年末年始の金相場の方向感は、欧州コロナとエネルギー価格の行方がカギとなる!?

2021/11/26 13:28

金・原油マーケット特別レポート

 

2021年NY金相場の推移(ドル・トロイオンス)


チャート:ブルームバーグより筆者作成
(日足):2021/01/01~11/25

金相場は夏場以降、1,830ドルがレジスタンスとなる頭の重い展開がしばらく続いていたが、11月に入るとインフレ懸念の拡大と各国中央銀行の利上げ観測への思惑等から100ドル超の乱高下の様相を見せている。

11月初めからBOE(英中央銀行)が利上げを見送り、さらにはFRB(米連邦準備理事会)とECB(欧州中央銀行)が利上げを急がない姿勢を示したため市場の早期利上げ観測が後退、さらには世界的なサプライチェーンの停滞と10日発表の米消費者物価指数(CPI)の予想以上の大幅な上伸を受けたインフレ懸念を背景に、金相場はレジスタンスの1,830ドルを一挙に上抜け、1,880ドルを伺う水準まで急伸した。

 ところが欧州市場における新型コロナウイルス感染症の再拡大により、欧州の景気後退懸念が急速に浮上、欧米の金利差拡大への思惑も強まり米ドル高が進行したため、金相場は一転1,780ドル割れまで下落している。




年末に向けドル建て金相場動向のポイントは、欧州のコロナ感染再拡大と世界的なサプライチェーンの停滞

現在、欧州の新型コロナ感染拡大は極めて深刻な状況に陥っており、特にワクチン接種の遅れが感染拡大につながっている。

 既にオーストリア(11/24接種率65.2%)は22日全土でロックダウンを開始、24日にはスロバキア(同42.8%)も2週間のロックダウンに踏み切っており、ドイツ(同67.7%)、オランダ(同73.9%)、ベルギー(同74.8%)、チェコ(同58.8%)、ハンガリー(同60.2%)等でも感染者数が記録的な増加を見せており規制強化の動きが広がっている。

『※参考:世界(接種率42.1%)、カナダ(同76.6%)、日本(同76.6%)、中国(74.4%)、オーストラリア(同72.2%)、フランス(同71.7%)、英国(同68.1%)、米国(同58.8%)、メキシコ(同50.0%)、インド(同30.3%)、』




出所:Our World in Dataより筆者作成
期間:2020/01/01~2021/11/25

 

ワクチン接種率の低いロシア(同37.4%)や中東欧政府等も、ウイルスが拡散しやすい冬を控えて危機感を強めているが、接種率の高いスペイン(同80.3%)やポルトガル(同87.5%)など一部の国を除き、ほぼ欧州全域において感染拡大が続くようであれば、欧州地域の景気後退懸念が広がり、これまで政治相場の様相を見せ高止まりしていた天然ガス等のエネルギー相場も需要の後退観測を背景に下落する可能性も出てくる訳で、当然インフレヘッジとして買われてきたドル建て金相場はさらに上値が重くなり、エネルギー価格が軟調となれば年内1,750ドルを割れの可能性もあろう。

 

出所:ブルームバーグより筆者作成
期間:2015/01~2021/11

一方で、欧州のコロナ感染が年末に向け終息方向に進めば、エネルギー価格の高止まり状況もしばらく続く可能性が高い。今冬は世界的にラニーニャ現象により欧米や極東アジア等でも記録的な大寒波が襲来する見通しで、エネルギー需要は例年以上の増加が見込まれる。

 こうした中、欧州や中国インド等でも天然ガスや石炭の供給が逼迫する懸念もあり、また11月23日に発表された日米中など石油消費5か国による戦略石油国家備蓄の放出も「焼け石に水」的な短期的効果に限定されそうで、むしろ生産国による協調減産を困難にしてしまった感もある。

 新型コロナウイルスのパンデミックによる世界的なサプライチェーンの混乱は、売り上げ増が期待される年末商戦に向け労働不足や商品不足、配達遅延等の発生が予想され、エネルギー価格の高止まりも主要各国全体的な物価高に拍車をかける気配が高まっている。

急激な景気減速や主要各国中銀による利上げの前倒しがなければ、ドル建て金価格は反転し上昇基調となり再度1,900ドル台を伺う状況も想定される。

(※ 利上げ見通しが顕著となると来年以降のドル建て金価格は1,700ドル割れが予想される)

◆円建て金相場はドル建て金相場に比べ、当面円安ドル高の影響が強めで堅調推移か!?

 

 短期的なドル建て金価格の中心レンジは『1,7501,830ドル』

 短期的な円建てTFXCFDの中心レンジは『19,00020,000円』

目先的に米ドル相場は、対ユーロ、対円等、主要通貨に対しては強含むことが予想され、米ドル円も117~118円レベルまでの円安ドル高は予想範囲である。

中期的にも米国景気の大幅な失速がなければ急激な円高に推移する可能性は低いと思われ、ドル建て金価格の下値も当面1,750ドル水準を大きく割り込む可能性も低い(中印など消費国の実需や欧米での金ETF需要の出動)ことから、円建てでのETF金価格は堅調に推移することが予想される。

 

出所:ブルームバーグより筆者作成
期間:2021/01~2021/11

 

チャート:ブルームバーグより筆者作成
(日足)2020/01/01~2021/11/25

 

チャート:東京金融取引所より筆者作成
(日足)2021/09/13~2021/11/25

 

■筆者プロフィール
藤原 貴一(ふじわら きいち)

相場歴20年以上。熟練の視点で金相場を読み解く。

 


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