原油市場のレビューと展望

2021/11/18 10:05

金・原油マーケット特別レポート


原油市況:需要回復と原油高への対応をめぐり乱高下

WTI原油先物(日足) 単純移動平均線5.10.20 MACD   (期間)2021/07/29~11/13

チャート(時事通信社データより作成)

 

11月4日のOPECプラスの会合では、事前予想通り、従来の減産緩和方針(毎月日量40万バレルの増産を行う)を維持するという決定となった。WTI原油先物(12月限)は80ドルの節目を挟みつつ軟調に推移していたが、通常取引開始後は一時83.42ドルまで上昇した。OPECプラスの決定は、バイデン大統領の圧力に屈しなかったという結果となったが、この決定に対し、米政府は、経済を守るために「あらゆる手段」を検討するとあらためて表明した。こうした報道を受け、一旦は上昇していたWTI原油先物はSPR(米国国家備蓄)が放出されるとの観測から下げに転じた。また、サウジアラビアの生産量が12月には日量1,000万バレルに達すると報じられた後は下げが加速、10月7日以来の安値である78.25ドルまで値を沈めた。利益確定の売りが出たことから下げ幅は拡大したものと思われる。

その後は急落に対する反発や米雇用統計を受けて米株が上昇したことなどから反転。また、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコがアジア向けの12月のOSP(Official Selling Priceの略、公式販売価格)を大幅に引き上げたことも支援材料となった。

パンデミック後の回復から石油需要が改善するとの見方から上昇し、11月9日には一時84.63ドルと84ドル台を回復した。バイデン政権のSPR放出観測や中国政府が燃料備蓄を放出していること等は売り圧力として意識されたが、供給が依然逼迫する中、米国が入国制限を解除するなどの動きもあり、需要回復観測から堅調な展開となった。

しかし、11月10日には大幅反落。国内原油在庫が予想外に増加したことから売られた。また、10月のCPI(米消費者物価指数)の伸びが一段と加速し、前年比が+6.2%と1990年以来の高水準となったことから、物価上昇の抑制に向けホワイトハウスやFRB(米連邦準備制度理事会)が措置を講じるとの見方が強まり、リスク資産に売りが出て取引終盤に大きく値下がりした。WTI原油は、前日比2.81ドル(3.3%)安い1バレル=81.34ドルと、大幅な値下がりとなった。 バイデン米大統領が「インフレ反転が最優先事項」とし、エネルギー高を抑制する方法を模索するようNEC(米国家経済会議)に指示したことや米ドル高も圧迫要因となった。また、EIA(米エネルギー情報局)の週報で石油製品需要が3週連続で節目の日量2,000万バレルを下回ったことも重しとなった。

11月15日にはインフレ高進で早期の引き締め懸念や景気見通しの不透明感が強まっていることや米政府がエネルギー高抑制策を講じるかどうかが注目される中、じりじりと水準を切り下げて、79.30ドルまで下げる場面もあった。しかし、SPR放出に関する報道がなかったために買い戻され、終値ベースでは80ドル台を維持している。



◆今後の展望:強弱が交錯しており、踊り場か

引き続き、コロナ後の経済活動の正常化によって石油需要が回復し、供給不足が続くとの観測が下支え要因となっている。IEA(国際エネルギー機関)の月報によると、9 月のOECD在庫は前月比5100万バレル減で27億6200万バレルとなっている。これは過去5年間平均を2億5000万バレル下回り、2015年以来の低水準である。
欧州のガス価格が再び高騰していることから、原油への燃転が進み、需要増につながることも考えられることなどから、中長期的にはしっかりとした展開が想定される。

一方で、米国のインフレ高進で金融当局がテーパリングの加速を余儀なくされるとの観測やエネルギー高にバイデン政権が対応策を講じる準備があるということが重しとなっている。また、米ベーカー・フューズによると、米国内の稼働中の原油掘削装置(リグ)数は前週比4基増で454基と増加して、EIA(米エネルギー情報局)が発表した掘削生産性報告では、主要7地域のシェールオイル生産量は12月に日量831万6000バレルまで回復していることから、今後も米国内の生産増加が期待される状況でもある。

この2週間の間に78ドルから85ドル手前まで急伸して再び80ドル割れと、かなり荒い値動きとなっているものの、強弱が交錯しており、どちらかに抜けるまで、当面はボックス相場の展開が考えられる。テーパリングやSPRの放出など、高インフレやエネルギー高に対する米国の政策動向を見極めたい。また、欧州の一部で新型コロナウイルスの感染者数が過去最多を更新していることや、その他の欧州各国でも増加する兆候があることから、状況を注視したい。


注目の動き

・高インフレの動向のその対応

・エネルギー(ガソリン)高への対応

・米国内の需給

・新型コロナウイルスの感染者数

・欧州の天候とガス価格


CFTC建玉明細

 

 出所:CFTC(米商品先物取引委員会)

