トルコ中銀とメキシコ中銀の政策会合に注目!!
2022/06/23 08:35
デイリーフラッシュ
【ポイント】
・トルコ中銀が政策金利を据え置けば、大幅なマイナスの実質金利が意識される可能性あり
・メキシコ中銀は利上げへ。注目点は利上げ幅や政策メンバーの投票行動、インフレ見通し
(欧米市場レビュー)
22日の欧米時間の外為市場では、米ドルが軟調に推移。一時、米ドル/円は135.596円、米ドル/カナダドルは1.29134カナダドルへと下落し、ユーロ/米ドルは1.06003ドル、英ポンド/米ドルは1.23089ドルへと上昇しました。米国の長期金利(10年物国債利回り)が低下し、米ドルの重石となりました。
カナダの5月CPI(消費者物価指数)は前年比7.7%と、上昇率は市場予想(7.4%)以上に前月の6.8%から加速。83年1月以来、39年4カ月ぶりの高い伸びを記録しました。市場では、BOC(カナダ中銀)は次回7月13日の政策会合で0.75%の利上げを行うとの観測があります。CPIの結果は、その観測を一段と強めるものと言えそうです。
パウエル米FRB議長は上院銀行委員会で半期に一度の議会証言を行いました。議会証言については、本日23日の『ファンダメ・ポイント』[議会証言、パウエル議長は「ボルカー」になれるか]をご覧ください。
(本日の相場見通し)
本日は、米国の製造業PMI速報値やサービス業PMI速報値(6月分)、新規失業保険申請件数(前週分)が発表されます。
市場予想は以下の通りです。( )は前回
・製造業PMI速報値:56.0(57.0)
・サービス業PMI速報値:53.5(53.4)
・新規失業保険申請件数:22.7万件(22.9万件)
これらの経済指標が弱い結果になれば、米景気の先行きをめぐる懸念が市場で強まるかもしれません。その場合には、米ドルが軟調に推移する可能性があります。
米国など主要国の株価動向には引き続き注意が必要です。主要国株価が大きく下落するようなら、市場は株安を強く意識してリスクオフ(リスク回避)の動きが強まる可能性があります。リスクオフは、円や米ドルにとってプラス材料です。
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本日、TCMB(トルコ中銀)とBOM(メキシコ中銀)が政策会合を開きます。トルコリラやメキシコペソは、その結果が材料になりそうです。
<TCMB>日本時間23日午後8時結果発表
TCMBは21年9月から12月に利下げした後、前回5月まで5会合連続で政策金利を14.00%に据え置いています。
トルコの5月CPI(消費者物価指数)は前年比73.50%と、上昇率は前月の69.97%から加速。98年10月以来、23年7カ月ぶりの高い伸びとなりました。インフレが加速しているにも関わらず、TCMBは本日の会合で政策金利を14.00%に据え置くとみられます。金融政策に大きな影響力を持つエルドアン大統領は低金利を志向しており、その状況でTCMBが利上げするのは困難と考えられるからです。
TCMBが政策金利を据え置いた場合、大幅なマイナスとなっているトルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの。現在はマイナス59.50%)が市場で改めて意識されて、トルコリラに対して下押し圧力が加わるかもしれません。トルコリラ/円は、堅調な米ドル/円に下支えされているものの、下押しする可能性があります。
※トルコリラ/円のテクニカル分析は、本日の『テクニカル・ポイント』[トルコリラ/円、下落警戒シグナル発動中!]をご覧ください。
<BOM>日本時間24日午前3時結果発表
BOMは前回5月12日の会合で0.50%の利上げを実施。現在の政策金利は7.00%です。
メキシコの5月CPIは、総合指数が前年比7.65%、変動の大きいエネルギーや食品を除いたコア指数は同7.28%。いずれもBOMのインフレ目標(3%。その上下1%が許容レンジ)を大きく上回りました。
インフレ圧力の強さが再確認されたことで、BOMは本日の会合で利上げを行うことを決定するとみられます。利上げ幅については、米FRBが先週0.75%利上げしたことや、BOMが「必要なら、より大幅な利上げを行う」との姿勢を示していることもあり、市場では0.75%との見方が有力です。
その通りの結果になれば、5人の政策メンバーの投票行動に注目。0.75%の利上げが全会一致で決定される、あるいは会合でより大幅な利上げを主張したメンバーがいれば、メキシコペソの支援材料となりそうです。また、BOMのインフレ見通しでCPI上昇率が4%(BOMの許容レンジ上限)を下回る時期が後ズレすれば、それもメキシコペソを支援する可能性があります。BOMは前回会合時、総合CPIとコアCPIのいずれも23年4-6月期に4%を下回るとの見通しを示しました。
※BOM会合については、22日の『M2TV マーケットViewチャンネル』[要注目! ペソ/円は一段の上昇も!?]もご覧ください。
執筆者プロフィール
八代 和也(やしろ かずや)
シニアアナリスト
2001年ひまわり証券入社後、為替関連の市況ニュースの配信、レポートの執筆などFX業務に携わる。2011年、マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)に入社。豪ドル、NZドル、カナダドル、トルコリラ、南アフリカランド、メキシコペソを中心に分析し、レポート執筆のほか、M2TV出演、セミナー講師を務めている。
【プロフィール】広島県出身。
【趣味】野球・サッカー観戦。
【一言】より分かりやすくタイムリーなレポートを心掛けています。