スタグフレーションの経験、米ドル/円はどうなる?

2022/05/20 08:00

ファンダメ・ポイント

【ポイント】
・米国は70年代半ばから80年代半ばにスタグフレーションを経験
・前半は米ドル/円が下落、後半は米ドル/円が上昇
・米ドル/円転換の契機はボルカー議長の就任
・カギを握る実質政策金利

ここでは為替相場とスタグフレーションの関係を考察します。まず米国の経験を振り返りましょう。

73年と79年の2度のオイル・ショックによって、米国でインフレが高騰しました。71年のニクソン・ショック(米ドルと金の兌換停止)後に米ドル安が進行していたことも、インフレ要因となりました。73年11月から83年5月までの約10年間に3度のリセッション(景気後退)が起きており、この時期をスタグフレーションとみることが可能です。
19日付け「スタグフレーションなのか」をご参照ください。

スタグフレーション期の前半、とりわけ76~78年には米ドル/円が大幅に下落します。オイル・ショックの影響で日本でもインフレが高騰しましたが、比較的早くインフレを抑制することに成功していたからでしょう。また、変動相場制移行後の調整が続いていた可能性もあります。

米ドル/円は78年10月をボトムとして、スタグフレーション期の後半は堅調に推移しました。きっかけはFRBがインフレ抑制に本腰を入れたことで、79年8月にボルカー氏がFRB議長に就任したことがその流れを確実なものにしました。インフレ退治のために金融政策の目標を金利から資金量に変更し、政策金利の急騰を容認したのです。

米ドル円の長期チャート

80年ごろから政策金利がCPIを大きく上回る、つまり実質金利が高い状態が続きました。これが米ドル/円が上昇した主な要因でしょう。高い実質金利により米国は深刻なリセッション(景気後退)に陥りましたが、FRBはインフレ退治のためにはやむを得ないと考えていた節があります。

政策金利がCPIを上回る(実質金利高の)状態は2000年ごろまで続きました。その後、IT株バブル崩壊、リーマン・ショック、そしてコロナ・ショックなどを経て、一時期を除いて政策金利はCPIを下回る(マイナス実質金利の)状況が続いています。

米CPIと政策金利


今後の米ドル、とりわけ米ドル/円の大きな方向性を考えるうえで、以下の点に注目すべきでしょう。

まず、米経済がスタグフレーション的状況から早期に抜け出すことができるか。
・インフレがいつピークアウトし、どのようなペースで鈍化するか。
・労働市場が示唆するような米景気の堅調は持続するか。

そして、スタグフレーション的な状況が続く場合。
・FRBはインフレ抑制にどこまで強い意思をみせるか(どこまで実質金利を引き上げるか)。
・景気の減速、場合によってはリセッション(景気後退)を容認するのか。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。


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