インフラ投資法案や包括経済対策は前進するか、米下院が再開

2021/08/23 07:33

ファンダメ・ポイント

【ポイント】
・23日、米下院は夏休みを短縮して本会議を再開
・インフラ投資法案や3.5兆ドルの予算決議を審議
・民主党内で進歩派と穏健派が対立
・予算交渉は新年度開始の10月1日前後まで難航しそう

23日、米下院は9月19日までの予定だった夏休みを切り上げて本会議を再開させます。8月上旬に上院が可決したインフラ投資法案や予算決議を審議するためです。

インフラ投資法案は5,500億ドルで、既存プログラムの延長を含めた総額は1.1兆ドル。下院が同一の法案を可決すれば、大統領に送付されて署名を得て成立します。約3.5兆ドルの予算決議は予算の大枠を示す設計図で、バイデン大統領の経済政策を盛り込むもの。予算決議は議会が採択するもので、法案ではないため法的拘束力は強くありません。ただし、予算決議に基づいて歳出法案や予算調整法案が議会で審議されます。予算調整法案は共和党が反対するヘルスケアや増税を含んでおり、フィリバスター(※)が使えないため上院でも民主党単独で可決することができます。

(※)上院には審議時間に制限がないため、審議を延々と続けることで事実上採決をできなくする戦術。上院だけに認められている。スーパーマジョリティー(100議席中の60以上)の賛成があれば審議を打ち切って採決することができる。

民主党は下院の過半数の議席を握っており(民主党220、共和党212、空席3)、」一致団結すればインフラ投資法案や予算決議を通すことは可能です。しかし、党内の進歩派(左派)と穏健派が対立しており、ことは簡単には行きそうにありません。

民主党進歩派はインフラ投資法案と予算調整法案を同時に成立させることを望んでいます。バイデン大統領の野心的な経済政策をパッケージとして実現させるためでしょう。一方で、民主党穏健派は先にインフラ投資法案の成立を望んでいます。大型の予算調整法案には消極的で、まずはインフラ投資を確実にしたいとの意向のようです。

民主党穏健派9人は、インフラ投資法案が可決されるまで予算決議を支持しない意向を表明しています。共和党の支持が望めないため、民主党穏健派が支持しなければ予算決議は日の目を見ないでしょう。

仮にバイデン大統領やペロシ下院議長の説得が奏功して予算決議が採択されたとしても、それに基づいた歳出法案や予算調整法案の審議は相当に難航しそうです。民主党進歩派と穏健派の対立は続くとみられるからです。予算交渉が10月1日の新年度開始まで、あるいはそれ以降も続く可能性があります。その間に、シャットダウン(政府機能の一部停止)デットシーリング(連邦債務上限)の問題も絡んで、市場は一喜一憂するかもしれません。

以下は主な予算関連スケジュール:

上院夏休み(8月9日-9月10日)
下院夏休み(8月2日-8月22日)

  7月31日   差し押さえ猶予措置の期限切れ
  8月  1日  デットシーリング(連邦債務上限)復活
  9月  6日 失業保険上乗せ&休業補償支援の期限切れ
10月  1日 2022年度開始(予算が成立しなければ政府機能の一部停止)
10月?日 米政府デフォルトの危機(デットシーリング引上げがなければ)
12月31日 州地方政府支援などのコロナ対策が期限切れ

8月11日付け「米上院がインフラ投資法案を可決、予算交渉の行方は?」もご覧ください。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。


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