3月のFOMCの利上げとウクライナ情勢が最大注目ポイント

2022/01/28 15:06

金・原油マーケット特別レポート


北京オリンピック前後の金相場の動向は要注意‼


NY金相場の推移チャート

ブルームバーグデータより筆者作成
(日足)期間:2021/01/04~2022/01/27

 

最近の金相場は、FOMCによる3月利上げ前倒し観測とロシア軍によるウクライナ軍事侵攻懸念の強弱両材料に敏感な反応を見せる値動きとなっており、次なる大きな値動きを想起させる前夜のような状況にも映る。
一旦両材料のトリガーが引かれれば、いずれにしても金相場は1,700ドルあるいは1,900ドルの価格ポイントを一旦抜ける動きも予想される。

 

3月を起点に断続的利上げの可能性を示唆したパウエル発言

1月25~26日のFOMC定例会合では、3月利上げ支持を示唆する米FRBパウエル議長発言と共に、3月に債券買い入れを終了し、その後保有資産の大幅な圧縮に着手する計画を改めて示した。
今回の会合では物価安定に重きを置くことが確認された格好で、今後雇用の悪化に大きな影響がない限り、3月以後のFOMC定例会合において都度利上げが実施される可能性も排除されないこととなった。

昨年後半からのエネルギー価格の騰勢は未だ衰えを見せないが、欧米各国共にインフレ懸念が高まっており物価安定に向けたコンセンサスから利上げのピッチは早まる傾向にある。
市場は米FOMCによる3月利上げはほぼ織り込みつつあるが、その後の断続的利上げ観測が強まれば金利を生まない資産である「金」は利上げ開始の初動タイミングで一旦弱含みとなることが予想され、金相場は1,750ドルのサポートを割り込む可能性もある。

ただ前号までのレポートでも何度か指摘してきたが、過去の2度のFOMC利上げ実施時には、利上げ開始のタイミング前後に金相場は安値を記録しているものの、その後の段階的利上げの時期には上昇に転じており、ポストオミクロンの影響を受け雇用悪化再燃の可能性がなければ、過去2度と同様の相場展開が予想される。

 

北京オリンピック明けに光る「有事の金」

ウクライナでの軍事衝突のリスクが日々高まりつつある。

既にロシア軍はウクライナ国境沿いに10万人を超える60の部隊を展開しており、一方でウクライナを支援するNATOも艦船や戦闘機などの増派を決定しており、米国も武器供与及び米軍8500人派遣の準備がおこなわれているとの情報も流れている。
またロシアがウクライナに侵攻すれば第二次世界大戦以来最大の紛争に発展するとの懸念も高まりつつあり、市場関係者はプーチン大統領の侵攻命令発動の時期に注目が集まっている。
プーチン政権下のロシアでは、これまで2度の軍事進攻が行われており、いずれもオリンピック開催期にタイミングが重なっているのである。

2008年のグルジア紛争では北京オリンピック期間中の8月にロシアは軍事行動を起こし数日でグルジア共和国の一部を併合した。また2014年3月のロシア軍によるクリミア侵攻により、3月冬季ソチ五輪後にクリミアはロシアに併合された。

このため今回も北京五輪(オリンピック2/4~2/20、パラリンピック3/4~3/13)のタイミング(閉幕直後?)に合わせたロシア軍ウクライナ侵攻予測等から、一度軍事衝突発生ともなれば、ウクライナ「有事」による金買いで、金相場は一時的に1,900ドルまで急騰する可能性もある。

  

 

3月に大きな変動が予想される金相場、前哨戦となる2月相場まではレンジ展開か?

 

当面2月の金相場は、3月のビッグイベントを控え強弱相場材料を両睨みしながらのレンジ相場展開が予想される。

 

■当面の注目材料

コロナ感染拡大の影響
(オミクロン株は現状感染急拡大しているが重篤化の傾向が弱く2月中にはピークアウトの可能性も。ただブースター接種の効果が薄いと言われるステルスオミクロン株の今後の影響は気になる)

ウクライナ情勢等混迷する国際情勢
(そもそもロシアの強硬対応の発端は、ウクライナのNATO加盟とミサイル基地建設問題が要因であり、ウクライナ等にも「一帯一路」構想で莫大な投資を進めている中国も紛争の不拡大には同調する可能性が高いことから、軍事行動が発生しても長期化はしない可能性が高い)

