米FOMC、テーパリングに向けて前進!?

2021/07/29 07:56

ファンダメ・ポイント

【ポイント】
・FOMCはテーパリング開始に向けて一歩前進
・テーパリングの「年内予告&来年早々開始」は引き続きありうる
・長期金利の反応は「市場要因」による低下圧力の強さの証左!?

28日、米FOMC(連邦公開市場委員会)の結果とパウエル議長の記者会見を受けて、長期金利(10年物国債利回り)はいったん上昇したものの、その後反落。米ドル/円や米ドル実効レート、NYダウなども同様の反応となりました。

米国のFOMCと長期金利(10年物国債利回り)

FOMCの結果はテーパリング(量的緩和の段階的縮小)開始に向けてさらに一歩前進する内容。ただし、パウエル議長は早期のテーパリング観測をけん制しました。今回の結果は「8月のジャクソンホール会合やその後のFOMCでテーパリングの開始を予告、22年早々に開始」との見方を否定するものではありませんでした。しかし、それ以上のタカ派的でもなかったことから、材料出尽くしで長期金利や米ドルが低下したのかもしれません。

長期金利の反応は、パウエル議長の指摘する「市場要因(後述)」による低下圧力が強いことを示したのかもしれません。

今後の景況次第では、テーパリングの開始がさらに現実味を帯びるでしょうが、それでも長期金利は落ち着いた動きとなるのか、大いに注目されます。

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FOMCは全会一致で金融政策の現状維持を決定しました。政策金利は0-0.25%で維持され、毎月1,200億ドルの債券を購入するQE(量的緩和)にも変更はありませんでした。

声明文冒頭の景況判断はさらに前向きに修正されました。「経済活動や雇用は引き続き強まった」とされ、前回なかった「引き続き」が加えられました。また、「コロナの影響を強く受けたセクターは改善したものの、完全には回復していない」とされ、前回の「依然として弱いが、改善をみせている」から判断は上方修正されています。

コロナ変異株の感染が拡大していますが、景気の先行きについて前回の「経済の軌道はコロナの状況に大きく依存する」から、単に「引き続き依存する」へと修正されており、政策判断におけるコロナの重要度は低下したようにみえます。

声明文の金融政策方針に関わる部分には大きな変化がありました。テーパリングを開始する条件として、前回までは「最大雇用と物価安定の目標に向けてさらに顕著な前進がある」こととしていました。今回は、その条件を「昨年12月に設定した」とした上で、「その後、それらの目標に向けて前進しており引き続き今後のFOMCで進捗を点検する」と変わりました。

もっとも、パウエル議長はFOMC後の会見で、「まだそこ(顕著な前進)には至っていない。そこに至るまでには距離がある」と述べ、早期のテーパリング観測をけん制しました。

パウエル議長の会見で、その他に興味深かったのは以下の通り。

・「インフレの上振れは一時的」との判断を繰り返しました。そして、足もとの高インフレがインフレ期待の上昇をもたらしている兆候はないとしました。「インフレ期待の上昇」はFOMCが金融政策の正常化を進める決め手になりうるものです。

・最近の長期金利について、前回FOMC以降の長期金利低下の背景は不明だとしたこと。考えられる要因として、①実質金利の低下=市場の景気減速予想(※)、②インフレ期待の後退、③市場要因を挙げました。しかし、③市場要因については「上手く説明がつけられない場合に使うもの」としており、結局は「なぜ長期金利が低下しているか判らない」と言ったに等しいでしょう。

(※)10年物インフレ連動国債利回りでみた実質金利は、少なくともデータが利用可能な97年以降の最低を更新しています。とりわけ、今年に入ってからの実質金利の低下は「景気減速予想」だけでは説明できません。

米国の実質金利(10年物インフレ連動国債利回り)


・足もとの住宅価格の高騰と、FRBによるMBS(住宅ローン担保債券)の購入(=QEの一手段)との因果関係は明らかではないとしました。その上で、国債よりMBSのテーパリングを速いペースで行うべきとの見方には否定的な見解を表明しました。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。


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