米FRB利上げの条件、物価安定とは?

2021/10/27 07:43

ファンダメ・ポイント

【ポイント】
・物価安定とはインフレ率が一定期間の平均で2%になること
・前年比4%のインフレ率が続くと仮定すると・・
・10年間平均での目標達成は22年6月

市場では、米FRBが11月にもテーパリング(量的緩和の段階的縮小)を決定し、22年中にも利上げを開始するとの見方が強まっています。一方、テーパリングのタイミングやペースとは関係なく、利上げ開始には厳しい条件が満たされる必要があるとされています。FOMC声明文などによれば、その条件はFRBの2大マンデート(使命)である「最大雇用」と「物価安定」が実現することです。

最大雇用については10月15日付け「米FRB利上げの条件、最大雇用とは?」で取り上げました。結論は「雇用が毎月42万人増加すれば、22年中に最大雇用が達成される」でした。本稿では「物価安定」について考察します。

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まず「物価安定」とは、家計や企業の経済行動に対して物価が影響を与えない状況を指します。かつて、中央銀行は物価上昇率ゼロ%を目指していました。しかし、低インフレが定着し、デフレ(=物価上昇率マイナス)の脅威が認識されると物価上昇率2%程度を目標とするようになり、それは多くの主要中銀で共有されています。

そして、FRBは20年9月から、一時点ではなく一定期間の平均として2%を目指すことにしています。つまり、2%を下回る期間が続けば、2%を超えることも容認されるという意味です。実際、FRBが重要視するPCE(個人消費支出)コアデフレーターは今年4月以降に2%を大幅に上回っていますが(今年1-9月は年率4.8%)、それを一時的と見なしていることもあって、2%の物価目標は達成されていないと判断しています。

では2%の物価目標の達成はいつか。FRBが定義する「一定期間(for some time)」が不透明なため、以下のシミュレーションを行いました。

・PCEコアデフレーターが21年9月以降も年率4.0%で上昇を続ける(実績&仮定)。
・起点を18年12月(期間約3年)、16年12月(同5年)、11年12月(同10年)として、それぞれの起点からPCEコアデフレーターが年率2.0%で上昇した場合、いつの時点で上記の「実績&仮定」がそれらのラインに達するかを調べる。

結果は、「一定期間」が3年の場合(18年12月起点)、今年5月に物価目標は達成されました。「一定期間」が5年の場合(16年12月起点)も同じ結果でした。「一定期間」が10年の場合(11年12月起点)、目標達成は22年6月になります。

PCEコアと2%目標

もちろん、PCEコアデフレーターの伸びが鈍化すれば、「一定期間」が10年の場合の目標達成は先送りされることになります。例えば、今年9月以降のPCEコアデフレーターの伸びを年率3.0%とすれば、目標達成は23年3月になる計算です。また、年率2%以下とすれば目標は永遠に達成されません。

リーマンショック後のQE(量的緩和)が終了したのが14年10月。そして、最初の利上げ(ゼロ金利解除)は14カ月後の15年12月でした。当時のPCEコアデフレーターは1%台前半で推移していました。しかし、高インフレが続く現局面ではFRBが利上げを待つ余裕はそれほどないかもしれません。

執筆者プロフィール
西田 明弘(にしだ あきひろ)
チーフエコノミスト
日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガンスタンレー証券などを経て、2012年マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。
米国を中心とした各国のマクロ経済・金融政策・政治動向の分析に携わる。
「アナリスト、ストラテジスト、エコノミスト、研究員と呼び名は変われども、30年以上一貫してリサーチ業務を行ってきました。長い経験を通じて学んだことは、金融市場では何が起きても不思議ではないということ。その経験を少しでも皆さんと共有したいと思います。


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