米GDPは6.9%、好調は見かけ倒し?

2022/01/28 08:23

ファンダメ・ポイント

【ポイント】
・4-6月期のGDPは前期比年率6.9%
・在庫投資がGDPを大きく押し上げ
・1‐3月期以降は在庫投資がGDPを押し下げも
・景気減速の兆候が増えており、景気動向にも要注意

米国の21年10‐12月期のGDP(国内総生産)は前期比年率6.9%の増加で、市場予想の5.5%を上回り、前期の2.3%から加速しました。

ただし、GDPの高い伸びは出来過ぎの感があります。GDPの中身をみれば、在庫投資(◆キーワード:在庫投資の特殊性)が大きく増加しており、GDP伸び率「6.9%」のうち「4.9%」分を説明しています(GDPへの寄与度4.9%と表現します)。景気の強さを見る上で重要な国内民間最終需要(=個人消費+設備投資+住宅投資)の寄与度は2.5%にとどまりました。

米GDP需要項目別寄与度

国内民間最終需要の寄与度は20年10‐12月以降3期連続で5.0%を超えました。コロナ・ショック後の大規模な財政出動や強力な金融緩和によって、景気が大きく押し上げられたということでしょう。その後、21年7‐9月期は1.2%、そして10‐12月期は2.5%と大きく減速しています。

21年10‐12月期の在庫投資額は99年以降の最高だった15年1‐3月期にほぼ匹敵します。21年1‐3月期以降は在庫投資が減少して、GDPを押し下げる可能性があります。

在庫投資は、需要が弱いために在庫が増える、いわゆる「意図せざる在庫投資」の場合は、翌期以降に在庫が取り崩されてGDPを大きく押し下げる傾向があります。ただし、今回の在庫投資の増加は、需要好調下で取り崩された在庫の「復元」の意味合いが強そうです。そうであれば、在庫投資が景気の足を引っ張り続けることはなさそうです。

米GDP 在庫投資

ただし、昨年12月の小売売上高(前月比マイナス1.9%)や1月のNY連銀製造業景気指数の急低下など、足もとで景気減速の兆候は増えています。FRBが金融政策の正常化をアグレッシブに進めようとするなかで景気が大きく減速しないか、注意深く見守る必要はありそうです。

■米ドル/円のテクニカル分析については、本日の『テクニカル・ポイント』[米ドル/円、当面のコアレンジは?]をご覧ください。

◆キーワード
在庫投資の特殊性:
GDPは前期からの変化でみるため、個人消費などが前期に比べて多ければプラス寄与、少なければマイナス寄与になります。在庫投資が個人消費など他の需要項目と大きく異なるのは、積み増しだけでなく、取り崩しもありうることです。在庫投資も前期からの変化が重要であり、積み増し幅が前期より多ければGDPにプラス寄与となり、積み増し幅が少なければマイナス寄与となります。同様に、取り崩し幅が少なければGDPにプラス寄与となり、取り崩し幅が多ければマイナス寄与となります。すなわち、在庫投資が、積み増しか取り崩しかと、GDPにプラス寄与かマイナス寄与かは別次元の話です。

もう一つ重要なのは、在庫投資の積み増しや取り崩しが「意図した」ものか、「意図せざる」ものかという点です。個人消費などの最終需要が鈍化すると企業が予想すれば、在庫の積み増しを抑えるか、あるいは取り崩すでしょう。それらは「意図した」もの。一方で、最終需要が予想以上に増加した場合は、生産が間に合わず計画通りに在庫の積み増しができなかったり、在庫を取り崩したりして対応するでしょう。それらは「意図せざる」もの。逆に、最終需要が予想ほど増えなければ、結果的に売れ残って在庫は増えるでしょう。そうした「意図せざる在庫投資」は当該期のGDPにプラス寄与するものの、翌期以降は「意図した」積み増しの抑制や取り崩しによってGDPにマイナス寄与する可能性があります。ただし、在庫投資が「意図した」ものか、「意図せざる」ものかを直接的に判断することはできません。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。


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