パウエル証言、テーパリングの前倒しは既定路線か

2021/12/01 07:49

ファンダメ・ポイント

【ポイント】
・次回FOMCでテーパリングの前倒しを議論へ
・22年中に利上げする余地が拡大?
・議長証言を受けてイールドカーブは平たん化
・長期金利はいずれ上昇に転じて米ドルをサポートか

11月30日、米FRBのパウエル議長は上院銀行委員会で証言を行い、新型コロナへの対応について説明しました。

パウエル議長は、11月に開始したテーパリング(量的緩和の段階的縮小・終了)のスピードアップを次回12月14-15日のFOMCで議論すると述べました。11月のFOMCでは、順調に行けばテーパリングは22年半ばに完了するとの見通しが提示されましたが、それの前倒しを検討するということです。

ここもと、FOMCに参加する18人の理事や地区連銀総裁のうち、少なくとも5人がテーパリングのスピードアップへの支持を表明していました。すでにFOMC内のコンセンサスができつつあるのかもしれません。

スピードアップを検討する背景は、高インフレが長期化する様相をみせていること。パウエル議長はこれまで「インフレの上振れは一時的」あるいは「高インフレは一時的要因を反映している」と繰り返してきました。今回も「需給の不均衡が解消されれば、来年はインフレ率が大幅に低下すると予想される」としつつも、「サプライチェーン障害の継続性と影響は予測が難しいが、インフレ圧力は来年に入っても続くようにみえる」と付け加え、「『一時的』という言葉を取り下げるのに良い時期だ」と述べました。

利上げを開始するのは「テーパリングの完了後」というのがFOMCの一貫した見解です。したがって、テーパリングを22年半ばより前倒しして完了するのであれば、それだけ22年中に利上げする余地が拡大するということでしょう。

イールドカーブは平たん化
パウエル証言を受けて米長期金利(10年物国債利回り)はいったん上昇したものの、反落。証言前に大きく低下していたため、前日比では低下となりました。一方で、短期金利(2年物国債利回り)は前日から上昇しました。その結果、イールドカーブ(利回り曲線、◆キーワード)は右上がりの勾配がやや平たん化しました。長期金利の低下は、2014年のテーパリング局面で低下した経験則に基づくもの、短期金利の上昇は利上げ前倒しの観測が背景と考えられます。

米国 イールドカーブ 利回り曲線

長期金利もいずれ上昇に転じて米ドルを押し上げか
もっとも、2014年はインフレ率がFRB目標の2%を下回っていましたが、今回は大幅に上回っています。インフレ率が早い段階で鈍化の兆候をみせなければ、長期金利はいずれ上昇する可能性が高く、その場合は米ドルの上昇要因になるとみられます。

◆キーワード
イールドカーブ:
利回り曲線のこと。縦軸を「利回り」、横軸を「期間」として示すもの。やや右上がりの勾配となることが多い(期間の長い債券ほど利回りが高くなる。資金を固定する期間が長くなるため)。ただし、経済や金融政策の状況、それらの見通しによっては、右上がりの勾配が急になる(=スティープニング)、平たん化する(=フラットニング)、右下がりになる(=逆イールド)など、形状が変化する。逆にイールドカーブの形状変化から市場の予想を読み取ることができる。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。


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