ファンドの買い越し玉は、先々週は減少、先週は増加と相場の乱高下同様に増減している。今後の方向性を見極めるためにも、ファンド玉の動向を注視していきたい。

CFTC建玉明細(11/ 9現在)ファンド玉は、421,312枚の買い越し(先週比+2,019枚)

ファンドの買い越し玉は、先々週は減少、先週は増加と相場の乱高下同様に増減している。今後の方向性を見極めるためにも、ファンド玉の動向を注視していきたい。

 

◆コーヒーブレイク

OPEC及びOPECプラスについて

前回ピックアップしたOPEC及び、OPECプラスについて、ちょっと深堀りします。

 

OPEC(Organization of the Petroleum Exporting Countries)

1960年9月14日に産油国の利益を守るために設立された組織。

本部はオーストリアの首都ウィーン。

 

設立の経緯

第二次大戦の終結後、原油の価格決定権はセブン・シスターズと呼ばれる7つの巨大企業から成る「国際石油資本」(メジャーズ)が支配していました。彼らは強固なカルテルを形成し、莫大な利益を得ていました。原油価格を安値で安定させることで、先進各国の復興と経済成長に貢献した一方で、産油国の利益は削られていました。

1950年代に入ると世界各地でナショナリズムが台頭し、資源の利益を主張する資源ナショナリズムの考えが広がっていきます。また中小の石油会社ができたことやソ連のような社会主義国でも産油量が増加したことで、国際石油資本による支配に変化が起きてきました。

1959年2月、国際石油資本が産油国の一方的に原油公示価格の引き下げを発表すると、これに反発した産油国は同年4月、アラブ連盟第1回アラブ石油会議をカイロで開き、原油価格の改定に際し産油国との事前協議を求める決議を採択して、国際石油資本に対して原油価格改定の事前通告を要求しました。この会議にはアラブ諸国だけでなくイランとベネズエラも参加しました。同時にベネズエラとサウジアラビア間で、南米と中東の産油国が団結する協定が結ばれました。しかし、翌1960年8月に再び国際石油資本が公示価格の引き下げを事前通告なしに発表すると、これに反発した産油国5か国(イラン,イラク,クウェート,サウジアラビア,ベネズエラ)がイラクのバグダッドに集まり、国際石油資本に対し共同行動をとること等を目的としてOPECを設立しました。

国際石油資本から石油輸出国の利益を守ることを主な目的として誕生したのです。

 

目的

・国の石油政策の調整及び一元化。加盟国の利益を個別及び全体的に守るため最良の手段の決定。

・国際石油市場における価格の安定を確保するための手段を講じること。

・生産国の利益のための着実な収入の確保,消費国に対する石油の効率的,経済的かつ安定的な供給,及び石油産業における投資に対する公正な資本の見返りの確保。

 

加盟国:14か国(原加盟国:5か国と9か国(加盟年))

リビア(1962)、アラブ首長国連邦(UAE)(1967)、アルジェリア(1969)、ナイジェリア(1971)、エクアドル(1973)(1993年1月に脱退したが,2007年11月に再加盟)、ガボン(1975)(1973年から準加盟国、1995年1月に脱退したが、2016年7月に再加盟)、アンゴラ(2007)、赤道ギニア(2017)、コンゴ共和国(2018)

 

加盟の要件

・加盟国と基本的利害を同じくすること。

・相当量の原油純輸出国であること。

・原加盟国の全てを含む加盟国の4分の3が賛同すること。

(尚,加盟資格がなくても原加盟国全てを含む加盟国の4分の3以上の賛同がある場合,準加盟国となれる。)

[出所;外務省]

 

OPECプラス

ロシアやメキシコなどOPEC非加盟の10か国が加わったのがOPECプラス。

 

設立の経緯

アメリカのシェールオイルの生産が急速に拡大して、OPECの原油価格に対する影響力が低下していきました。2016年にWTI原油は1バレル=20ドル台まで下落したことに危機感を抱いた産油国がロシアなどに声掛けを行い、同年12月に設立することで合意。

 

加盟国:21か国(OPEC加盟国11か国と非OPEC10か国)

OPEC加盟国14か国がすべて参加しているのではなく、OPEC加盟国のうち、原油の減産を免除されているベネズエラ、イラン、リビアの3か国を除く11か国が参加。

非加盟国はロシア、カザフスタン、メキシコ、オマーン、アゼルバイジャン、マレーシア、バーレーン、ブルネイ、南スーダン、スーダンの10か国が参加。

 

OAPEC(Organization of Arab Petroleum Exporting Countries)アラブ石油輸出国機構
1968年1月9日にクウェート、サウジアラビア、リビアの3か国によってアラブ産油国の石油産業を中心とする経済活動の協力を目的に設立した国際機関。本部はクウェート。

 

2021年現在、結成時の3か国にアラブ首長国連邦・アルジェリア、バーレーン、カタール、イラク・シリア、エジプトを加えた10か国で構成される。チュニジアは1972年に参加したが1987年脱退。




■筆者プロフィール
 原 悠(はら はるか)

2000年より原油及び石油製品全般のトレードに携わる。 
 ファンダメンタルズをベースに市況を分析していく。


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