米景気は腰折れするか。金利面からの考察

2022/05/25 09:03

ファンダメ・ポイント

【ポイント】
・米景気の先行きに対する懸念が増大
・ただし、金利上昇が景気に大きくブレーキをかける状況ではない
・自動車販売台数は半導体不足の解消に伴い回復基調
・中古住宅販売件数はコロナ・ショック前の平均的水準を上回っている
・株安の継続や不安心理が景気を落ち込ませるリスクには注意

米景気が大幅に減速する、悪くすればリセッション(景気後退)になるとの懸念が市場を席捲しています。しかし、本欄でも繰り返してきたように、足もとまでの米景気は悪くありません。市場の懸念が行き過ぎているようにみえます(※)。先行の以下では米景気の先行きを考察してみましょう。

(※)5月7日付け「米雇用統計、NFPは堅調持続、賃金は伸び悩み!?」
5月19日付け「スタグフレーションなのか」
5月23日付けウィークリーアウトルック「米景気は大きく減速するか」をご参照ください。

まず、雇用は、NFP(非農業部門雇用者数)が5月まで12カ月連続で前月比40万人超増加と好調が続いています。

また、アトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)によれば、5月18日時点で4‐6月期GDPは前期比年率2.4%、国内民間最終需要の寄与度は4.1%(=GDPを4.1%分押し上げる)と予測されています。まだ5月以降のデータはほとんどインプットされていませんが、今のところ悪くない数字です。

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米景気に対する懸念の根幹は、FRBによる利上げや、それを反映した市場金利の上昇が景気に大きくブレーキをかけるということでしょう。もっとも、政策金利の中立水準は2%台半ばとみられています(もっと上の水準との見方もあります)。FRBが利上げを続けても、政策金利が中立水準を下回っている限りは、車に例えればアクセルを緩める程度であり、ブレーキを踏むまでには至りません。

4月のCPIは前年比8.3%。景気に影響を与えるのは、名目金利ではなく、インフレ率を引いた実質金利との見方に立てば、現在の実質政策金利は大幅なマイナスであり、むしろアクセルを踏み込んでいる状態ととらえることもできます。

さすがに足もとの高インフレは徐々に鈍化するでしょう。より長い目では、インフレ連動国債利回りを実質金利と考えることができます。10年物インフレ連動国債利回りは24日時点で0.18%。コロナ・ショック以降はマイナス1.00%近辺での推移が長く、そこからかなり上昇してきました。ただし、コロナ・ショック以前と比べれば決して高いとは言えないでしょう。
米10年物インフレ連動国債利回り

個人消費のなかで、金利の影響を受けやすいのはローンを利用する自動車や住宅でしょう。自動車販売台数はコロナ・ショックから持ち直した後の21年半ばに半導体不足で大きく減少しましたが、足もとで回復基調にあるようにみえます。

米自動車販売台数

中古住宅販売件数(米国では住宅販売の中心)は2‐4月に3カ月連続で減少しており、やや気がかりです。ただし、それでも16‐19年の平均的な水準を上回っており、コロナ・ショック後の超低金利で吹き上がった分がなくなったとみることは可能でしょう。

米中古住宅販売件数

もちろん、株安が続いて、逆資産効果や企業や家計のマインド悪化が自己実現的に景気を落ち込ませるリスクは否定できません。ただ、それと同等かそれ以上に行き過ぎた不安心理がいずれ改善する可能性がありそうです。引き続き経済指標を丹念にチェックしたいと思います。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。


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