原油市場のレビューと展望

2021/11/04 14:30

金・原油マーケット特別レポート

原油市況:需要の回復に供給量が追い付かずに上昇

WTI原油先物・日足・単純移動平均線5.10.20 MACD

期間:2021/07/29~11/03





チャート(時事通信社データより作成)

WTI原油は、コロナショック後の石油需要の回復が続く見通しである一方、回復する需要に供給が追いつかず世界的な石油在庫が減少していくと見られていることから、堅調な展開となった。

10月20日にEIA(米エネルギー情報局)が発表した週報で、原油在庫につき、事前予想が増加であったにも拘わらず減少したことから、一時84ドル台を付けると10月25日には一時85.41ドルを付け、2014年10月以来の高値を更新した。ICEの北海ブレント原油も2018年10月以来の高値となる86.70ドルまで上昇した。WTI原油は10月26日に高値を更新することが出来なかったものの終値ベースでは84.65ドルと7年ぶりの84ドル台で引けた。WTI原油の受渡拠点であるクッシングの原油在庫は3年ぶりの低水準となった。天然ガスや石炭から原油への需要シフトやOPECプラスやシェール業者の増産が難しいとの見方から、原油の供給不足懸念が根強く、堅調な展開となった。また米株が連日、過去最高を更新するなど、引き続き堅調だったことも支援材料となった。

しかし、10月27日には利益確定の売りがでて、軟調な展開となった中で、イランと欧州連合が核合意復活に向けた協議を11月末までに再開することで合意したことが伝わると下げ足を速めた。また、EIA(米エネルギー情報局)の週報で、原油在庫が大幅に増加していたこと、米株が反落したことから大幅な下落となり、一時80.58ドルと81ドルを割り込む場面もあった。

10月末にブレント原油期近の納会を控える中で、WTI原油のブレント原油に対する下鞘が2ドル程度と8月上旬以来の水準まで縮小していたことから、WTI原油売り-ブレント原油買いのオーダーにより、下落が拡大された可能性もある。但し、下げは続かずに、これまでの高騰に対する大きな修正安となり、その後に徐々に下値を切り上げる展開となった。

その後、10月末のG20閉幕後にバイデン大統領が、サウジアラビアとロシアの対応が不十分であると批判したことから、OPECプラスが11月4日の会合で増産を決定するよう求める圧力が増したことや、中国がディーゼル油とガソリンの国家備蓄を放出すると表明したこと、また、中国の国家統計局が発表したPMI(製造業購買担当者指数)が49.2と2カ月連続50を下回ったことなどから、上げ幅を削る場面もあった。しかし、OPECプラスが増産に動かないと想定されることと、アンゴラ、ナイジェリアの生産量が減少したことから、OPECの10月の供給量の増加が予定の約半分にとどまったことなどから堅調となった。

しかし、11月3日にEIA(米エネルギー情報局)の週報で米原油在庫が330万バレル増と予想以上に増加したほか、イラン核合意復活の協議を11月29日に再開すると発表されたため、2カ月ぶりの大幅安となった。この日発表されたFRB(米連邦準備制度理事会))でテーパリングを今月中に始める方針が伝えられたことで、利益確定の売りが出てことも下げ幅を拡大させた。WTI原油は前日比3.05ドル(3.6%)安の1バレル=80.86ドル。ブレント原油は2.73ドル安の81.99ドル。WTI原油は10月13日以来、ブレント原油は10月7日以来の安値となった。


今後の展望:需給は強いものの、調整局面も?

11月4日にOPECプラスの会合を予定しており、その動向が注目される。しかし、OPECの中には生産能力余剰の乏しい国があり、予定通りの増産が出来ていない状況であること、足元は供給不足が続くものの、現状の毎月40万バレルの増産ペースを維持すると、来年には供給過剰になるとの予測があることなどから、OPECプラスの大幅な増産は難しいと思われる。また、米国内のシェール業者の生産も伸びておらず、クッシング在庫の低在庫は続く見通しであることから、ファンダメンタルズ的にはしっかりしている。また、北半球が本格的な暖房需要期となることも下支え材料。

但し、90ドルを目前にして利益確定の売りが出やすいことや、テクニカル的に軟化していることも気がかりな点である。また、これまで高騰して、原油を牽引していた天然ガス市況が一服していることからも調整局面となることも考えられ、注意が必要である。

まずは、OPECプラスの動向を見極めたいところである。


【注目の動き】

OPECプラスの会合

ヨーロッパの天候と天然ガスの動向

インフレ懸念による利上げ観測

米国内在庫の増減



CFTC建玉明細

[出所:CFTC(米商品先物取引委員会)]

