

4月に入って、米長期金利は頭打ち状態。米長期金利の上昇が一服すれば、米ドルも全般的に軟調に推移する可能性があります。とりわけ、米長期金利の上昇局面で対米ドルでの下落が目立った円やユーロ、そしてメキシコペソやNZドルなどの資源・新興国通貨が堅調になるかもしれません。

ただし、今週は、CPI(消費者物価指数)、小売売上高、製造業景況感などの米経済指標や、ベージュブック(地区連銀経済報告)など、相場材料が目白押しです。「米景気回復は力強い」、「インフレ圧力が高まっている」との見方が強まれば、長期金利が再び上昇基調に転じる可能性はあるでしょう。<西田>



RBNZ(NZ中銀)が14日、TCMB(トルコ中銀)が15日に政策会合を開きます。いずれも金融政策の現状維持を決定するとみられ、声明における金融政策に関する文言が焦点になりそうです。TCMBについては早期に利下げに転じるとの観測があり、声明がその観測を強める内容になれば、トルコリラは下押ししそうです。

15日、豪州の3月雇用統計が発表されます。RBA(豪中銀)は金融政策運営において雇用情勢を注視する姿勢を示しているため、豪経済指標の中で雇用統計は特に重要と考えられます。

市場では、RBAは22年終盤にも利上げを行うとの観測があります。雇用統計が良好な結果になれば、その観測は一段と強まるかもしれません。その場合、豪ドルが堅調に推移しそうです。本稿執筆時点で雇用統計の市場予想は失業率が5.7%、雇用者数は前月比3.50万人増です。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:108.500円~110.500円>
4月に入って、米長期金利(10年物国債利回り)はやや軟化。足もとでダブルトップを形成しつつあるようにも見え、ネックライン(1.6%)を下回るようであれば、いったんピークアウト感が強まる可能性があります(下図)。今年1-3月の米ドル/円と米長期金利の関係を基にすれば、長期金利1.60%なら米ドル/円108円台ミドル、1.70%なら109円台ミドル、1.80%なら110円台ミドルと整合的です(先週のウィークリー・アウトルックをご参照)。



今週注目されるのは、3月の米CPI(消費者物価指数)と同小売売上高でしょう。9日発表の3月のPPIは上振れしましたが、CPIも同様に上振れるようなら、インフレ懸念が高まる(=長期金利上昇要因)かもしれません。また、3月11日に成立したAmerican Rescue Planの影響が小売売上高にどう出るか。1,400ドルの現金は3月中に多くの家計に届かなかったかもしれません。それでも、消費マインドを刺激することで売上高増加に貢献した可能性があります。3月の自動車販売台数は比較的好調だったようです(自動車は小売売上高の一部)。

その他、ベージュブック(地区連銀経済報告)や、4月のNYとフィラデルフィアの製造業景況指数で最新の景気状況がある程度明らかになりそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア➁:<NZドル/円 予想レンジ:75.500円~78.000円>
RBNZ(NZ中銀)が14日に政策会合を開きます。その結果がNZドルの相場材料になりそうです。

会合では、政策金利(現在0.25%)と大規模資産買い入れプログラム(同1000億NZドル)のいずれも据え置かれそうです。

その通りの結果になれば、声明における金融政策に関する文言に注目です。2月の前回会合時の声明では、「CPI(消費者物価指数)上昇率が2%の目標中央値に維持され、また雇用が最大の持続可能水準に達するかそれを上回ると確信できるまで、現在の景気刺激的な金融状況を維持する」と表明。「これら(CPI上昇率と雇用の目標達成)の要件を満たすには、かなりの時間と忍耐が必要だ」と指摘し、「必要に応じて追加の金融刺激策を提供する用意がある」としました。

“かなりの時間と忍耐”という表現が変化するか否かが今回の焦点になりそうです。この表現に変化がなければ、RBNZは現在の金融緩和策を当面維持するとの観測が市場で強まるとみられ、NZドルは上値が重い展開になるかもしれません。NZドル/円は目先、75.524円(3/25安値)が下値メド、77.886円(4/5高値)が上値メドになりそうです。<八代>

今週の注目通貨ペア③:<トルコリラ/円 予想レンジ:12.500円~14.100円>
15日、TCMB(トルコ中銀)の政策会合があります。今回は、3月20日に就任したカブジュオール新総裁のもとで行われる初めての会合です。

政策金利は現行の19.00%に据え置かれそうです。トルコの3月CPI(消費者物価指数)は前年比16.19%と、2019年7月以来の高水準でした(下図)。また、カブジュオール新総裁は3月30日、「インフレ率が高い状況では、引き締め的な金融政策を維持する必要がある」と語ったからです。

政策金利が据え置かれた場合、声明の内容に注目。とりわけ、3月の前回会合時に示された「インフレ率の持続的な低下や物価安定が強く示されるまで、金融引き締めスタンスを断固維持する」、「必要に応じて追加の金融引き締めを実施する」との方針に変化がみられるのかが焦点になりそうです。

市場では、TCMBが早期に利下げに転じるとの観測があります。声明でTCMBのタカ派的な姿勢の後退が示唆されれば、早期利下げ観測は一段と強まり、トルコリラに対して下押し圧力が加わるとみられます。トルコリラ/円は3月22日安値の12.975円を割り込むかもしれません。<八代>

TCMB政策金利とトルコCPI上昇率

出所:リフィニティブより作成

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。」

執筆者プロフィール
八代 和也(やしろ かずや)
シニアアナリスト
2001年ひまわり証券入社後、為替関連の市況ニュースの配信、レポートの執筆などFX業務に携わる。2011年、マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)に入社。豪ドル、NZドル、カナダドル、トルコリラ、南アフリカランド、メキシコペソを中心に分析し、レポート執筆のほか、M2TV出演、セミナー講師を務めている。
【プロフィール】広島県出身。
【趣味】野球・サッカー観戦。
【一言】より分かりやすくタイムリーなレポートを心掛けています。


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