米ADPによる9月雇用統計の推計

2021/10/07 07:30

ファンダメ・ポイント

【ポイント】
・9月ADP統計は民間雇用が前月比56.8万人増と、市場予想より良好
・8日のNFP(非農業部門雇用者数)が堅調なら11月にテーパリング開始も
・ただし、ADPの予測精度は「コロナ後」に大きく低下

6日発表の9月ADP統計は、民間雇用が前月から56.8万人増加、市場予想(43.0万人増)を上回りました。ADP統計(※)は労働省が発表する雇用統計と類似の方式で算出されており、8日発表の9月雇用統計のNFP(非農業部門雇用者数)も堅調となる可能性があります(NFPおよび同民間の市場予想50.0万人増、45.0万人増)。

(※)給与計算の代行サービスをするADP(Automatic Data Processing)社の発表する統計。NFPと共通の概念で算出され、かつ通常2日早く発表されるため、NFPの先行指標として注目されている。NFPの対象が14万社の44万事業所であるのに対して、ADP統計の対象は50万社。ADPは民間企業のみを対象としており、NFPは民間企業+政府部門が対象
本稿では、ADP雇用統計と労働省の雇用統計を区別するため、前者をADP統計、後者を雇用統計と呼びます。また、本稿に限りNFPは政府部門を除いた民間のみとしています。ADP統計、NFPとも発表当初のデータとし、その後の改定は考慮していません。

もっとも、いずれもサンプル調査から全数を推計していることもあって、ADP統計が月々の雇用統計を予測する精度は必ずしも高くありません。18年1月からコロナの影響を受け始める前の20年2月までの両者の差は0.5万人/月ですが(ADP統計>NFP)、標準偏差(σ)は7.8万人。これを使えば、今年9月のNFPは高い確率(約95%)で、ADP±2σ=41.3万人増~72.3万人増と予想することが可能でした。

しかし、コロナ・ショックによって労働市場は大きく変化し、ADP統計とNFPの差も拡大しました。労働市場が比較的落ち着いた昨年9月から今年8月までの12カ月間をみても、両者の差は3.2万人/月で、標準偏差(σ)は32.8万人。今年4月はNFPがADP統計を52.4万人下回り、逆に7月は37.3万人上回りました。

ADPと雇用統計の差

簡単に言えば、最近の両者の関係に基づくと、9月のNFPは前月比でマイナスになっても、逆に100万人増でも不思議ではありません。つまり、ADP統計の結果をもってNFPを推計するのはかなり難しいと言えます。ただし、両者の格差が縮小しつつある点は注目に値するかもしれません。

11月FOMCでのテーパリング開始の判断につながるか
 9月22日のFOMC声明文では、テーパリング(量的緩和の段階的縮小)を開始する基準に関して、「予想通り(雇用の)改善が続けば、資産購入のペースを遅らせることが間もなく正当化されると判断している」とされました。そして、直後の記者会見でパウエルFRB議長は、「テーパリングは早ければ11月のFOMCで開始(決定)し、22年半ばに完了する」と明言しました。

9月雇用統計がADP統計と同様の結果となれば、FOMCが「予想通りの改善」と判断する可能性があります。11月のFOMC前の雇用統計は9月分が最後です。11月にテーパリングが開始されるかどうか、9月雇用統計が重要なカギを握りそうです。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。


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