CFTC建玉明細(10/26現在)ファンド玉は、423,718枚の買い越し(先週比-5,876枚)

これまでファンドの買い越し玉は増加傾向が続いてきたが、先週比で減少に転じ、利益確定の売りが出た可能性がある。81ドル割れまで、押した後、再び84ドル台と値を戻している。但し、今回は先週比で買い越しが減少しており、ファンド玉の動向を注視していきたい。



コーヒーブレイク

 

  • OPEC及び、OPECプラス、非OPECの供給量

OPEC(Organization of the Petroleum Exporting Countries)は1960年9月14日に産油国の利益を守るために設立された組織で、現在13カ国が参加。

盟主的存在のサウジアラビアを中心として総会を開き生産量を増減することで原油価格に影響を与える。近年は、ロシアなど非加盟国を加えたOPECプラスでの生産調整もおこなっており、その動向が市場に及ぼす影響は大きい。

一方で、総会の決定事項に強制力がないことや、各国が自国の利益を優勢しがちであるために、混乱要因になることもある。

 

  • OECDの在庫

API(American Petroleum Institute)米国石油協会が毎週火曜日に発表する米国の原油、ガソリン及び留出油の在庫量状況。米国原油生産、原油・精製品の輸入、クッシング在庫、製品別在庫などが発表される。

 

EIA(Energy Information Agency)米エネルギー省エネルギー情報局が毎週水曜日に発表する米国の原油、ガソリン及び留出油の在庫量状況。

米国の在庫統計はその数字が事前予想と比較してどうであるかが市場に影響を与える。今後の需給動向の予想も発表されるので、その後の価格変動の予測にも参考となる。

 

IEA(International Energy Agency)国際エネルギー機関が石油市場レポート(月報)で原油在庫、需給見通しなどを発表する。(1983年~)

国際エネルギー機関は第1次石油危機後の1974年に、キッシンジャー米国務長官(当時)の提唱を受けて、OECDの枠内における自律的な機関として設立された。

IEAの参加要件は、OECD加盟国(現在38か国)であって、かつ、備蓄基準(前年の当該国の1日当たり石油純輸入量の90日分)を満たすことである。(出所:外務省)

 

  • シェールオイル・ガスのリグ数

米石油サービス会社のベーカー・ヒューズが米国内で稼働している石油・天然ガス採掘リグ(掘装置)を毎週発表している。その動向は石油消費と需要の先行指標であり、エネルギー部門の需要と供給の見積もりを反映している。稼働中の採掘装置の数は、経済的な理由や、技術的要因により増減することがある。

 

 

  • 戦略石油備蓄(SPR)の放出

SPR(Strategic Petroleum Reserveの略)は米国における国家石油備蓄のこと。

1975 年に「エネルギー政策・節約法」(EPCA)が制定され、これに基づき国家による戦略石油備蓄(SPR)が始められた。メキシコ湾岸を中心に岩塩ドームを水溶してつくった洞穴中に地下貯油方式により行われており、 石油供給中断などの危機が発生した場合、その程度に応じて、政府の判断でタイムリーに、かつ適量の備蓄石油を放出するなど、弾力的な放出戦略により、量的不足に対応するのみならず石油価格の急激な上昇を抑制するねらいがある。(出所:JOGMEC)また、最近では政府歳入の確保のために放出されることもある。

 

  • 市場の動向 

総取組高 当業者 ファンドのポジション動向

CFTC(U.S. Commodity Futures Trading Commissionの略)米商品先物取引委員会から、各取引所における毎週火曜日取引終了後の建玉枚数を集計し、その週の金曜日に公表される。特にファンド(大口投機家)の動向、残玉が市場に影響がある。*毎レポートに掲載

 

  • 他商品との比較

商品市況全般の動き:金や非鉄、その他エネルギー関連商品にも影響をされる。以前は原油価格動向が他のエネルギー商品影響を与えることが多かったが、特に直近では、天然ガスや石炭の価格動向に原油価格が左右される状況が見受けられるようになった。

 

  • OECEの需要と非OECDの需要 

消費とGDPの伸び、及び予想が価格動向に影響を与える。

 

  • 株価、為替の影響

株価市場を含む市場全体がリスク選好となるかどうかによって原油市場のセンチメントも大きく左右される。

為替動向:原油はドルでの決済が大半を占めるため、対ドルでの為替変動で相対的なバリューが変わる。




■筆者プロフィール
 原 悠(はら はるか)

2000年より原油及び石油製品全般のトレードに携わる。 
 ファンダメンタルズをベースに市況を分析していく。



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