政策金利の中立水準

2022/05/27 08:33

ファンダメ・ポイント

【ポイント】
・米国の政策金利の中立水準は2%台半ば
・政策金利は22年中に中立水準に達しそう
・中立水準を越えた利上げが必要になるかどうか

米国の今後の金融政策を考えるうえで、政策金利の「中立水準」が重要なカギを握りそうです。中立水準とは、実際の政策金利がそれを下回っていれば景気を刺激し、上回っていれば景気を抑制する水準のことです。換言すれば、政策金利が中立水準にあるときは、景気を刺激も抑制もしない、だから「中立」です。

政策金利の中立水準がどこにあるかは議論の分かれるところ。成長力の高い経済では中立水準も高く、弱い経済では低くなります。米国の場合は2%台半ばと言われています。それは、FOMCの「ドット・プロット(中央値)」(◆キーワード)の「長期」見通しがその辺りにあるからです。中央銀行の長期見通しとは、実現すべき目標の意味合いが強く、経済が巡航速度で成長し、物価目標が達成され、政策金利が中立水準にある姿が描かれています。今年3月時点の長期見通しは2.375%でした。

FOMC議事録(5/3-4開催分)によれば、「政策金利を迅速に中立水準に動かすことが重要だ」とのことです。現在の政策金利(0.75-1.00%)から1.50%程度の利上げは既定路線なのでしょう。6月と7月の0.50%ずつの利上げはFOMCのコンセンサスのようなので、9月以降にさらに0.50%の利上げを行えば、中立水準に達しそうです(ただし、6月に公表される最新のドット・プロットで中立水準が上方修正される可能性はあります)。

政策金利が中立水準に到達すれば、「利上げやQTの影響を見極める余裕が生じる(同議事録)」とのこと。15-18年の前回の利上げ局面では、結果的に政策金利がほぼ中立水準に達した段階で利上げは打ち止められました。前回同様であれば、利上げは22年中に打ち止めになるかもしれません。

米政策金利と中立水準

一方、パウエル議長は17日の講演で、「中立水準を越えて利上げする必要がある場合は躊躇(ちゅうちょ)しない」と述べました。果たして、その必要が生じるかどうか、経済情勢を注視したいところです。

◆キーワード
ドット・プロット:
FOMCに参加する理事+地区連銀総裁の全員(定数19人)の金融政策見通し(向こう3年の年末までの利上げ・利下げ)を一人一つのドット(点)で表したもの。各個人の見解にすぎないが、市場はその中央値をFOMCのコンセンサスととらえる傾向がある。3カ月ごとに(FOMC2回につき1回)他の経済見通しと一緒に公表される。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。


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