エネルギー価格の上昇とインフレ懸念
(コロナ拡大による世界的サプライチェーンの停滞と中ロ絡みでの西側各国との対立激化などの政治問題が主要因。短期間での終息は困難であると思われる)

各国中央銀行による利上げへの高官発言
(インフレの急拡大でコロナ対策による各国金融緩和と資金バラマキへの早急な調整が急がれている。インフレは後手に回ると本格化するだけに景気失速を招かずの微妙なアクセル操作が続きそう)

利上げスタンスと有事リスクに影響受ける株価と暗号資産動向
(株式市場やビットコイン等への過剰流動性の偏重が世界的な利上げトレンドにより大きく変化、利上げと有事の方向性が落ち着き織り込まれるまでは、価格調整は続きそう)

 

★参考データ①

金価格に連動する上場投資信託(ETF)の世界最大の金ETFである「SPDRゴールドシェア」金現物保有高は、1月後半より増加に転じており、26日時点で1,014.26トンと2021年8月19日以来の約5年ぶりの高水準を記録している。
世界的なインフレ懸念と共に最近のウクライナ情勢などの有事の金への評価が高まりつつある傾向と言える。

 

金ETF現物保有量 金相場の推移

World Gold Trust Servicesデータより筆者作成
期間:2021/04/01~2021/01/26

★参考データ②

2000年以降、ロシアと中国の公的な金準備高は急激に増加している。
ロシアは軍事行動に対する西側からの経済制裁を起点に準備高の積み増しがおこなわれており、中国も金融市場の混乱時に安全資産と言える金準備高の積み増しを積極的に行っている。

また中国・ロシアともに2000年以降金の国内生産(2020年中国は世界1位の産金国:368.3トン、ロシアは世界2位:331.1トン)は増加傾向にあり、同時に中国は世界最大の金輸入&消費国でもある。中国共産党は長期戦略として米国債保有を減らしながら人民元の世界基軸通貨化を狙いとする動きを見せている。

 

ロシアと中国の公的金準備高の推移

GOLDHUBデータより筆者作成
期間:2000/Q1~2021/Q3

 

★有事の金への参考情報

ロシアは表向きではウクライナへの軍事行動に伴う強硬態度を示しているが、水面下では米国とNATOの連携に揺さぶりをかけている。プーチンの一番の懸念事項は、モスクワまで5分程度で到達する極超音速ミサイルのウクライナ配備であり、既に対応措置としてキューバやベネズエラへのロシア軍派遣や極超音速ミサイル「ジルコン」)搭載の艦船を大西洋上に展開させ自国と同レベルの軍事的脅威で米国を脅している。

 米ロ間では安全保障協議を続けているが、最終的にそれぞれをターゲットとする極超音速ミサイル等の配備撤回が明確に担保されれば、ウクライナにおける軍事行動の回避若しくは早期終息につながることが想定される。

 

★フィクション的独り言

メインは北京五輪直後に懸念されるロシアによるウクライナへの軍事侵攻と3月FOMC(3/15~16)が注目材料と言えよう。
3月金相場に関して敢えてフィクション的なシナリオを語るのであれば、
北京五輪直後にウクライナへの軍事侵攻が勃発→有事の金買い発生で金価格は一時1,900ドル突破→米ロ両国交渉における譲歩対応と中国の鎮静化調整→米3月FOMCにおける利上げ(0.5%or0.25%で値動きに影響も)とその後の断続的利上げ示唆の強調→ウクライナ情勢の緊張緩和と米利上げが嫌気され金価格は1,700ドルまでの下落方向へ→春以降利上げ材料は織り込まれ金価格は再度上昇トレンドへ!
(あくまでフィクション的シナリオです。)

 

 

★参考データ③④

円建て表示であることから、ドル建て金価格はレンジ相場内の動きで推移しているが、ETF金相場は円建て表示であるため円安傾向のドル円相場の影響もありやや右肩上がりのトレンドレンジでの動きとなっている。

 

金ETF 東京金融取引所 TFX

TFXデータより筆者作成
(日足)期間:2021/09/13~2022/01/27

 

SPDRゴールドシェア(1326)チャート

ブルームバーグデータより筆者作成
(日足)期間:2020/01/02~2022/01/27

 

 


■筆者プロフィール
藤原 貴一(ふじわら きいち)

相場歴20年以上。熟練の視点で金相場を読み解く。



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