スタグフレーションなのか

2022/05/19 08:33

ファンダメ・ポイント

【ポイント】
・市場はスタグフレーションを懸念
・足もとの米景気は堅調も、企業の先行き景況感の悪化は懸念材料
・金利高の米ドル高か、リスクオフの米ドル高・円高か

米国がスタグフレーション(◆キーワード)になりそうだ、あるいは既になっているとの声がよく聞こえてきます。景気の停滞と高インフレが同時に起きることを指します。足もとで市場が動揺している背景はスタグフレーションに対する警戒感でしょう。

米国のスタグフレーション
米国では、2度のオイルショックを経験した70年代半ばから80年代半ばごろが典型的なスタグフレーションの局面とされています。インフレの度合いを示すCPI(前年比)と景気の良し悪しを示す失業率の合計を窮乏指数(Misery Index)と言います。仮に窮乏指数の13.0以上をスタグフレーションと定義すると、米国では73年11月から83年5月がスタグフレーションに該当します(期間中のごく一部の月を除く)。期間中に3度のリセッション(景気後退)が起きました。
米国 窮乏指数

その後40年間、スタグフレーションは起こっていません(コロナ・ショックで失業率が急騰した20年4-5月は窮乏指数が13.0を超えましたが・・)。今年4月の窮乏指数は11.9でした。

4-6月期GDPの予測
今のところ、景気は堅調です。今年1-3月期のGDPは前期比年率マイナス1.4%と落ち込みました。ただし、個人消費や設備投資を中心とした国内民間最終需要はむしろ前期より好調でした(GDP寄与度3.1%←21年10-12月期同2.5%)。

5月18日時点のアトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)によれば、4-6月期のGDPは前期比年率2.4%に回復し、国内民間最終需要のGDP寄与度は4.1%と予測されています。

米GDP内訳

雇用は、NFP(非農業部門雇用者数)が今年4月まで12カ月連続で前月比40万人増を上回っています。同4月の失業率は3.6%で、コロナ・ショック直前の最低水準3.5%にほぼ並んでします。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は17日、「様々な尺度でみて労働市場は力強い」と述べています。

フィラデルフィア連銀製造業景況指数(6カ月先)
景気の先行きに対する懸念材料はあります。米株(S&P500)は1月のピークから18%強下落して「弱気相場」入りしました。株価は景気に対して6カ月から1年程度先行すると言われています。また、フィラデルフィア連銀の製造業景況指数は「現状」よりも「6カ月先」の悪化が目立ちます。通常、「現状」<「6カ月先」(企業が先行きに対して強気)となることが多いようですが、今年3-4月は「現状」>「6カ月先」となっています。2カ月連続で「現状」>「6カ月先」となるのは、2000年3-5月以来のこと。当時はITバブル崩壊が始まった直後で、リセッション(01年3-11月)の約1年前でした。
※本日19日にフィラ連銀指数の5月分が発表されます。

フィラデルフィア連銀製造業景況指数

パウエル議長はインフレ抑制の強い意思
パウエルFRB議長は17日、「インフレが落ち着くと確信が持てるまで利上げを継続する」、「物価安定のために失業率の少しの上昇は払ってもいいコストだ」と、インフレ抑制に向けてかなり強い意思を表明しました。

アグレッシブな利上げが続けば、金利面からは米ドル高材料です。ただし、景気下押しの懸念から米株の調整が続くようならリスクオフによる米ドル高・円高が示現する可能性があります。


◆キーワード
スタグフレーション:
景気の停滞と高インフレが同時に起きることを指します。スタグネーション(停滞)とインフレーションを組み合わせた造語で、1960年代半ばに生まれました。日本では第一次オイルショック後の70年代半ば、米国では1970年代~80年代初めの約10年間が該当します。スタグフレーションは原材料価格の高騰などコスト・プッシュ型のインフレによって発生すると考えられます。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。


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